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観念した私は、自分がミルキーレナであることを認めた。
「そうです、私がミルキーレナです」
前世の、某変なおじさんのような言い方になってしまったと現実逃避をする私の前で、クラレンスはなんだか感無量といった様子で頷いている。
「そうか、やはりミルキーレナは令嬢だったのか。俺の推理は当たっていたな」
いやいや、『魔法令嬢』って公言しているのに、そんな名推理っぽく言われても……。
突っ込みたくなる私に、騎士服のクロスタイを整え、なんだか少し緊張した面持ちで話しかけてくる団長サマ。
「ミルキーレナ、いや、イレーナ嬢。君に伝えたいことがある」
「はい」
「俺はミルキーレナと出会ってから」
ピーピーピー
クラレンスの言葉の途中で、変身ブローチが空気を読まずに鳴り出した。
ドレスのデザインに合わない為、ポケットに入れて持ってきたのだが、今更ながら国王への拝謁時に鳴らなくて良かったと思う。
いや、今鳴っても十分困るのだが。
「えーと、この音ならお気になさらず。怪しい物ではありませんので……」
「団長、どこにいらっしゃいますか? 庭でレイモンド子爵が暴れています! なんだか様子がおかしいので来てください!」
不審な音の出所について説明しようとしていたら、ちょうど騎士団員が団長のクラレンスを探している声が耳に入った。
グッドタイミングである。
あれ?
もしかしなくても、ブローチの呼び出しってそのレイモンド子爵と関係してる?
庭園の方角からは招待客の悲鳴が聞こえてくる。
のんびりしてはいられなさそうだ。
「団長様、先に行ってください」
「君は?」
「私は……今からミルキーレナに変身しないといけないので」
「では控室まで送ろう。あの装束は持ってきているのか?」
「いえ、ここで大丈夫です。団長様はどうぞお先に」
「しかし王宮に不慣れな君を……」
バタバタバタ
「キャーーッ!!」
「逃げろ!!」
いよいよ切羽詰まってきているようだ。
もうこの場で変身するしかないと、私は覚悟を決めた。
幸い人目につかないバルコニーに居る為、クラレンスさえどうにかすれば、ここで変身することは可能だ。
「団長様、少しの間だけ後ろを向いていてくださいね。はい、そのままの姿勢でお願いします。こちらを見ちゃだめですよ?」
強引に彼をグルっと回し、私は小さめに叫んだ。
「ミルミルミルキー、ドレスアップ!」
こんな非常時にもしっかり三十秒かかって、なんとか変身が終わる。
いつもの悪役令嬢ポーズで団長を確認すると――しっかり目が合ってしまった。
「え、もしかして見てました?」
「すまない。誘惑に勝てず見てしまった。しかし、光に包まれて舞い上がる君は、尊く美しかった……」
頬を紅潮させうっとりと話すクラレンスは、変身シーンをしっかり見ていたらしい。
それも初めから。
あーあ、変身を見られるのは恥ずかしいから嫌だったのに。
シルエットが見えるってペロペロも言っていたし。
……シルエット?
「あの、団長様。もしかして私のボディラインを見たりしました?」
「ボディライン? あ、いや、確かに目に毒なほど素晴らしい造形美だったが、いや、違う、そんなじっくりと見てなどいない」
「団長、どこですかー?」
「ああ、早く行かなければな」
慌てた様子で走り出した団長の姿に、絶対じっくり見ていたと私は確信したのだった。
やっぱりムッツリなのかもしれない。
二人で王宮の庭に駆け付けると、そこには子爵を止めようとする騎士団員と……ペロペロの姿があった。
「ペロペロ!」
「レナ、遅かったのう。お前さんが変身したのと同時に、ぬいぐるみになってひとっ飛びじゃ」
「そんなこともできたのね。って、何が起きているの?」
「あの子爵、他国から大量の武器を密輸入しておるのじゃ。クーデターを起こそうと目論んでいたんじゃろうな」
とんだ危険人物じゃないの。
だからあの人、手に爆弾を持って威嚇しているわけね。
「騎士団でも反国王派の動きは掴んでいたが、まさかレイモンド子爵が密輸犯だったとはな。しかし、どうしてこんな行動に出たんだ?」
答えはすぐにわかった。
子爵自身が叫んでいたからである。
「あいつら、俺に面倒で危険な武器の調達を命令しておきながら、自分らだけ安全な場所で高みの見物しやがって!」
どうやら中間管理職の悲哀というやつらしい。
クーデター計画の黒幕に高位の貴族がいるのかもしれない。
「どうせ王宮全部壊すつもりだったんだ。だったら人も建物も、今夜派手に破壊してやる!」
子爵は手にしていた手榴弾のような丸い爆弾を、近くの花壇に投げつけた。
ドカーン
爆弾が破裂し、粉々になった花や土砂が降り注ぐ。
ちょっと!
危ないじゃないの!
幸い誰も居ない場所だった為、被害者は出なかったが、黒い靄に包まれ出した子爵の足元には、いつの間にか大量の爆弾が準備されていた。
あれ全部使うつもり?
本当に王宮が消し飛んでしまうわ。
騎士たちが人々を非難させ、団長は私の盾になろうと腕を広げて立ち塞がってくれている。
しかし、もう焦点が合っていない様子の子爵が、手当たり次第に爆弾を投げ始めた。
万事休す!
