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リークビルに弁当を宅配する
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リークグループ本社に足を踏みいれたハナは改めてその大きさと立派さに圧倒された。
できるだけ早くと言われて、そのままの格好で出てきてしまった。
メイド頭のランにせめて着替えだけでもといわれても、このビルは想像できていなかったし。
第一ここに見合う服を持っていない。
ミセイエルが用意したハナの私室のクローゼットの中に大量のブランド服が入っているが、それは私ののもではないと使用拒否。
モダンで広いエントランスに続くあか抜けてオシャレなホールに行きかう人は、ブランドものであろうスーツまたは華美にならない機能的で上品な装いをしていた。
いかにも、仕事できます的な装いに女性はバッチリメイクでホールを颯爽と闊歩している。
それに比べてと、ピカピカのガラスに映った自分を眺めたハナは、出そうになるため息をなんとかこらえた。
知らなかったとは言え、自分が座っているミセイエルの妻というポジションがここまで場違いだったとは・・・
”お譲りします”で手に入れた少々くたびれた木綿のワンピースに、家事に邪魔になるからと普段使いのお下げ髪。
ピンクのリップだけが清楚な顔に色を添えている状態は、まるでローティーンだ。
完全に場違いで、いやでもコウレイになじられた時のことを思い出してしまう。
『ミセイエル様を取り巻く世界は超一流よ。今度のスキャンダルが紙面を飾ることで、彼や、リークグループに与えるダメージなど、無知なあなたには想像も出来なかったでしょうけど。三流にもなれないあなたが彼の妻だなんてお笑いだわ。彼は女を見る目がない経営者だと落第印を押されるでしょうね。あなたの出現で大手の契約はキャンセルが懸念されていて、下手をするとCEO(最高経営責任者)辞任に追い込まれるかもしれないわ』
尻尾を巻いて帰りたい思いが入道雲のように沸いて来る。
が、ダメ、ここで帰ったら一歩も前に進めないと、ビビリな気持ちを押しやる。
目をギュッとつむって拳を握り込み、すくむ足に力を入れた。
自身を叱咤し、綺麗な女性達がにこやかに会話する受付を目指してゆっくりと踏み出す。
「リーナ様。CEOのお昼ご飯ですか?」
「そう。最近は多忙のせいかあまり召し上がらなくて。今日も接待先のランチがキャンセルになったから、せめてお好きな物をコンソで詰めてもらったの」
コンソはなかなか予約が取れないレストランで、ランチを詰めてもらえるなど聞いたことがない。
きっとリークグループの権威を翳して注文を入れたのだろう。
ニッコリと微笑んで手にした包を抱えてエレベータに向かう美人さん。
”一流レストランの特性ランチか~”
”いつ見てもリーナ様って素敵よね。”
”そりゃ、琉家の長姫で最高学位を持つ才女で、あの顔よ。おまけに仕事は完璧、CEOの信頼も厚いとくれば、弊社のあこがれのマドンナよね。”
受付嬢の会話に思わず頷いてしまう。
シニヨンにまとめられたココア色の髪は艶やかで、ブラックチョコの瞳には知性と育ちの良さが宿っていて血筋も文句なしで。
そんな美人さんが差し出す特性ランチと比べられると、どう見ても勝ち目はない。
が、せっかくランさんが腕によりをかけてくれたお弁当を持ちかえる訳にもいかず、顔を上げたハナが受付嬢に声を掛ける。
「あのう、ミセイエル・イーツさんに会いたいのですが」
その言葉に受付嬢は”またか”と”だれ?この中学生?”いう顔をする。
一度立ち去りかけた才媛な美人さんが戻って来て宣う。
「弊社のですか?」
もちろんですが???
彼らの反応は、いかにも、あなたは場違いです!と顔に書いてあった。
同感ですが、事情があるので肯定するしかありません。
「ええ、リークグループのミセイエル・イーツさんです」
消え入るような声に戻って来た美人さんが、にこやかに応対した。
「私はCEOの第2秘書をしておりますリーナ・リューツと申します。失礼ですが、アポはとっておいででしたか?」
「いいえ、急に来ることになってしまって」
その返事に、綺麗な笑顔でキッパリと断りを入れられた。
「CEOは常に過密スケジュールをこなしておいでです。アポのない方とお会いする時間はございませんわ」
思わず、じゃぁと言葉を足す。
「彼に、彼に連絡をお願いします」
「彼?どこの彼ですか?」
そう聞かれて、ハッとする。
「いえ、いいんです。ごめんなさい」
午前に訪ねて来た人の名前を聞き忘れていることに気がついて、ハナの口から自笑のため息が漏れる。
それでも、粘る。
「会えないっていうのなら、これだけでも届けて頂けませんか?お弁当なんです」
受付嬢がカウンターの上に置かれたハナのお弁当に視線を落とし、美人のキャリアウーマンさんは抱える包をハナの目の前に翳した。
「CEOの昼食なら心配いりませんわ」
にこやかに笑ってエレベーターに乗り込もうとする彼女の背中に再度トライを試みる。
「渡して貰うだけでいいんです。彼の好きな物ばかりです」
振り返った美人さんが尋ねる。
「あなた、お名前は?」
「ハナ・コートです」
「「「・・・」」」
少しの沈黙。
できるなら一波乱起きるであろうこの名前を名乗りたくなかった。
だが、彼女は何事もなかったかのように営業スマイルを浮かべてエレベーターに乗り込んだ。
同じく目の前の受付嬢が呆れの混じったに小顔で対応する。
「お取次ぎ致しかねますわ。なにしろCEOの奥様の名前が公表されてから一日何人もの女性がその名前で面会を申し込みますの」
ドアが閉まりハイスピードで上昇するエレベーターにハナは頭を抱えた。
そこで、ハナは視点を変える。
せっかく来たのに、ヨンサン・リーツに会えないものかと。
***
リーナ・リューツがミセイエルの執務室に戻り、応接用のテーブルの上に特性ランチをセッティングしながら、隣に座るヨンサンを睨む。
「まだいらっしゃったんですか。朝の会議を抜けて所在不明をやらかした上に、勝手に接待ランチをキャンセルしたあげくここに居座って、’昼食を摂らせるな’とはどういう了見ですか!」
「もう少ししたら、特製弁当が届くはずなんだが・・・」
そんな言葉を無視して美人秘書がお茶を置き、ミセイエルを呼びに行く。
遅い配達にイライラしながら、ヨンサンがテーブルに並べられた特性ランチを睨んでいると、秘書に説得されて渋々といった感じでミセイエルが入って来た。
相変わらず冷気が漂っていて、そんなんじゃ、お前の周りは皆凍死寸前だろうよ、と突っ込むがこれまた2人に完全無視された。
「さ、CEOこれを召し上がってください。お仕事を詰め込んだ上に飲まず食わずじゃ倒れてしまいますわ。お好みの物ばかりという訳にはいきませんがコンソに特注をかけましたの。まさか得体の知れない方のお弁当をいただくわけにはいきませんでしょ」
どういう事?と2人の男が同時に美人秘書の顔を見る。
「さっき、木綿の小花柄のワンピースにお下げ髪の中学生が、お弁当を持ってCEOを尋ねて見えたんです。弊社の誰かにお使いを頼まれたみたいな口ぶりでしたけど、頼まれた相手の名前も知らないんですよ。最近奥様の名前を騙ってCEOに近づきたがる女性が多いんです。彼女もハナ・コートと名乗りましたが、もちろん取次はお断りしました」
秘書の長文を聞いているうちにヨンサンの顔色が悪くなり、言葉の終了と同時に叫んだ。
「お下げ髪で花柄木綿の少女の面会を断ったぁ~!?」
「あら、あなたの知り合いだったの?でもミセイエル様を尋ねて見えたといってたわよ」
訳が分からないというようにキョトンとするリーナの顔をみてヨンサンが天を仰ぐ。
「断ったなんて冗談だろう?!午前中に僕がやっとの思いで注文を取った、ウメボシ入りおむすびの特注弁当なんだぞ!今すぐここに彼女を案内しろ!」
ミセイエルがまさかという顔でヨンサンを見ると彼が得意顔で答えた。
「そう。おまえのためにウメボシ入りのおむすびの特注弁当を宅配してもらったんだ。今までしたどんな交渉よりも難しかったのをやっとの思いで落としたんだからな。感謝しろよ」
ヨンサンの言葉か終わらないうちにミセイエルが部屋を飛び出して行く。
「あの、それって、じゃあさっきの方が本物の奥様?」
あまりにも不釣り合いな、と続く言葉をなんとか飲み込む。
「ああ、お下げ髪で、花柄木綿のワンピ、ローティーンに見えるなら間違いないよ」
その頃1階フロアーではハナがなおもしつこく交渉中だった。
(ちょっとぉ、ヨンサン様 確かに私は童顔ですがローティーンはあんまりです!)
できるだけ早くと言われて、そのままの格好で出てきてしまった。
メイド頭のランにせめて着替えだけでもといわれても、このビルは想像できていなかったし。
第一ここに見合う服を持っていない。
ミセイエルが用意したハナの私室のクローゼットの中に大量のブランド服が入っているが、それは私ののもではないと使用拒否。
モダンで広いエントランスに続くあか抜けてオシャレなホールに行きかう人は、ブランドものであろうスーツまたは華美にならない機能的で上品な装いをしていた。
いかにも、仕事できます的な装いに女性はバッチリメイクでホールを颯爽と闊歩している。
それに比べてと、ピカピカのガラスに映った自分を眺めたハナは、出そうになるため息をなんとかこらえた。
知らなかったとは言え、自分が座っているミセイエルの妻というポジションがここまで場違いだったとは・・・
”お譲りします”で手に入れた少々くたびれた木綿のワンピースに、家事に邪魔になるからと普段使いのお下げ髪。
ピンクのリップだけが清楚な顔に色を添えている状態は、まるでローティーンだ。
完全に場違いで、いやでもコウレイになじられた時のことを思い出してしまう。
『ミセイエル様を取り巻く世界は超一流よ。今度のスキャンダルが紙面を飾ることで、彼や、リークグループに与えるダメージなど、無知なあなたには想像も出来なかったでしょうけど。三流にもなれないあなたが彼の妻だなんてお笑いだわ。彼は女を見る目がない経営者だと落第印を押されるでしょうね。あなたの出現で大手の契約はキャンセルが懸念されていて、下手をするとCEO(最高経営責任者)辞任に追い込まれるかもしれないわ』
尻尾を巻いて帰りたい思いが入道雲のように沸いて来る。
が、ダメ、ここで帰ったら一歩も前に進めないと、ビビリな気持ちを押しやる。
目をギュッとつむって拳を握り込み、すくむ足に力を入れた。
自身を叱咤し、綺麗な女性達がにこやかに会話する受付を目指してゆっくりと踏み出す。
「リーナ様。CEOのお昼ご飯ですか?」
「そう。最近は多忙のせいかあまり召し上がらなくて。今日も接待先のランチがキャンセルになったから、せめてお好きな物をコンソで詰めてもらったの」
コンソはなかなか予約が取れないレストランで、ランチを詰めてもらえるなど聞いたことがない。
きっとリークグループの権威を翳して注文を入れたのだろう。
ニッコリと微笑んで手にした包を抱えてエレベータに向かう美人さん。
”一流レストランの特性ランチか~”
”いつ見てもリーナ様って素敵よね。”
”そりゃ、琉家の長姫で最高学位を持つ才女で、あの顔よ。おまけに仕事は完璧、CEOの信頼も厚いとくれば、弊社のあこがれのマドンナよね。”
受付嬢の会話に思わず頷いてしまう。
シニヨンにまとめられたココア色の髪は艶やかで、ブラックチョコの瞳には知性と育ちの良さが宿っていて血筋も文句なしで。
そんな美人さんが差し出す特性ランチと比べられると、どう見ても勝ち目はない。
が、せっかくランさんが腕によりをかけてくれたお弁当を持ちかえる訳にもいかず、顔を上げたハナが受付嬢に声を掛ける。
「あのう、ミセイエル・イーツさんに会いたいのですが」
その言葉に受付嬢は”またか”と”だれ?この中学生?”いう顔をする。
一度立ち去りかけた才媛な美人さんが戻って来て宣う。
「弊社のですか?」
もちろんですが???
彼らの反応は、いかにも、あなたは場違いです!と顔に書いてあった。
同感ですが、事情があるので肯定するしかありません。
「ええ、リークグループのミセイエル・イーツさんです」
消え入るような声に戻って来た美人さんが、にこやかに応対した。
「私はCEOの第2秘書をしておりますリーナ・リューツと申します。失礼ですが、アポはとっておいででしたか?」
「いいえ、急に来ることになってしまって」
その返事に、綺麗な笑顔でキッパリと断りを入れられた。
「CEOは常に過密スケジュールをこなしておいでです。アポのない方とお会いする時間はございませんわ」
思わず、じゃぁと言葉を足す。
「彼に、彼に連絡をお願いします」
「彼?どこの彼ですか?」
そう聞かれて、ハッとする。
「いえ、いいんです。ごめんなさい」
午前に訪ねて来た人の名前を聞き忘れていることに気がついて、ハナの口から自笑のため息が漏れる。
それでも、粘る。
「会えないっていうのなら、これだけでも届けて頂けませんか?お弁当なんです」
受付嬢がカウンターの上に置かれたハナのお弁当に視線を落とし、美人のキャリアウーマンさんは抱える包をハナの目の前に翳した。
「CEOの昼食なら心配いりませんわ」
にこやかに笑ってエレベーターに乗り込もうとする彼女の背中に再度トライを試みる。
「渡して貰うだけでいいんです。彼の好きな物ばかりです」
振り返った美人さんが尋ねる。
「あなた、お名前は?」
「ハナ・コートです」
「「「・・・」」」
少しの沈黙。
できるなら一波乱起きるであろうこの名前を名乗りたくなかった。
だが、彼女は何事もなかったかのように営業スマイルを浮かべてエレベーターに乗り込んだ。
同じく目の前の受付嬢が呆れの混じったに小顔で対応する。
「お取次ぎ致しかねますわ。なにしろCEOの奥様の名前が公表されてから一日何人もの女性がその名前で面会を申し込みますの」
ドアが閉まりハイスピードで上昇するエレベーターにハナは頭を抱えた。
そこで、ハナは視点を変える。
せっかく来たのに、ヨンサン・リーツに会えないものかと。
***
リーナ・リューツがミセイエルの執務室に戻り、応接用のテーブルの上に特性ランチをセッティングしながら、隣に座るヨンサンを睨む。
「まだいらっしゃったんですか。朝の会議を抜けて所在不明をやらかした上に、勝手に接待ランチをキャンセルしたあげくここに居座って、’昼食を摂らせるな’とはどういう了見ですか!」
「もう少ししたら、特製弁当が届くはずなんだが・・・」
そんな言葉を無視して美人秘書がお茶を置き、ミセイエルを呼びに行く。
遅い配達にイライラしながら、ヨンサンがテーブルに並べられた特性ランチを睨んでいると、秘書に説得されて渋々といった感じでミセイエルが入って来た。
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どういう事?と2人の男が同時に美人秘書の顔を見る。
「さっき、木綿の小花柄のワンピースにお下げ髪の中学生が、お弁当を持ってCEOを尋ねて見えたんです。弊社の誰かにお使いを頼まれたみたいな口ぶりでしたけど、頼まれた相手の名前も知らないんですよ。最近奥様の名前を騙ってCEOに近づきたがる女性が多いんです。彼女もハナ・コートと名乗りましたが、もちろん取次はお断りしました」
秘書の長文を聞いているうちにヨンサンの顔色が悪くなり、言葉の終了と同時に叫んだ。
「お下げ髪で花柄木綿の少女の面会を断ったぁ~!?」
「あら、あなたの知り合いだったの?でもミセイエル様を尋ねて見えたといってたわよ」
訳が分からないというようにキョトンとするリーナの顔をみてヨンサンが天を仰ぐ。
「断ったなんて冗談だろう?!午前中に僕がやっとの思いで注文を取った、ウメボシ入りおむすびの特注弁当なんだぞ!今すぐここに彼女を案内しろ!」
ミセイエルがまさかという顔でヨンサンを見ると彼が得意顔で答えた。
「そう。おまえのためにウメボシ入りのおむすびの特注弁当を宅配してもらったんだ。今までしたどんな交渉よりも難しかったのをやっとの思いで落としたんだからな。感謝しろよ」
ヨンサンの言葉か終わらないうちにミセイエルが部屋を飛び出して行く。
「あの、それって、じゃあさっきの方が本物の奥様?」
あまりにも不釣り合いな、と続く言葉をなんとか飲み込む。
「ああ、お下げ髪で、花柄木綿のワンピ、ローティーンに見えるなら間違いないよ」
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