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空港での出会い その1
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着いたぁ。ここでは私はお姫様。荷物何て持ったこと一度もないし。
叔母の家ではハナ様と呼ばれてお付の者がゾロゾロくっついていた。
迎えの者がいない今日は咎める者もいないので、機能性重視のコットンパンツにノンブランドのTシャツ、履きなれたスニーカーでどこをどう見ても一山いくらのモブキャラ女子のサクラちゃんで~す。
断然こちらの方が性に合うんだ。
もちろんお嬢様猫も被れるよ~
さあ、叔母を尋ねて三千里だ!はりっきて参りましょう。己を鼓舞して拳を突き上げて外を見ると土砂降りのローマ。
マジ沈むんですけど・・・いやいや私にはこれがある。
長期お出かけの時の必須アイテム『シルバーの雨傘』
何か起こった時に自分を励ましてくれる一番の宝物です。
驚くほどの存在感を放ち、感情を消し去ってミセイエルは立っていた。
バスやタクシー乗り場から客が傘を開きながら建物の中になだれ込む人の波。
外に行きかけて立ち往生する者、豪雨の中に駈け出して行く者など様々だ。
親善パーティとは名ばかりの正妃を押し付けるのが目的の集まりで、天界の実力者のご令嬢たちの中で2時間は過ごさねばならない。
うんざり感満載の予定にため息が出る。
その後皇家の重臣たちの審査会で、この天候の被害の報告を聞いて対策を打つ。そして聞かれるのはヨンサンが懸念していた異次元移動の有無だろう。
最も痛くもない腹だ、どうぞ自由に探ってくれ。
気分が沈んだ時には決まってあの日の満開の桜が胸に広がる。
その光景を無理やり剥ぎ取りながら外を眺めていて、自分を見つめる視線に気がつかなかった。
「あの、」
突然に掛けられた声に顔を顰める。
自分の容姿が人目を引くことや、その地位、権力に群がってくる女がいることはいやというほど知っている。
「傘が無くて、お困りですか?よろしかったら私のをお貸ししましょうか?」
目の前の、女というにはあまりに若い少女のような女性が柔らかな声で話しかけてくる。
その声が暖かくて、いつもなら無視する自分が思わず話にのった。
「君の傘を?」
「ええ、シルバーですから男の方が差しても恥ずかしくありませんし、こんな雨の日にはもってこいの模様がー」
危うく会話に引き込まれそうになり、言葉を遮った。
「いや、いい。借りても返せないしもうすぐ迎えも来る」
「そうですか」
彼女の声のトーンが沈む。やはり目的はそれか。
「残念だったね。僕をナンパできなくて」
「そんなんじゃありません」
蔑むように出した声に、怒りをこめた声が応戦する。
「じゃあ、連絡先を聞き出す以外にどんな目的で声をかけたんだい?」
あどけなさの残る顔に声をかけたことへの後悔と、返事をしようかどうしようという躊躇いが一瞬表れすぐに消える。
「私はただ沈んで見えたあなたにお花見をさせてあげたいと思っただけです」
明るい透明感のある声で花見と聞いて心が揺れる。
「花見?」
「ええ、この傘は差して見上げると、青空の下に桜が満開なんですよ。雨でも花見ができる特注品。私の宝物なんです」
ちょっと得意げに目の高さまで傘を掲げた彼女に冷たい声を返す。
「宝物を初対面の人間に貸すバカはいないよ。何か別の代替品を狙う目的でもないとね。普通しないでしょ?そんなこと」
これだけ言えば大概の女は、目をそらして去っていくのだが、彼女は言われたことが理解できないのか、あっけにとられたように自分の顔を見上げた。
この女、頭が少し弱い?そこでもうひと押し。
「それとも、宝物を見ず知らずの人に貸したら返ってこないことが想像できないバカなのかな?」
冷徹な言葉に軽蔑の視線をプラスして彼女に向ける。
