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天国から地獄へ
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春は過ぎ、ハナがミセイエルと暮らし始めて2ヶ月が過ぎた。
梅雨の季節も過ぎたというのに今日も雨だ。
この1ヵ月は雨ばかりで一度も太陽を見ることがない。
この異常気象にも思える冷夏が続けば農作物にも多大な被害が出てしまう。
ここ数日のうちに炎家が天候の補正に乗り出して晴天を呼び込む準備をしているという報告もあった。
この程度の異常気象なら自分が乗り出すこともないだろう。
ミセイエルには雨ばかり続く天候よりも、ハナの方がずっと気にかかる。
ここ1ヵ月の彼女はまるでこのデリカの天気のように暗く沈んでいる。
ゼウスの能力で天候を操作するように彼女の心も動かせるのなら自分の持つ全ての能力を使ってあの笑顔を取り戻したい。
とにかく苦しいのだ。
ミハイル宮の桜の下でハナと過ごした優しい時間は春の陽光を浴びて、溢れかえる幸福感に包まれていた。
一度その心地よさを体験してしまうと、人は毎日でもそれを求めてしまう。
だからどうしても彼女を側に置きたくなった。
彼女は僕のことを傲慢男というが、長年探し求めた少女がやっと目の前に現れたのだから囲い込むのは当然だろう?
深夜を過ぎて仕事を終えたミセイエルは、帰り支度をして鞄を持つと、ガラス窓に当たる雨粒を見つめて浅いため息を吐く。
「オマエ、オレの誘いを断って今日も帰るつもりか!?彼女との結婚はコウレイを近づけないための口実と、祇家への対抗意識と、気まぐれだろうが。聖人君子の夫を演じる必要が何処にある?」
声のした方に視線を移すと入り口に知った顔が仁王立ちで立っていた。
ヨンサンがいつ自分の執務室に入って来たのかも気がつかないほど心も体も疲れていた。
「オマエこの頃おかしいぞ。幾つものプロジェクトを抱え込んで深夜まで仕事して。気まぐれで籍を入れた女のいる家に帰るのに飽きたんだろう?帰るのが辛いならとっとと追い出せばいいじゃないか」
「ああ。辛い。正直彼女の顔を見るのが苦痛だし、夜もあまり眠れない」
思わず出た弱音に目の前の男が目を剥いて数秒止まり、ここ最近で溜め込んだ鬱憤を吐き出すようにぶちまけた。
「だったら今すぐ離婚しろ!どうしょうもない女のレッテルを貼ってさっさとリオンの元に追い返せ!いつまでもこんな生活を続けていると倒れちまうだろうが!!」
噛みつくように怒鳴られて、ミセイエルは力なく笑った。
彼女の顔を見るのが辛いのは、そこに生気がないからだし、眠れないのは彼女を抱きたい気持ちを抑えているからで、決して彼女に消えてほしいわけじゃない。
あの日、自宅のペントハウスに着いて状況を把握した彼女はすぐさま反撃に出た。
「あなたの唱える同居の言い分は十分にわかりました。でも桜家を巻き込む必要が何処にあるの?! リンに嫌な思いをさせて、アサオにだっていらぬ汚点をつけて!」
怒りに燃える黒曜石の瞳の中に見える桜花が濃い紅色に輝いて息をのむほどの美しさだ。
「あのまま君をリオンの元に置いておくと色々な虫が寄って来そうなんでね。僕の妻に何人もの愛人がいるなどと囁かれてはたまらない。君にはSPを付けてあるから何かあると逐一報告が来ることを忘れないで」
「私のようなふつうの女を監視ですか?つまらないエヅラ報告をお望みですか?ゼウス様は余程お暇なのですね」
ハナが信じられないというように嫌味を込めた呆れのため息を吐いたので鼻で笑ってやる。
”フ”
この時僕は宝物をやっと手に入れて有頂天になっていた。
「勝手にするといいわ。でもあなたのせいで、叔母やリュウオンやリンやアサオが傷つくことは許さないから!」
怒りに任せて後ろ手にドアをバシンと閉めた彼女に向かって”行儀が悪いね”と声を掛けると”あなたにうつされたのよ”と返される。
