10 / 16
トイレがない
しおりを挟む
ある日の早朝、一軒の家から子供を叱る声が聞こえた。
叱っている男の名前は春之助。
どうやら、息子である小学3年生のリクが寝小便をしてしまったようだ。
「お前、またやったのか……。もういくつだ? いつまでこんなことをするんだ? 恥ずかしくないのか?」
「パパ、ごめんなさい。もうしません」
リクは泣きながら謝っていた。
「まぁ、あなたいいじゃない。リクも反省しているんだし」
妻であるセナがそう言うが、春之助の怒りは収まらない。
「セナ、お前は甘やかしすぎだ。リク、次やったらげんこつだからな? このままだと汚い人間になってしまうぞ!」
そう言い残し、春之助は仕事へと向かった。
春之助は現在四十歳。
油の乗った年頃であり、最近仕事でも昇進した。
まさに働き盛りの時期だった。
昼休みに春之助は休憩所で椅子に座り、缶コーヒーを飲んでいると、部下である北岡が声をかけてきた。
「先輩、どうしたんですか? そんな険しい顔をして」
部下に話した所でナニも変わらない事は十分分かっていたが、不思議と春之助は北岡に愚痴をもらしてしまった。
「息子の寝小便が治らないんだ。もう小学三年生だぞ? このままじゃ駄目な大人になってしまう」
「そんな事で悩んでいたんですか……。寝小便なんてすぐ治りますよ」
「それだけじゃないんだ。トイレもよく汚すし、テレビを見ている時におならもする。それに、食事中に排便しに行ったりするんだぞ? そんなことをしていたらな、駄目な大人になるんだよ」
「確かにマナーは大事ですけど、まだ子供なんだし先輩がちゃんと注意しているなら、ある程度大人になれば治るんじゃないですか。それに、おならくらいいいじゃないですか。別に、食事中にしている訳ではないですし。それに、うんこだって、いつどのタイミングで行きたくなるか分からないんですよ。自然現象なんですから」
それを聞いた春之助は椅子から起き上がり、剣幕を立てて北岡にこう言った。
「ふざけるな! 子供とか大人とか関係ないんだよ。おならぐらいいいだって? そんな汚らわしいことはな、トイレでやるもんなんだよ。それに君はさっきうんこと言ったな? だいの大人がうんこなんて言葉を使うな。ちゃんと排便と言いたまえ!」
春之助は怒って休憩所を後にした。
北岡は呆れた顔をした後、不敵に笑い指を「パチン!」と鳴らした。
春之助は会社帰りの途中、小便をしたくなり駅のホームにあるトイレに行こうとした。
しかし、昨日まであった筈のトイレがなくなっており、そこはただの壁になっていた。
「あれ? ……ここにあったトイレは何処だ? 改装しているとかならまだしも、トイレその物がなくなっている」
春之助は、仕方なく駅の中にあるコンビニに行った。
だが、そこにもあった筈のトイレもなくなっていた。
春之助は、コンビニの男性店員に聞くことにした。
「あの、すみません。お手洗いは何処にありますか?」
「おてあら……なんですかそれ?」
春之助は咳払いをして言い直した。
「あの、トイレは何処にありますか?」
「といれ? そんな商品はここには置いていませんが?」
春之助は、今日の事もあって苛立ちが募った。
「君、ふざけるなよ。私は、トイレがあるのかないのか聞いているんだ」
それを聞いた店員はナニも言わず事務所に入って行き、一人の中年男性と共に出て来た。「店長、この人です。この人が、なんか変なことを言って困っているんですけど」
春之助は更に苛立ちが募ってしまう。
「変なことを言っているのは君の方だろ。あんたが店長か? 私はただこの店員に『トイレはないのか?』としか言ってないぞ?」
すると店長も首を傾げ、店員がさっき言ったことと同じような答えが返ってきた。
「といれ? 失礼ですが、『といれ』という商品はここにはございません。あの、他のお客様のご迷惑になるので……」
「もういい! この変人どもが!」
春之助は二人に怒鳴りつけ、コンビニを後にした。
次は、駅員の人に尋ねた。
しかし、帰ってきた言葉はやはり「といれ? あぁ、お子さんが迷子になられたのですか?」と変な答えが返ってきた。