しかし驚いたことに、彼女は目をそらすどころか、自分をまっすぐに睨み返し、立て板に水のごとく反論してくる。
「私、これでも昔から人を見る目はあるんです。あなたはここをよく利用していそうだし、お金に困った様子もないので、落とし物として空港内の交番に届けてくれたら、私の下に返ってくると思ったんです。でも余計なお節介だったみたい。それに時差ボケで人を見る目も曇っていたみたいです!」
これほど毅然とした態度で自分をまっすぐに見下し拒絶した女を見たことがない。
シンプルで飾らない格好をしているが、その顔をよく見ると、長い睫に縁どられて強い光を放つ大きな黒い瞳と、形のいい鼻、ふっくらとした小ぶりな唇があり、中々整っている。
白い肌とは対照的な肩まである黒い艶やかな髪を首の後ろで一つに束ねているのが残念な感じだ。
190センチ近くある自分の隣に並ぶと少し小さいか?などと思いながら改めて観察している途中で彼女が動いた。
「失礼します」
そういわれて咄嗟に傘を持つ彼女の腕を掴んだ。
「借りるよ。君の傘。僕も花見がしたくなったから。使い終わったらきちんと返すために君の住所と、名前が知りたい。連絡先を教えてくれ。アドレスを交換しょう」
言い終わると同時に、つかんだ手を思いっきり振りほどかれた。
「使い終わったらそこの交番に届けておいてください!」
差し出された傘と共にピシャリと言い返された見事な拒絶。
「それじゃ、傘が返って来なかった時に打つ手がなくなるよ。宝物なんだろう」
「ええ、でも本当に人を見る目はあって、そんなことにはならないと思っています。それに私はナンパする人間でもされる人間でもありませんから」
一礼して立ち去ろうとする彼女の手を再び掴む。
「待って。僕は初対面の君が宝物を差し出すほど寂しそうに見えたのかい」
「ええ、探しても見つからない恋人を探してるみたいで。だから宝物を貸す気になったんです。その傘は今は会えなくなってしまった私の初恋の人がくれた物なんです。ですから絶対に返してくださいね」
その答えに心の奥を覗かれた気がして、掴んでいた手の力が抜け、気がつくと彼女の背中は手の届かない位置まで移動していた。
これまでに心の底にあるこの思いを見透かした者はいない。
たとえ桜家の実力者であろうと、感情にカバーを施したゼウスの心の中は覗けまい。
そう。もう10年以上、彼女がくれた陽だまりのような時間を求め続けている。
もう一度、あの桜の下で優しい時間を過ごしたい。
ゼウスの透視能力を駆使し、メルタはもちろん、あちらの世界まで何度も覗いてみたが彼女はどこにもいなかった。
あれから10年が経ち、彼女は二十歳前後になっているはずだ。
今となっては彼女に会っても幼児から令嬢に変貌した容姿では自分には彼女かどうかさえ分からないのだから。
だからもう、諦めるしかないんだ。
傘を見つめて動けないミセイエルにこれからの手配を済ませて戻ったヨンサンが声をかける。
「どうした。浮かない顔だな。どうせ待っている間に何人もの女から声をかけられてうんざりってことだろうが、これから向かう親善パーティはもっと下心のある女性達を相手にしなければならないんだからな。覚悟しておけよ」
「その手の女の扱いは、ビジネスと同じだから、愛想笑いを張り付けておくさ」
「お前の場合かなり怪しい。それにしてもこの雨で道路は大渋滞だ。空間移動が楽だが、どうする?」
「いや、ここから会場までは1キロ足らずだろ?歩くよ。お前は速やかに移動してくれ」
「この土砂降りの中を歩くってか?冗談だろ?」
「いや、本気だ。宝物も手に入れた」
ミセイエルは手に持った傘を突き出してみせ、それを開いて笑みをこぼした。
呆気にとられるヨンサンに軽い冗談を返す。
「それに、僕がさっき難しい顔をしていたのは、ナンパされたからではなく、ナンパに失敗したからだ」
それを聞いたヨンサンが天を仰いで素っ頓狂な声を出す。
「お前が失敗?嘘だろう?!」
