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唯一の人
ナタリアを見送った後、フェルゼンは父である国王の元へと向かった。
理由はもちろん、自分の心を掴んで離さない子爵令嬢ナタリアを、唯一の妃にしたいと願い出る為である。
国王は王妃と共に夜会から先に退出していた為、フェルゼンが城の二人の私室へと早歩きで廊下を進んでいくと、不意打ちで後片付け中の使用人達と出くわしてしまった。
しまった!!
思いっきり目が合ってしまったではないか。
気が急くあまり、いつもは気を付けているのに急に姿を見せてしまった。
お互いに焦り、フェルゼンは使用人達の様子を注視したが、どうやら倒れる様子はない。
使用人も使用人で、自らの体調に変化が現れないことを確認すると、首を傾げ、我に返ると慌ててフェルゼンに頭を下げた。
不思議に思いつつも胸を撫で下ろすと、フェルゼンは再び国王の部屋へと急いだ。
「父上、フェルゼンです。お疲れのところ申し訳ありませんが、至急お話ししたいことが」
ノックをし、声をかければすぐに入室を許可された。
思えば、この部屋を訪れたことなど今まで数えるほどしかない。
部屋には母である王妃もソファで寛いでいた。
「来ると思っていたわ。ナタリアちゃんのことなら話は進んでいるから安心なさい」
「は?なぜそのことを?」
驚き、間が抜けたような声をあげた息子を見て、二人はクスクスと笑っている。
「ナタリア孃を妃にしたいのだろう?お前を見ていればすぐにわかるわ。とりあえず同伴していた兄には話を通した。明日、レンダー子爵家に正式に使いを出す」
え?
話が早すぎないだろうか?
まだ何も言っていない内に。
フェルゼンがポカンとしていると、王妃が憂いの表情を浮かべ、フェルゼンを見つめた。
「あなたには可哀想なことをしたとずっと後悔していたの。私が人とは違う体質であなたを産んでしまったから」
「母上・・・」
母が自分に対して負い目を感じているのはフェルゼンも知っていた。
母のせいではないと頭ではわかっていたが、人に近付けない寂しさをつい両親にぶつけてしまいたくなることもあった。
「フェルゼンのあんな嬉しそうな顔、初めて見たわ。私も涙が出そうなほど嬉しかったの。きっとナタリアちゃんはあなたがずっと待っていた相手なのね」
うっすらと涙を浮かべながら微笑む母に、フェルゼンの胸は締め付けられた。
思っていた以上に、自分は両親から愛されていたらしい。
「お気持ちは嬉しいですし、私もナタリアと結婚したいと考えています。でもナタリア本人は身分を気にしているようで・・・」
『身分の差などどうにでもなるさ』と強気でいたが、実際はなかなかの高い壁である。
フェルゼンが心配そうに告げると、国王がなんてことないように平然と答えた。
「ああ、それなら、ナタリア嬢は姉上の侯爵家の養女になることが決まっているから安心しろ。まあ形式上だが、アメリが非常に乗り気でな」
はぁ?
いつの間にそんな大事な話が進んでいたんだ?
きっとアメリが、ナタリアが妹になるならって張り切ったに違いない。
「それは・・・ありがとうございます。ナタリアから良い返事が貰えるといいのですが」
「あら、それはあなた次第よ!私達も無理やり王家の力でどうこうしたくはないと思っているの。ナタリアちゃんに好きになって貰えるようにせいぜい頑張りなさい」
王妃が笑顔で発破をかけた。
「はいっ!頑張ります!!」
親子三人、一つの目標に向かって心を合わせることへの幸せを感じていたが、もう十分子爵家に対して圧力をかけていることには気付いていなかった。
「それにしても、ナタリアちゃんは本当に不思議な子ね。フェルゼンの体質をものともしないんだもの」
「それもそうだが、フェルゼンがナタリア嬢と出会ってから、フェロモンが弱まったのが何より素晴らしい」
父の言葉に、フェルゼンは目を丸くした。
「そうなのですか!?確かに、ナタリアに心を奪われてからは誰も倒れていないようですが」
「きっと、あなたがナタリアちゃんにだけ好かれたいと思っているからでしょうね」
そうかもしれない。
今のフェルゼンには良くも悪くも、ナタリアしか目に入っていなかった。
「絶対、ナタリアを口説き落として私の妃にしてみせます!」
生き生きとした息子の口調に、国王と王妃は晴れやかな顔で頷いていたが、その頃のレンダー子爵家では。
「なにぃっ!?もう一度言ってくれ」
「ですから、ナタリアが王太子に見染められ、妃にしたいと・・・。明日には使いがこちらにみえるそうです」
ナタリアの父がクリスからの報告を受け、白目を剥いていた。
理由はもちろん、自分の心を掴んで離さない子爵令嬢ナタリアを、唯一の妃にしたいと願い出る為である。
国王は王妃と共に夜会から先に退出していた為、フェルゼンが城の二人の私室へと早歩きで廊下を進んでいくと、不意打ちで後片付け中の使用人達と出くわしてしまった。
しまった!!
