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ペンタンを脱ぎます!
イケメン王子に、されるがままになっている由美・・・
相変わらず目の前の王子は、恍惚の表情でペンタンの手を撫でている。
ちょっと、誰かこの王子を止めてくれません?
ペンタンの首を動かし視線で訴えかけるが、楽しそうな王子の様子に衝撃を受けた人々は、誰も由美の味方にはなってくれないらしい。
『氷の王子がまさか・・・』
『あんなに表情豊かな王子を初めて見ましたわ。』
『さすが召喚の儀!王子の運命の相手を導いてくれたのだな。』
最初は驚き、信じられないといった顔で王子と由美を見ていた彼らだったが、徐々に世界を超えた運命のカップルを祝福するような空気に変わっていく。
「おめでとうございます!」
「お似合いのお二人ですわ!!」
「王子妃召喚、バンザーイ!!」
みんな、私達を祝ってくれてる・・・
もしかして、この王子様が私の運命の相手だったの?
由美が王子を見れば、王子も熱のこもった瞳でこちらを見つめ返す。
そう、そうだったのね!
私、この世界で運命の王子様と幸せになります!!
こうして、由美は異世界に召喚され、王子と幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。
完
って、なるかーっ!!
こっちはペンタンの着ぐるみ着てるんだよ?
中に私が入ってるってこと、絶対理解してないよね?
まさかこの王子様、着ぐるみと結婚するつもりなんじゃないでしょうね。
回りも無責任過ぎるでしょ。
この世界の結婚観、どうなってるんだよー!
由美が心の中で突っ込みまくっていると、初めて王子が直接質問をしてきた。
「愛しい花嫁、あなたのお名前を教えていただけますか?」
おっ、とうとう私の声を出す時がやってきたのね。
こちらに来てから、まだ一言も話してなかったものね。
ん?でも名前ってどっちの?
まあ、気になってるのは着ぐるみの名前だろうから、そっちを答えておこう。
「ペンタンです。」
由美が着ぐるみの中から答える。
「「「「おおおおっ!!」」」」
広間から歓声が上がる。
どうやら、話せないと思われていたらしい。
「なんと愛らしい声とお名前なのでしょう!ペンタン様は若い女性とお見受けいたしました。」
王子が嬉しそうに言うと、回りからは安堵したような空気が流れたが、ペンタンは女の子ではない。
「いいえ、ペンタンは男の子です。」
由美がはっきりと訂正した途端、広間に悲壮感が漂った。
「なんということじゃ!!儀式は失敗じゃーーーーっ!!」
長老もどきは頭を抱えてうずくまり、悲嘆に暮れ始めた。
しかし、王子がキッパリと言い切る。
「関係ない!!ペンタン様は私の花嫁だ!!」
あれ?
なんだか揉めてるような・・・
あ、もしかして花嫁候補なのに、ペンタンが男の子って言ったから?
うわ、この人達ってば、本気で王子様とペンタンを結婚させるつもりだったんだ。
というか、私の存在もいい加減教えておいた方がいい気がしてきたわ。
「あの、ペンタンは男の子ですけど、私は女です。」
「は?『私』とは・・・?」
王子が困惑している。
うん、やっぱり『中の人』のことを知らないのね。
この世界、着ぐるみなさそうだもんね。
「えっと、ペンタンの中にいる私です。って、わからないか。ちょっと手を借りてもいいですか?」
由美は、見せた方が早いと判断し、ペンタンを脱ぐことにした。
しかし、一人で脱げる気がしない為、王子に手伝ってもらうことにしたのである。
本当は脱ぐところを見せるのはNGだよね。
放送事故ものだよ・・・
気にはなったが、今はそうも言っていられない。
由美は、ペンタンの中から頭を持ち上げようとした。
「ペンタンの頭を持ち上げて貰えます?重くって。」
立ち上がった王子が手を貸そうとしてくれるが、明らかに何をするべきか困っている。
「ペンタン様の頭を持ち上げる?それはいったい・・・」
「あ、大丈夫!いけそうです!!そのまま持ってて下さい。よっと、ぷはーっ」
ペンタンの頭がはずされ、由美の頭が外気に晒される。
はーっ、空気が美味しい。
この時由美は、ようやくこちらの世界を肌で感じたのだった。
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