春之助は訳が分からなくなり、そのせいでなのか尿意も引っ込んでしまった。
「もういい……。家に帰ろう」
春之助は 家に帰宅しトイレに行こうとするが、なんと家にも今朝まであった筈のトイレがなくなっていた。
「おい……嘘だろ?」
春之助は、すぐセナのいる部屋に行った。
「なぁ、セナ。ここにあったトイレは何処にいったんだ?」
「ナニ、といれって? あなたナニか探し物?」
「セナまで。……まさか」
春之助はついに悟ってしまう。
「まさか……いや間違えない。この世からトイレがなくなっている。いや、トイレという概念すらなくなっている。でも皆はどこで尿を足すのだ? 何処で排便をするのだ?」
考えていると、春之助はとうとう我慢の限界がきた。
「やばい! 漏れる! セナ、少し散歩して来る!」
そう言い、急いで外に出た。
しかし、外に出たところでトイレは存在しない。
春之助はついに、茂のみの中で野小便をしてしまった。
春之助は昔、両親から「小便と大便は、ちゃんとトイレでやること」と教わって生きてきた。
故に初めての経験の為、挙動不審になっていた。
「俺が……この俺が……とうとう野小便をしてしまった。屈辱だ。誰も見てないよな? 大丈夫だよな? なんでこんなことに。俺のプライドがズタボロだ」
春之助は小便を出し終えると、しゅんとして家に帰った。
春之助の姿を見て、セナが少し微笑みこう言った。
「あなたどうしたの? この世の終わりみたいな顔して」
「……なぁ、セナ。お前は尿を出す時は何処でしているんだ?」
「にょう? だから、あなたさっきからナニを言っているのよ。あなた、多分仕事で疲れているのよ。今日は早く休んだら?」
「……ちょっと電話してくる」
春之助は自分の部屋に入り、一人の友人に電話をかけた。
「もしもし、ケンジか?」
「おー、春之助か? 久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」
「あぁ……。それより聞きたいことがあるんだ」
「どうしたんだよ? 急に」
「なぁ、ケンジ。お前は小便する時、何処でする?」
「しょうべん? なんだそれ?」
「トイレも聞いたことがないか?」
「といれ? なんか最近の流行りの言葉かナニかか?」
「やはりケンジも知らない」
次の瞬間、春之助は頬を赤くし少し恥じらいながらケンジにこう言った。
「なら、ケンジにもついてるだろ?」
「ついてる? ナニが?」
「ナニがって……男のナニだよ」
「ナニ? ふっ、春之助が下ネタ言うなんて珍しいな」
「そんなことはどうだっていんだよ! で、そのナニはナニに使うものなんだ?」
「春之助、だじゃれも言うようになったんだな」
「いいから答えろ!」
「今更ナニ言ってんだよ。ナニは女の人と行為をする時に使うものだろ?」
「それだけか?」
「はぁ? 春之助なんかおかしくなったか?」
「いいから、それだけに使うものなのか?」
「それ以外に使うことなくね? ……あぁ、あったわ!」
「そうか! 一体なんだ?」
「自分の手で握ってシコッ」
「ブチッ!」
呆れた春之助は電話を切った。
その日の夜の事。
「パパ、ママ、お風呂入って来るね」
リクがそう言うと、春之助は「チャンス!」と思った。
「リク! パパも一緒に入っていいか?」
「あなた珍しいわね。いつもなら『もう小学三年生なんだから一人で入れ』って言うくせに……」
「セナ……まぁいいじゃないか」
こうして、春之助はリクと一緒に風呂場へと向かった。
「リク、お前に話したいことがあるから風呂に浸かりなさい」
「え? パパ、いつも『お風呂に浸かる前は身体洗いなさい』って言うのに……」
「……今日はいいんだ。先に浸かりなさい」
こうして、風呂に浸かった二人。
「なぁ、リク……。今日の朝、怒鳴ってすまなかったな」
春之助はリクに今日の朝、叱った事を謝罪した。
しかし、リクは首を傾げた。
「え? 僕ナニかした?」
「いや、だからリクが寝小便してパパが怒ったじゃないか?」
「ねしょうべんてナニ? パパどうかしたの?」
春之助は、一旦息を吐き落ち着いた。