”ハハハ”
思わず笑い声が漏れた。
ここまで素直な心を晒してリズムよく反撃されると心地よくて痛快だ。
また彼女は可愛い悪戯もする。
たとえば、誰に聞いたのか僕の嫌いな料理ばかりを食卓に並べて満足そうな顔で微笑む。
「さあ、召し上がれ」
「うわぁ、とってもおいしそうだ。好物ばかりだよ」
嫌いなメニューなんて君と一緒の食卓に着けるなら苦にならないね。
ニッコリ笑って、残さず食べてやると、しょんぼりと肩を落とす仕草が何とも可愛かったりする。
「ねえ、お休みのキスをしようか?いってらっしゃいや、お帰りのキスももらってないよ?」
「(絵に描いた餅の分際で何を要求してるんだ?この傲慢男は!)」
「僕のキスを待ってる女性って結構いたりするんだよ」
「(だったらそちらに帰宅してください。いってらっしゃいも、お帰りも言わなくていいように他所でのお泊りを希望します)」
僕が、あちらの世界の言葉は分からないと思っていて、悪口や不平不満はすべてあちらの言葉での機関銃トークだ。
残念でした!君を探す時間があまりにも長すぎたから君の使うあちらの言葉はすでににマスター済みだよ。
ニタニタ笑う僕と、慌てて止めに入るメイド頭のランの顔を見て憤懣やるかたなしと言ったように嘆息する。
僕には見せない輝くような笑顔をランや他のメイド達に見せるのにはちょっとムカつくが、コロコロ表情を変える彼女の顔を見るのが楽しみで、毎日早々に帰宅した。
自分は厄介者だからといって西日の当たる予備のクローゼットに住みだして、極めつけに”ここは私の城だから勝手に入らないで”と釘を刺されたのには恐れ入った。
そんな日常を2人で過ごし始めて半月が過ぎた頃に、2人の結婚が愛情からではなくミセイエルの気まぐれとハナの計算高さによるものだと三文新聞に載った。
憤慨する僕をしり目に”だって本当のことだもの”と平然としていたハナだったが、記事の中心が自分に対する非難から、リンやアサファひいては桜家の誹謗中傷に移り、リークグループへのバッシングにまで及ぶと顔色を変えた。
【貴品につかなかったオウカ・リンの裏事情】【桜家の貴姫リン・オーツ面目を失う】【貴品オウカ・オウカ誕生のために桜家が使った汚い手口】【リークグループ、身の程知らずの嫁の襲来でイメージダウン・収益激減】
僕が天界での公務をこなすために地上を離れた一週間の出来事だった。
状況を知ってすぐさま各テレビ局に圧力をかけたが時すでに遅く。
連日流れる桜家の人々を追いかけまわすレポーターの姿や、アサファに対するバッシングが彼女から表情を奪ったのだとメイド頭のランが嘆く。
この時からミセイエルの大好きな黒曜石の大きな瞳は何も語らず、ただただ涙を流す。
ふっくらとして赤かった唇は噛みしめられて艶を消し色を濁して、言葉を出すこともない。
ミセイエルはこの時初めて、慟哭の悲しみというものを知った。
今まで自分が傷ついて生まれる悲しみは自分でどうとでもなった。
たとえば、諦めて次の楽しみを見つけるのもいいし、傷つけた奴らを見返すためにがむしゃらになるのもいい。
そうすることで、悲しみは時間と共に癒えてくれるし、乗り越えもした。
だが、自分の大切な愛する人が傷つき悲しむのを見ているのは、自分が傷つき悲しむことよりはるかに辛い。
ハナが悲しむのを見て、全能であるはずの自分がどうする事も出来ないことがもどかしい。
涙の流れる青白い頬を拭うことも、色あせた唇に口づけて温めてやる事も出来ない悔しさ。
今や彼女は、名前を呼んでも、強く抱きしめても表情一つ変えることなく、ただただ涙を流す壊れた人形のようだ。
ミセイエルは自分ではどうしょうもない悲しみがあることをこの時初めて知った。
いつもならハードな仕事をすることで切り替えられる気持ちが24時間ハナの悲しむ顔で埋め尽くされる。
暮らし始めはハナと過ごす優しい時間の中に身を置き天国の暮らしだった。