思いっきり目が合ってしまったではないか。
気が急くあまり、いつもは気を付けているのに急に姿を見せてしまった。
お互いに焦り、フェルゼンは使用人達の様子を注視したが、どうやら倒れる様子はない。
使用人も使用人で、自らの体調に変化が現れないことを確認すると、首を傾げ、我に返ると慌ててフェルゼンに頭を下げた。
不思議に思いつつも胸を撫で下ろすと、フェルゼンは再び国王の部屋へと急いだ。
「父上、フェルゼンです。お疲れのところ申し訳ありませんが、至急お話ししたいことが」
ノックをし、声をかければすぐに入室を許可された。
思えば、この部屋を訪れたことなど今まで数えるほどしかない。
部屋には母である王妃もソファで寛いでいた。
「来ると思っていたわ。ナタリアちゃんのことなら話は進んでいるから安心なさい」
「は?なぜそのことを?」
驚き、間が抜けたような声をあげた息子を見て、二人はクスクスと笑っている。
「ナタリア孃を妃にしたいのだろう?お前を見ていればすぐにわかるわ。とりあえず同伴していた兄には話を通した。明日、レンダー子爵家に正式に使いを出す」
え?
話が早すぎないだろうか?
まだ何も言っていない内に。
フェルゼンがポカンとしていると、王妃が憂いの表情を浮かべ、フェルゼンを見つめた。
「あなたには可哀想なことをしたとずっと後悔していたの。私が人とは違う体質であなたを産んでしまったから」
「母上・・・」
母が自分に対して負い目を感じているのはフェルゼンも知っていた。
母のせいではないと頭ではわかっていたが、人に近付けない寂しさをつい両親にぶつけてしまいたくなることもあった。
「フェルゼンのあんな嬉しそうな顔、初めて見たわ。私も涙が出そうなほど嬉しかったの。きっとナタリアちゃんはあなたがずっと待っていた相手なのね」
うっすらと涙を浮かべながら微笑む母に、フェルゼンの胸は締め付けられた。
思っていた以上に、自分は両親から愛されていたらしい。
「お気持ちは嬉しいですし、私もナタリアと結婚したいと考えています。でもナタリア本人は身分を気にしているようで・・・」
『身分の差などどうにでもなるさ』と強気でいたが、実際はなかなかの高い壁である。
フェルゼンが心配そうに告げると、国王がなんてことないように平然と答えた。
「ああ、それなら、ナタリア嬢は姉上の侯爵家の養女になることが決まっているから安心しろ。まあ形式上だが、アメリが非常に乗り気でな」
はぁ?
いつの間にそんな大事な話が進んでいたんだ?
きっとアメリが、ナタリアが妹になるならって張り切ったに違いない。
「それは・・・ありがとうございます。ナタリアから良い返事が貰えるといいのですが」
「あら、それはあなた次第よ!私達も無理やり王家の力でどうこうしたくはないと思っているの。ナタリアちゃんに好きになって貰えるようにせいぜい頑張りなさい」
王妃が笑顔で発破をかけた。
「はいっ!頑張ります!!」
親子三人、一つの目標に向かって心を合わせることへの幸せを感じていたが、もう十分子爵家に対して圧力をかけていることには気付いていなかった。
「それにしても、ナタリアちゃんは本当に不思議な子ね。フェルゼンの体質をものともしないんだもの」
「それもそうだが、フェルゼンがナタリア嬢と出会ってから、フェロモンが弱まったのが何より素晴らしい」
父の言葉に、フェルゼンは目を丸くした。
「そうなのですか!?確かに、ナタリアに心を奪われてからは誰も倒れていないようですが」
「きっと、あなたがナタリアちゃんにだけ好かれたいと思っているからでしょうね」
そうかもしれない。
今のフェルゼンには良くも悪くも、ナタリアしか目に入っていなかった。
「絶対、ナタリアを口説き落として私の妃にしてみせます!」
生き生きとした息子の口調に、国王と王妃は晴れやかな顔で頷いていたが、その頃のレンダー子爵家では。
「なにぃっ!?もう一度言ってくれ」
「ですから、ナタリアが王太子に見染められ、妃にしたいと・・・。明日には使いがこちらにみえるそうです」
ナタリアの父がクリスからの報告を受け、白目を剥いていた。
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