「なぁ、リク。お前のその股にぶら下がっている物はナニに使うものだ?」
「……これ? まだ、学校で習ってないよ。
もしかして、お父さんが教えてくれるの?」
「いや、学校で教えてもらいなさい。それより、今日はパパがリクの体洗ってやるから、風呂から出なさい」
「ほんとに? 今日のパパ、ナニか可笑しいけど、優しい。」
春之助には、確認したいことがあった。
息子のムスコのことはもう分かっていたが、肝心なあることを知りたかったのである。
「お尻も綺麗に洗ってやるから立ちなさい」
「はーい!」
リクがお尻を近づけた瞬間、春之助はリクの割れたお尻を一気に開いた。
春之助は全身の血の気が引いた。
「ナニ? 肛門が……ないだと」
二人がお風呂から上がると、セナが夜ご飯を用意していた。
「さぁ、召し上がれ」
「うわー美味しそう! いただきます!」
「あなたも、今日はナニか疲れてるみたいだから早く食べたら?」
「あぁ……いただきます」
春之助は心の中で思った。
「飯は普通通りに食べるのか。……なら、食べ物や飲み物の排出は何処からするんだ?」
もう、考えても仕方がないと分かっていたが、どうしても気になってしまい二人に聞くことにした。
「なぁ、二人共、聞いてくれるか? 今、俺達が食べている物や飲んでいる物。これは体内に入るとどうなるのかな?」
「ナニ言ってるの? やっぱり今日のあなたおかしいわ」
「いいから答えてくれないか?」
「パパ、そんなことも知らないの? 食べた物や飲んだ物は、全部肉になったり、血になったり、骨を強くしてくれるんだよ」
「ナニ……全部? 100%ってことか?」
「うん、学校でもう習ったよ」
「あなた、リクに教わるなんて、なんかみっともないわね……」
セナはもう春之助に呆れていた。
春之助は再び心の中で思った。
「要は平たく言えば、食べ物や飲み物を体内に入れたとしても、その全てを身体が吸収してくれる。そのせいで排出物が体内から出ることはないというわけか。……まるで化け物じゃないか」
春之助はその夜、まったく眠れなかった。「本当にどうなっているんだ。……でも確か、子供は作れるんだよな? なら女性は、生理現象が起こる筈だ。その時にトイレは必要だろ?」
春之助は、隣に寝ているセナに聞こうとしたが、次の瞬間にはそれを辞めた。
「いや、今更聞いた所で意味はないか。それに、どうせいい答えが返ってくる筈もない」
すると突然、強烈な腹痛が春之助を襲ってきた。
「ヤバイ! 漏れそう!」
春之助はティッシュを持ち、急いで外に出た。
そして、近くにある茂みの中でとうとう人生初の野糞をしてしまった。
「最悪だ。これからどうすればいいんだ……」 その時だった。
突然、エイジはライトを何者かに照らされ、驚いて振り返った。
なんとそこには、警察官とたくさんの野次馬が立っていた。
その中には、妻のセナと息子のリクの姿もあった。
「そこでナニをしている? うわ! なんだこの臭いは。貴様、一体尻からナニを出している? 不法投棄で現行犯逮捕する」
警察の怒号とともに、野次馬の声もひそひそと何かを言っている。
「やだ、ナニあの人……。臭いし汚らわしい」
春之助は、とうとう涙を流しながら叫んだ。
「ちょっと待ってくれ。俺はただ、排便をしたかっただけなんだ。自然現象だろ? トイレがないからいけないんだろ?」
しかし、その言葉が通じることはなかった。
「ナニが自然現象だ! 早くパトカーに乗れ!」
「なぁ、セナ、リク、助けてくれ! 俺はただ……」
「あなた……最悪。一体、身体からナニを出しているの? まるで化け物じゃない」
「パパ化け物だったの? ずっと僕とママを騙していたの?」
とうとう家族からも軽蔑な答えが返ってくる。
「違うんだ! この世界がおかしいんだ! 誰か俺の話を聞いてくれ!」
春之助は最後まで叫んで訴えるが、結局誰にも伝わることはなく、警察官に連行されてしまった。
多くの野次馬の中で、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる人物がいた。
それは、春之助の後輩である北岡だった。