それを経験した後に、愛する人を傷づけられて嘆き悲しむハナを見続けなければならない地獄に落とされた。
さすがにキツイ。
しかも彼女の心を占める思いの人は自分じゃない・・・
あれほど浮名を流したミセイエルが、自分の誘いを断り続けて、顔も見たくない女のもとへ毎日帰宅することがどうしても理解できなかったヨンサンは、彼に内緒で計算高い性悪女?のハナに会いに出かけることにした。
もちろん離婚を迫るつもりで。
梅雨の季節も過ぎたというのに今日も雨だ。
この1ヵ月は雨ばかりで一度も太陽を見ることがない。
この異常気象にも思える冷夏が続けば農作物にも多大な被害が出てしまう。
ここ数日のうちに炎家が天候の補正に乗り出して晴天を呼び込む準備をしているという報告もあった。
この程度の異常気象なら自分が乗り出すこともないだろう。
ミセイエルには雨ばかり続く天候よりも、ハナの方がずっと気にかかる。
ここ1ヵ月の彼女はまるでこのデリカの天気のように暗く沈んでいる。
ゼウスの能力で天候を操作するように彼女の心も動かせるのなら自分の持つ全ての能力を使ってあの笑顔を取り戻したい。
とにかく苦しいのだ。
ミハイル宮の桜の下でハナと過ごした優しい時間は春の陽光を浴びて、溢れかえる幸福感に包まれていた。
一度その心地よさを体験してしまうと、人は毎日でもそれを求めてしまう。
だからどうしても彼女を側に置きたくなった。
彼女は僕のことを傲慢男というが、長年探し求めた少女がやっと目の前に現れたのだから囲い込むのは当然だろう?
深夜を過ぎて仕事を終えたミセイエルは、帰り支度をして鞄を持つと、ガラス窓に当たる雨粒を見つめて浅いため息を吐く。
「オマエ、オレの誘いを断って今日も帰るつもりか!?彼女との結婚はコウレイを近づけないための口実と、祇家への対抗意識と、気まぐれだろうが。聖人君子の夫を演じる必要が何処にある?」
声のした方に視線を移すと入り口に知った顔が仁王立ちで立っていた。
ヨンサンがいつ自分の執務室に入って来たのかも気がつかないほど心も体も疲れていた。
「オマエこの頃おかしいぞ。幾つものプロジェクトを抱え込んで深夜まで仕事して。気まぐれで籍を入れた女のいる家に帰るのに飽きたんだろう?帰るのが辛いならとっとと追い出せばいいじゃないか」
「ああ。辛い。正直彼女の顔を見るのが苦痛だし、夜もあまり眠れない」
思わず出た弱音に目の前の男が目を剥いて数秒止まり、ここ最近で溜め込んだ鬱憤を吐き出すようにぶちまけた。
「だったら今すぐ離婚しろ!どうしょうもない女のレッテルを貼ってさっさとリオンの元に追い返せ!いつまでもこんな生活を続けていると倒れちまうだろうが!!」
噛みつくように怒鳴られて、ミセイエルは力なく笑った。
彼女の顔を見るのが辛いのは、そこに生気がないからだし、眠れないのは彼女を抱きたい気持ちを抑えているからで、決して彼女に消えてほしいわけじゃない。
あの日、自宅のペントハウスに着いて状況を把握した彼女はすぐさま反撃に出た。
「あなたの唱える同居の言い分は十分にわかりました。でも桜家を巻き込む必要が何処にあるの?! リンに嫌な思いをさせて、アサオにだっていらぬ汚点をつけて!」
怒りに燃える黒曜石の瞳の中に見える桜花が濃い紅色に輝いて息をのむほどの美しさだ。
「あのまま君をリオンの元に置いておくと色々な虫が寄って来そうなんでね。僕の妻に何人もの愛人がいるなどと囁かれてはたまらない。君にはSPを付けてあるから何かあると逐一報告が来ることを忘れないで」
「私のようなふつうの女を監視ですか?つまらないエヅラ報告をお望みですか?ゼウス様は余程お暇なのですね」
ハナが信じられないというように嫌味を込めた呆れのため息を吐いたので鼻で笑ってやる。
”フ”
この時僕は宝物をやっと手に入れて有頂天になっていた。