クラレンスが私をギュッと大きな体で覆い、爆弾から守るように抱きしめる。
途端に安心感に包まれた私は、無意識に唱えていた。
「醜い心よ、消え去りなさい! ミルキーイリュージョン!」
「そうです、私がミルキーレナです」
前世の、某変なおじさんのような言い方になってしまったと現実逃避をする私の前で、クラレンスはなんだか感無量といった様子で頷いている。
「そうか、やはりミルキーレナは令嬢だったのか。俺の推理は当たっていたな」
いやいや、『魔法令嬢』って公言しているのに、そんな名推理っぽく言われても……。
突っ込みたくなる私に、騎士服のクロスタイを整え、なんだか少し緊張した面持ちで話しかけてくる団長サマ。
「ミルキーレナ、いや、イレーナ嬢。君に伝えたいことがある」
「はい」
「俺はミルキーレナと出会ってから」
ピーピーピー
クラレンスの言葉の途中で、変身ブローチが空気を読まずに鳴り出した。
ドレスのデザインに合わない為、ポケットに入れて持ってきたのだが、今更ながら国王への拝謁時に鳴らなくて良かったと思う。
いや、今鳴っても十分困るのだが。
「えーと、この音ならお気になさらず。怪しい物ではありませんので……」
「団長、どこにいらっしゃいますか? 庭でレイモンド子爵が暴れています! なんだか様子がおかしいので来てください!」
不審な音の出所について説明しようとしていたら、ちょうど騎士団員が団長のクラレンスを探している声が耳に入った。
グッドタイミングである。
あれ?
もしかしなくても、ブローチの呼び出しってそのレイモンド子爵と関係してる?
庭園の方角からは招待客の悲鳴が聞こえてくる。
のんびりしてはいられなさそうだ。
「団長様、先に行ってください」
「君は?」
「私は……今からミルキーレナに変身しないといけないので」
「では控室まで送ろう。あの装束は持ってきているのか?」
「いえ、ここで大丈夫です。団長様はどうぞお先に」
「しかし王宮に不慣れな君を……」
バタバタバタ
「キャーーッ!!」
「逃げろ!!」
いよいよ切羽詰まってきているようだ。
もうこの場で変身するしかないと、私は覚悟を決めた。
幸い人目につかないバルコニーに居る為、クラレンスさえどうにかすれば、ここで変身することは可能だ。
「団長様、少しの間だけ後ろを向いていてくださいね。はい、そのままの姿勢でお願いします。こちらを見ちゃだめですよ?」
強引に彼をグルっと回し、私は小さめに叫んだ。
「ミルミルミルキー、ドレスアップ!」
こんな非常時にもしっかり三十秒かかって、なんとか変身が終わる。
いつもの悪役令嬢ポーズで団長を確認すると――しっかり目が合ってしまった。
「え、もしかして見てました?」
「すまない。誘惑に勝てず見てしまった。しかし、光に包まれて舞い上がる君は、尊く美しかった……」
頬を紅潮させうっとりと話すクラレンスは、変身シーンをしっかり見ていたらしい。
それも初めから。
あーあ、変身を見られるのは恥ずかしいから嫌だったのに。
シルエットが見えるってペロペロも言っていたし。
……シルエット?
「あの、団長様。もしかして私のボディラインを見たりしました?」
「ボディライン? あ、いや、確かに目に毒なほど素晴らしい造形美だったが、いや、違う、そんなじっくりと見てなどいない」
「団長、どこですかー?」
「ああ、早く行かなければな」
慌てた様子で走り出した団長の姿に、絶対じっくり見ていたと私は確信したのだった。
やっぱりムッツリなのかもしれない。
二人で王宮の庭に駆け付けると、そこには子爵を止めようとする騎士団員と……ペロペロの姿があった。
「ペロペロ!」
「レナ、遅かったのう。お前さんが変身したのと同時に、ぬいぐるみになってひとっ飛びじゃ」
「そんなこともできたのね。って、何が起きているの?」
「あの子爵、他国から大量の武器を密輸入しておるのじゃ。クーデターを起こそうと目論んでいたんじゃろうな」
とんだ危険人物じゃないの。
だからあの人、手に爆弾を持って威嚇しているわけね。
「騎士団でも反国王派の動きは掴んでいたが、まさかレイモンド子爵が密輸犯だったとはな。しかし、どうしてこんな行動に出たんだ?」
答えはすぐにわかった。
子爵自身が叫んでいたからである。
「あいつら、俺に面倒で危険な武器の調達を命令しておきながら、自分らだけ安全な場所で高みの見物しやがって!」
どうやら中間管理職の悲哀というやつらしい。
クーデター計画の黒幕に高位の貴族がいるのかもしれない。
「どうせ王宮全部壊すつもりだったんだ。だったら人も建物も、今夜派手に破壊してやる!」
子爵は手にしていた手榴弾のような丸い爆弾を、近くの花壇に投げつけた。
ドカーン
爆弾が破裂し、粉々になった花や土砂が降り注ぐ。
ちょっと!
危ないじゃないの!
幸い誰も居ない場所だった為、被害者は出なかったが、黒い靄に包まれ出した子爵の足元には、いつの間にか大量の爆弾が準備されていた。
あれ全部使うつもり?
本当に王宮が消し飛んでしまうわ。
騎士たちが人々を非難させ、団長は私の盾になろうと腕を広げて立ち塞がってくれている。
しかし、もう焦点が合っていない様子の子爵が、手当たり次第に爆弾を投げ始めた。
万事休す!
クラレンスが私をギュッと大きな体で覆い、爆弾から守るように抱きしめる。
途端に安心感に包まれた私は、無意識に唱えていた。
「醜い心よ、消え去りなさい! ミルキーイリュージョン!」
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