叱っている男の名前は春之助。
どうやら、息子である小学3年生のリクが寝小便をしてしまったようだ。
「お前、またやったのか……。もういくつだ? いつまでこんなことをするんだ? 恥ずかしくないのか?」
「パパ、ごめんなさい。もうしません」
リクは泣きながら謝っていた。
「まぁ、あなたいいじゃない。リクも反省しているんだし」
妻であるセナがそう言うが、春之助の怒りは収まらない。
「セナ、お前は甘やかしすぎだ。リク、次やったらげんこつだからな? このままだと汚い人間になってしまうぞ!」
そう言い残し、春之助は仕事へと向かった。
春之助は現在四十歳。
油の乗った年頃であり、最近仕事でも昇進した。
まさに働き盛りの時期だった。
昼休みに春之助は休憩所で椅子に座り、缶コーヒーを飲んでいると、部下である北岡が声をかけてきた。
「先輩、どうしたんですか? そんな険しい顔をして」
部下に話した所でナニも変わらない事は十分分かっていたが、不思議と春之助は北岡に愚痴をもらしてしまった。
「息子の寝小便が治らないんだ。もう小学三年生だぞ? このままじゃ駄目な大人になってしまう」
「そんな事で悩んでいたんですか……。寝小便なんてすぐ治りますよ」
「それだけじゃないんだ。トイレもよく汚すし、テレビを見ている時におならもする。それに、食事中に排便しに行ったりするんだぞ? そんなことをしていたらな、駄目な大人になるんだよ」
「確かにマナーは大事ですけど、まだ子供なんだし先輩がちゃんと注意しているなら、ある程度大人になれば治るんじゃないですか。それに、おならくらいいいじゃないですか。別に、食事中にしている訳ではないですし。それに、うんこだって、いつどのタイミングで行きたくなるか分からないんですよ。自然現象なんですから」
それを聞いた春之助は椅子から起き上がり、剣幕を立てて北岡にこう言った。
「ふざけるな! 子供とか大人とか関係ないんだよ。おならぐらいいいだって? そんな汚らわしいことはな、トイレでやるもんなんだよ。それに君はさっきうんこと言ったな? だいの大人がうんこなんて言葉を使うな。ちゃんと排便と言いたまえ!」
春之助は怒って休憩所を後にした。
北岡は呆れた顔をした後、不敵に笑い指を「パチン!」と鳴らした。
春之助は会社帰りの途中、小便をしたくなり駅のホームにあるトイレに行こうとした。
しかし、昨日まであった筈のトイレがなくなっており、そこはただの壁になっていた。
「あれ? ……ここにあったトイレは何処だ? 改装しているとかならまだしも、トイレその物がなくなっている」
春之助は、仕方なく駅の中にあるコンビニに行った。
だが、そこにもあった筈のトイレもなくなっていた。
春之助は、コンビニの男性店員に聞くことにした。
「あの、すみません。お手洗いは何処にありますか?」
「おてあら……なんですかそれ?」
春之助は咳払いをして言い直した。
「あの、トイレは何処にありますか?」
「といれ? そんな商品はここには置いていませんが?」
春之助は、今日の事もあって苛立ちが募った。
「君、ふざけるなよ。私は、トイレがあるのかないのか聞いているんだ」
それを聞いた店員はナニも言わず事務所に入って行き、一人の中年男性と共に出て来た。「店長、この人です。この人が、なんか変なことを言って困っているんですけど」
春之助は更に苛立ちが募ってしまう。
「変なことを言っているのは君の方だろ。あんたが店長か? 私はただこの店員に『トイレはないのか?』としか言ってないぞ?」
すると店長も首を傾げ、店員がさっき言ったことと同じような答えが返ってきた。
「といれ? 失礼ですが、『といれ』という商品はここにはございません。あの、他のお客様のご迷惑になるので……」
「もういい! この変人どもが!」
春之助は二人に怒鳴りつけ、コンビニを後にした。
次は、駅員の人に尋ねた。
しかし、帰ってきた言葉はやはり「といれ? あぁ、お子さんが迷子になられたのですか?」と変な答えが返ってきた。
春之助は訳が分からなくなり、そのせいでなのか尿意も引っ込んでしまった。
「もういい……。家に帰ろう」