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”ハハハ”
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「うわぁ、とってもおいしそうだ。好物ばかりだよ」
嫌いなメニューなんて君と一緒の食卓に着けるなら苦にならないね。
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「(だったらそちらに帰宅してください。いってらっしゃいも、お帰りも言わなくていいように他所でのお泊りを希望します)」
僕が、あちらの世界の言葉は分からないと思っていて、悪口や不平不満はすべてあちらの言葉での機関銃トークだ。
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ニタニタ笑う僕と、慌てて止めに入るメイド頭のランの顔を見て憤懣やるかたなしと言ったように嘆息する。
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そんな日常を2人で過ごし始めて半月が過ぎた頃に、2人の結婚が愛情からではなくミセイエルの気まぐれとハナの計算高さによるものだと三文新聞に載った。
憤慨する僕をしり目に”だって本当のことだもの”と平然としていたハナだったが、記事の中心が自分に対する非難から、リンやアサファひいては桜家の誹謗中傷に移り、リークグループへのバッシングにまで及ぶと顔色を変えた。
【貴品につかなかったオウカ・リンの裏事情】【桜家の貴姫リン・オーツ面目を失う】【貴品オウカ・オウカ誕生のために桜家が使った汚い手口】【リークグループ、身の程知らずの嫁の襲来でイメージダウン・収益激減】
僕が天界での公務をこなすために地上を離れた一週間の出来事だった。
状況を知ってすぐさま各テレビ局に圧力をかけたが時すでに遅く。
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この時からミセイエルの大好きな黒曜石の大きな瞳は何も語らず、ただただ涙を流す。
ふっくらとして赤かった唇は噛みしめられて艶を消し色を濁して、言葉を出すこともない。
ミセイエルはこの時初めて、慟哭の悲しみというものを知った。
今まで自分が傷ついて生まれる悲しみは自分でどうとでもなった。
たとえば、諦めて次の楽しみを見つけるのもいいし、傷つけた奴らを見返すためにがむしゃらになるのもいい。
そうすることで、悲しみは時間と共に癒えてくれるし、乗り越えもした。
だが、自分の大切な愛する人が傷つき悲しむのを見ているのは、自分が傷つき悲しむことよりはるかに辛い。
ハナが悲しむのを見て、全能であるはずの自分がどうする事も出来ないことがもどかしい。
涙の流れる青白い頬を拭うことも、色あせた唇に口づけて温めてやる事も出来ない悔しさ。
今や彼女は、名前を呼んでも、強く抱きしめても表情一つ変えることなく、ただただ涙を流す壊れた人形のようだ。
ミセイエルは自分ではどうしょうもない悲しみがあることをこの時初めて知った。
いつもならハードな仕事をすることで切り替えられる気持ちが24時間ハナの悲しむ顔で埋め尽くされる。
暮らし始めはハナと過ごす優しい時間の中に身を置き天国の暮らしだった。
それを経験した後に、愛する人を傷づけられて嘆き悲しむハナを見続けなければならない地獄に落とされた。
さすがにキツイ。
しかも彼女の心を占める思いの人は自分じゃない・・・
あれほど浮名を流したミセイエルが、自分の誘いを断り続けて、顔も見たくない女のもとへ毎日帰宅することがどうしても理解できなかったヨンサンは、彼に内緒で計算高い性悪女?のハナに会いに出かけることにした。
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