雨の中をゆっくりと歩きながら、傘に描かれた満開の桜を楽しむと、心の底に張り付いた小さな少女がいつの間にか、得意げにこの傘を突き出した意志の強そうな年頃の少女に代わる。
彼女が何者であるか知りたかった。
叔母の家ではハナ様と呼ばれてお付の者がゾロゾロくっついていた。
迎えの者がいない今日は咎める者もいないので、機能性重視のコットンパンツにノンブランドのTシャツ、履きなれたスニーカーでどこをどう見ても一山いくらのモブキャラ女子のサクラちゃんで~す。
断然こちらの方が性に合うんだ。
もちろんお嬢様猫も被れるよ~
さあ、叔母を尋ねて三千里だ!はりっきて参りましょう。己を鼓舞して拳を突き上げて外を見ると土砂降りのローマ。
マジ沈むんですけど・・・いやいや私にはこれがある。
長期お出かけの時の必須アイテム『シルバーの雨傘』
何か起こった時に自分を励ましてくれる一番の宝物です。
驚くほどの存在感を放ち、感情を消し去ってミセイエルは立っていた。
バスやタクシー乗り場から客が傘を開きながら建物の中になだれ込む人の波。
外に行きかけて立ち往生する者、豪雨の中に駈け出して行く者など様々だ。
親善パーティとは名ばかりの正妃を押し付けるのが目的の集まりで、天界の実力者のご令嬢たちの中で2時間は過ごさねばならない。
うんざり感満載の予定にため息が出る。
その後皇家の重臣たちの審査会で、この天候の被害の報告を聞いて対策を打つ。そして聞かれるのはヨンサンが懸念していた異次元移動の有無だろう。
最も痛くもない腹だ、どうぞ自由に探ってくれ。
気分が沈んだ時には決まってあの日の満開の桜が胸に広がる。
その光景を無理やり剥ぎ取りながら外を眺めていて、自分を見つめる視線に気がつかなかった。
「あの、」
突然に掛けられた声に顔を顰める。
自分の容姿が人目を引くことや、その地位、権力に群がってくる女がいることはいやというほど知っている。
「傘が無くて、お困りですか?よろしかったら私のをお貸ししましょうか?」
目の前の、女というにはあまりに若い少女のような女性が柔らかな声で話しかけてくる。
その声が暖かくて、いつもなら無視する自分が思わず話にのった。
「君の傘を?」
「ええ、シルバーですから男の方が差しても恥ずかしくありませんし、こんな雨の日にはもってこいの模様がー」
危うく会話に引き込まれそうになり、言葉を遮った。
「いや、いい。借りても返せないしもうすぐ迎えも来る」
「そうですか」
彼女の声のトーンが沈む。やはり目的はそれか。
「残念だったね。僕をナンパできなくて」
「そんなんじゃありません」
蔑むように出した声に、怒りをこめた声が応戦する。
「じゃあ、連絡先を聞き出す以外にどんな目的で声をかけたんだい?」
あどけなさの残る顔に声をかけたことへの後悔と、返事をしようかどうしようという躊躇いが一瞬表れすぐに消える。
「私はただ沈んで見えたあなたにお花見をさせてあげたいと思っただけです」
明るい透明感のある声で花見と聞いて心が揺れる。
「花見?」
「ええ、この傘は差して見上げると、青空の下に桜が満開なんですよ。雨でも花見ができる特注品。私の宝物なんです」
ちょっと得意げに目の高さまで傘を掲げた彼女に冷たい声を返す。
「宝物を初対面の人間に貸すバカはいないよ。何か別の代替品を狙う目的でもないとね。普通しないでしょ?そんなこと」
これだけ言えば大概の女は、目をそらして去っていくのだが、彼女は言われたことが理解できないのか、あっけにとられたように自分の顔を見上げた。
この女、頭が少し弱い?そこでもうひと押し。
「それとも、宝物を見ず知らずの人に貸したら返ってこないことが想像できないバカなのかな?」
冷徹な言葉に軽蔑の視線をプラスして彼女に向ける。
しかし驚いたことに、彼女は目をそらすどころか、自分をまっすぐに睨み返し、立て板に水のごとく反論してくる。
「私、これでも昔から人を見る目はあるんです。あなたはここをよく利用していそうだし、お金に困った様子もないので、落とし物として空港内の交番に届けてくれたら、私の下に返ってくると思ったんです。でも余計なお節介だったみたい。それに時差ボケで人を見る目も曇っていたみたいです!」
これほど毅然とした態度で自分をまっすぐに見下し拒絶した女を見たことがない。
シンプルで飾らない格好をしているが、その顔をよく見ると、長い睫に縁どられて強い光を放つ大きな黒い瞳と、形のいい鼻、ふっくらとした小ぶりな唇があり、中々整っている。
白い肌とは対照的な肩まである黒い艶やかな髪を首の後ろで一つに束ねているのが残念な感じだ。
190センチ近くある自分の隣に並ぶと少し小さいか?などと思いながら改めて観察している途中で彼女が動いた。
「失礼します」
そういわれて咄嗟に傘を持つ彼女の腕を掴んだ。
「借りるよ。君の傘。僕も花見がしたくなったから。使い終わったらきちんと返すために君の住所と、名前が知りたい。連絡先を教えてくれ。アドレスを交換しょう」
言い終わると同時に、つかんだ手を思いっきり振りほどかれた。
「使い終わったらそこの交番に届けておいてください!」
差し出された傘と共にピシャリと言い返された見事な拒絶。
「それじゃ、傘が返って来なかった時に打つ手がなくなるよ。宝物なんだろう」
「ええ、でも本当に人を見る目はあって、そんなことにはならないと思っています。それに私はナンパする人間でもされる人間でもありませんから」
一礼して立ち去ろうとする彼女の手を再び掴む。
「待って。僕は初対面の君が宝物を差し出すほど寂しそうに見えたのかい」
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その答えに心の奥を覗かれた気がして、掴んでいた手の力が抜け、気がつくと彼女の背中は手の届かない位置まで移動していた。
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たとえ桜家の実力者であろうと、感情にカバーを施したゼウスの心の中は覗けまい。
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あれから10年が経ち、彼女は二十歳前後になっているはずだ。
今となっては彼女に会っても幼児から令嬢に変貌した容姿では自分には彼女かどうかさえ分からないのだから。
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傘を見つめて動けないミセイエルにこれからの手配を済ませて戻ったヨンサンが声をかける。
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「その手の女の扱いは、ビジネスと同じだから、愛想笑いを張り付けておくさ」
「お前の場合かなり怪しい。それにしてもこの雨で道路は大渋滞だ。空間移動が楽だが、どうする?」
「いや、ここから会場までは1キロ足らずだろ?歩くよ。お前は速やかに移動してくれ」
「この土砂降りの中を歩くってか?冗談だろ?」
「いや、本気だ。宝物も手に入れた」
ミセイエルは手に持った傘を突き出してみせ、それを開いて笑みをこぼした。
呆気にとられるヨンサンに軽い冗談を返す。
「それに、僕がさっき難しい顔をしていたのは、ナンパされたからではなく、ナンパに失敗したからだ」
それを聞いたヨンサンが天を仰いで素っ頓狂な声を出す。
「お前が失敗?嘘だろう?!」
雨の中をゆっくりと歩きながら、傘に描かれた満開の桜を楽しむと、心の底に張り付いた小さな少女がいつの間にか、得意げにこの傘を突き出した意志の強そうな年頃の少女に代わる。
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