春之助は 家に帰宅しトイレに行こうとするが、なんと家にも今朝まであった筈のトイレがなくなっていた。
「おい……嘘だろ?」
春之助は、すぐセナのいる部屋に行った。
「なぁ、セナ。ここにあったトイレは何処にいったんだ?」
「ナニ、といれって? あなたナニか探し物?」
「セナまで。……まさか」
春之助はついに悟ってしまう。
「まさか……いや間違えない。この世からトイレがなくなっている。いや、トイレという概念すらなくなっている。でも皆はどこで尿を足すのだ? 何処で排便をするのだ?」
考えていると、春之助はとうとう我慢の限界がきた。
「やばい! 漏れる! セナ、少し散歩して来る!」
そう言い、急いで外に出た。
しかし、外に出たところでトイレは存在しない。
春之助はついに、茂のみの中で野小便をしてしまった。
春之助は昔、両親から「小便と大便は、ちゃんとトイレでやること」と教わって生きてきた。
故に初めての経験の為、挙動不審になっていた。
「俺が……この俺が……とうとう野小便をしてしまった。屈辱だ。誰も見てないよな? 大丈夫だよな? なんでこんなことに。俺のプライドがズタボロだ」
春之助は小便を出し終えると、しゅんとして家に帰った。
春之助の姿を見て、セナが少し微笑みこう言った。
「あなたどうしたの? この世の終わりみたいな顔して」
「……なぁ、セナ。お前は尿を出す時は何処でしているんだ?」
「にょう? だから、あなたさっきからナニを言っているのよ。あなた、多分仕事で疲れているのよ。今日は早く休んだら?」
「……ちょっと電話してくる」
春之助は自分の部屋に入り、一人の友人に電話をかけた。
「もしもし、ケンジか?」
「おー、春之助か? 久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」
「あぁ……。それより聞きたいことがあるんだ」
「どうしたんだよ? 急に」
「なぁ、ケンジ。お前は小便する時、何処でする?」
「しょうべん? なんだそれ?」
「トイレも聞いたことがないか?」
「といれ? なんか最近の流行りの言葉かナニかか?」
「やはりケンジも知らない」
次の瞬間、春之助は頬を赤くし少し恥じらいながらケンジにこう言った。
「なら、ケンジにもついてるだろ?」
「ついてる? ナニが?」
「ナニがって……男のナニだよ」
「ナニ? ふっ、春之助が下ネタ言うなんて珍しいな」
「そんなことはどうだっていんだよ! で、そのナニはナニに使うものなんだ?」
「春之助、だじゃれも言うようになったんだな」
「いいから答えろ!」
「今更ナニ言ってんだよ。ナニは女の人と行為をする時に使うものだろ?」
「それだけか?」
「はぁ? 春之助なんかおかしくなったか?」
「いいから、それだけに使うものなのか?」
「それ以外に使うことなくね? ……あぁ、あったわ!」
「そうか! 一体なんだ?」
「自分の手で握ってシコッ」
「ブチッ!」
呆れた春之助は電話を切った。
その日の夜の事。
「パパ、ママ、お風呂入って来るね」
リクがそう言うと、春之助は「チャンス!」と思った。
「リク! パパも一緒に入っていいか?」
「あなた珍しいわね。いつもなら『もう小学三年生なんだから一人で入れ』って言うくせに……」
「セナ……まぁいいじゃないか」
こうして、春之助はリクと一緒に風呂場へと向かった。
「リク、お前に話したいことがあるから風呂に浸かりなさい」
「え? パパ、いつも『お風呂に浸かる前は身体洗いなさい』って言うのに……」
「……今日はいいんだ。先に浸かりなさい」
こうして、風呂に浸かった二人。
「なぁ、リク……。今日の朝、怒鳴ってすまなかったな」
春之助はリクに今日の朝、叱った事を謝罪した。
しかし、リクは首を傾げた。
「え? 僕ナニかした?」
「いや、だからリクが寝小便してパパが怒ったじゃないか?」
「ねしょうべんてナニ? パパどうかしたの?」
春之助は、一旦息を吐き落ち着いた。
「なぁ、リク。お前のその股にぶら下がっている物はナニに使うものだ?」
「……これ? まだ、学校で習ってないよ。
もしかして、お父さんが教えてくれるの?」
「いや、学校で教えてもらいなさい。それより、今日はパパがリクの体洗ってやるから、風呂から出なさい」
「ほんとに? 今日のパパ、ナニか可笑しいけど、優しい。」
春之助には、確認したいことがあった。
息子のムスコのことはもう分かっていたが、肝心なあることを知りたかったのである。
「お尻も綺麗に洗ってやるから立ちなさい」
「はーい!」
リクがお尻を近づけた瞬間、春之助はリクの割れたお尻を一気に開いた。
春之助は全身の血の気が引いた。
「ナニ? 肛門が……ないだと」
二人がお風呂から上がると、セナが夜ご飯を用意していた。
「さぁ、召し上がれ」
「うわー美味しそう! いただきます!」
「あなたも、今日はナニか疲れてるみたいだから早く食べたら?」
「あぁ……いただきます」
春之助は心の中で思った。
「飯は普通通りに食べるのか。……なら、食べ物や飲み物の排出は何処からするんだ?」
もう、考えても仕方がないと分かっていたが、どうしても気になってしまい二人に聞くことにした。
「なぁ、二人共、聞いてくれるか? 今、俺達が食べている物や飲んでいる物。これは体内に入るとどうなるのかな?」
「ナニ言ってるの? やっぱり今日のあなたおかしいわ」
「いいから答えてくれないか?」
「パパ、そんなことも知らないの? 食べた物や飲んだ物は、全部肉になったり、血になったり、骨を強くしてくれるんだよ」
「ナニ……全部? 100%ってことか?」
「うん、学校でもう習ったよ」
「あなた、リクに教わるなんて、なんかみっともないわね……」
セナはもう春之助に呆れていた。
春之助は再び心の中で思った。
「要は平たく言えば、食べ物や飲み物を体内に入れたとしても、その全てを身体が吸収してくれる。そのせいで排出物が体内から出ることはないというわけか。……まるで化け物じゃないか」
春之助はその夜、まったく眠れなかった。「本当にどうなっているんだ。……でも確か、子供は作れるんだよな? なら女性は、生理現象が起こる筈だ。その時にトイレは必要だろ?」
春之助は、隣に寝ているセナに聞こうとしたが、次の瞬間にはそれを辞めた。
「いや、今更聞いた所で意味はないか。それに、どうせいい答えが返ってくる筈もない」
すると突然、強烈な腹痛が春之助を襲ってきた。
「ヤバイ! 漏れそう!」
春之助はティッシュを持ち、急いで外に出た。
そして、近くにある茂みの中でとうとう人生初の野糞をしてしまった。
「最悪だ。これからどうすればいいんだ……」 その時だった。
突然、エイジはライトを何者かに照らされ、驚いて振り返った。
なんとそこには、警察官とたくさんの野次馬が立っていた。
その中には、妻のセナと息子のリクの姿もあった。
「そこでナニをしている? うわ! なんだこの臭いは。貴様、一体尻からナニを出している? 不法投棄で現行犯逮捕する」
警察の怒号とともに、野次馬の声もひそひそと何かを言っている。
「やだ、ナニあの人……。臭いし汚らわしい」
春之助は、とうとう涙を流しながら叫んだ。
「ちょっと待ってくれ。俺はただ、排便をしたかっただけなんだ。自然現象だろ? トイレがないからいけないんだろ?」
しかし、その言葉が通じることはなかった。
「ナニが自然現象だ! 早くパトカーに乗れ!」
「なぁ、セナ、リク、助けてくれ! 俺はただ……」
「あなた……最悪。一体、身体からナニを出しているの? まるで化け物じゃない」
「パパ化け物だったの? ずっと僕とママを騙していたの?」
とうとう家族からも軽蔑な答えが返ってくる。
「違うんだ! この世界がおかしいんだ! 誰か俺の話を聞いてくれ!」
春之助は最後まで叫んで訴えるが、結局誰にも伝わることはなく、警察官に連行されてしまった。
多くの野次馬の中で、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる人物がいた。
それは、春之助の後輩である北岡だった。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる