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きみの名前
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「まだ、コウレイ様のエロ話がお聞きになりたいんですか?」
再度呼びつけると、忙しいのに迷惑ですの気持ちを前面に醸し出したランが現れる。
「もう、結構だ。それよりもハナの部屋で豪華なピアスを見たことはないか?」
ああ、それならとメイド頭がハナから聞いていた情報を語ってくれた。
「お母さまの形見の品ですか?それでしたらこちらの世界に着いたその日にスーツケースごと行方不明だとおっしゃっていましたわ」
どういうこと?、と尋ねながらハナがあちらの世界から来たことをランが知っていたことに驚かされる。
顔に出したつもりはないがランが意味深なドヤ顔をした。
「あまりにもこちらのことをご存じないし、私たちしょっちゅうお茶会に呼んで頂ける仲ですから尋ねることには素直に答えてくださいます」
もちろん知りたいことを聞き出す手腕があるのは認めるが、少々含まれる嫌味にげんなりする。
どうやら蚊帳の外だったのは自分だけだったようで、ガックリ感がいや増しだ。
「こちらに迷い込んだその日に空港で倒れられたようで、気がついたらハトコの働く国立遺伝子研究センターのベッドの上だったとか。空港からは幾分離れておりますのに運よくハトコの元に運ばれたなんて偶然でかすね」
と首を傾げる。
どうにも納得できないといった口調だ。
空港で倒れた?ということはあの後すぐか?
「普通、荷物は倒れた人間と一緒に運ばれるか、近くの交番預かりになるだろう。荷物が届けられてないか確認してないのか?」
「パスポートとかいうあちらの世界の身分保証書が入っていて不法侵入者扱いになるとハトコの方に言われたようで、落とし物の届け出をされていないようです」
ここで一旦言葉を切ったランの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「ミセイエル様なら所在確認など簡単でしょ。探してあげればとても喜ばれますよ」
そういうとお辞儀をして部屋を出て行った。
もちろん大至急で探すさ。
ミセイエルは情報収集の達人の琉家の子飼いにあの日のハナの足取りを至急で調べろと思念を送る。
一方で、10年前に見た桜花真珠のピアスを思いうかべて透視能力を使った。
そして脳裏に浮かんだ桜花のピアスの変化とその背景に固唾をのんだ。
写真映像のピアスが画用紙に書かれた絵に変わったのだ。
何処にあるのかを知るためにはその背景が必要で、ズームインされたピアスから徐々にカメラを引いて映像の視野を広げていく。
そうすると映像は保管庫から、部屋、建物、場所を特定できるものに移り変わっていくはずだった。
しかし一瞬浮かんだピアスの写真映像は瞬く間にデッサン化され、ズームアウトしても背景は映らず画用紙の白が広がるばかりだった。
それはハナを探した時とよく似ていて、強力な透視防止のバリアが覆っている映像だ。
いったい誰の手の内にある?
首を傾げ考え込んでいると、先ほどの子飼いからの思念が返って来た。
「あの日、空港で倒れて病院に搬送されたのは80代と70代の男女2名のみです。若い女性に該当者はいません。ですが」
ですが、に続く長い間と言いにくそうな声。
「空港で倒れた若い女性がもう一人います」
眉間に皺の寄るミセイエルが思念で問いかける。
誰?
「ヨンハ様の婚約者のサクラ・タカミネ様です」
あちらから取り寄せたという黒髪の婚約者を堂々とお姫様抱っこで闊歩する写真が翌日の新聞を賑あわせたことを思い出した。
その映像が脳裏に映し出され、ミセイエルの目の前にパチパチと音を立てて火花が散った。
確かめなければ。
君の名前を。
ミセイエルはさっと腰を上げるとハナのいるダイニングキッチンに移動した。
何をやっているのか彼女はダイニングのテーブルの上に並べられた料理をみては食器棚の食器をあれこれ手に取ってはまた戻し、難しい顔で食器を睨んで首をひねりダイニングとキッチンを行ったり来たりしている。
いつもならそのもたつきに不機嫌を100%前面に押し出しているはずの自分がハナの無駄で効率が悪い動きを可愛く思っていることに苦笑する。
「何かトラブルかい?」
冗談交じりに声を掛けるとはにかんだ困り顔が振り返る。
掛け値なく可愛い。
「せっかくランさんがリキを入れて作ってくれたお料理を引き立てるような器に盛りつけたいのだけど、どれを選んだらいいかよくわからなくて。それにここの食器は最高級品で扱うのに気おくれする品ばかりです」
そう言われて、チラリとテーブルに視線を落としてから食器棚の前に立つハナの隣に並んで白や黒の大皿や小鉢や絵皿を的確に選んだ。
そうして、テーブルの上にある料理が品よく鮮やかに見えるように取り分け、ハナの椅子を引き彼女を座らせると自分もハナの前に座り、給仕しようとするメイド達を下がらせた。
その時間わずか数分、お見事!
2人きりになったミセイエルはニッコリと少々胡散臭い営業スマイルを浮かべ、さ、食べようとハナを促して、ハナの心をチラリと覗くことにした。
前菜から始まる小鉢にそれぞれのソースを添え、給仕まがいのことを始めたミセイエルをハナが不思議そうに見つめている。
<なぜにあなたがそんなことを?>
甘い煮物や甲殻類が好きだったよね、などとハナの好みを確認しては取り分ける量を調整する手元を見る目がうっとりしている。
<綺麗でスマートな所作は目の保養になる!おまけに私の好みも適量もを知っているなんて!ぜひいつも一緒にお食事させてほしい!>
そうだろ。姿勢といい、カトラリーの扱いなどのテーブルマナーはもちろん完璧だからね。
ハナの反応に満足して美しい所作でにっこりと笑うと瞬時に身構えられた。
<あれ?なんか怪しい感じ?>
おや?少しは危機感のアンテナが張れるのかい?
「今からこちらでの恐ろしい慣習を教えようと思ってね」
「恐ろしい習慣?」
「今では少なくなったが、こちらでは正式なディナーの招待をした場合、家長がメインデッシュを切り分ける習慣が今でも残っていて、家長に気に入られていないものはいつまで待っても自分の前に料理が出てこないんだよ」
出来る限り甘い声を出し、取り分けたおいしそうな料理をずらりと自分の前にだけ並べる。
顰められた眉が、もの問いたげだ。
<何の意地悪ですか?>
吹き出すのを我慢して取澄ましていると、まるで待てを指示された子犬のように視線が取り分けられた皿と飼い主であるミセイエルの顔を行き来する。
<気に入らなくていい!普通でいいから。少しぐらいは食べ物を取り分けてください。私の好物ばかりを目の前において”待て”なんて卑怯です!>
ハナの心の声に我慢できずに思わず吹いてしまう。
アハハと声を出すと、プイと顔を背ける。
純粋に愛おしいものが目の前にいることが自分をこんなにも満たす。
彼女の視線が一番に向いたハナの大好物のエビのクリームコロッケを切ってホークで突き刺し目の前に差し出した。
「食べたい?」
ウンウンと首を振る。
「聞きたいことがある」
「ナニ?」
視線をコロッケに固定したまま首を傾ける。
「こちらの世界に着いたのは僕と会った空港?」
ウンウン頷く口にクリームコロッケを放り込む。
ムシャムシャと咀嚼する顔は幸せそうだ。
「空港で倒れる時にいたのは誰?」
「グランドホステスのお姉さん」
今度はヒラメのポワレを放り込む。
「じゃあ、それ以外に話をした人を覚えてる」
ハナが咀嚼しながらコクリと頷く。
「誰?知っている人?」
「知り合いじゃないけど知っている人」
やはり予想した人物を匂わす答えだった。
自分の顔色は間違いなく変わったはずだが、好物を堪能中のハナは気がつかない。
誰?と追及する。
「テレビによく出てるヨンハ・ギーツさんとかいう顔の綺麗な俳優さん」
今一番聞きたくない名前をサラリと口にした。
気持ちを搾り上げられる体感に下唇を噛んで耐えている自分の前で、能天気な顔で何かを思い出したのか、小さな声が上がる。
「あ!」
「どうした?」
「そういや、クリーニング代まだ払ってないなと思って」
ニヤケタ顔で失敗、失敗と笑う。
頭痛に襲われるのと同時に張りつめていた気持ちが幾分緩んだ。
やはりい君はつも僕の予想のはるか斜め上の答えを出してくるんだね。
「夫の前で他の男を褒めた上に借金持ちだなんて、監視役を増やさないといけないね」
やめて~おちおちトイレにも行けなくなるから~と、わめいているが無視だ、無視。
キョロキョロしたぐらいで寄って来るし、誰かに声を掛けられると番犬のように相手を威嚇するからお出掛がちっとも楽しくな~いと、ブツブツいう文句も聞かなかったことにする。
おいしい食事と、冗談交じりに見える軽い口調で相手の気持ちを緩めて確信を突くのはミセイエルの常とう手段だ。
次の質問の答えを聞くためにこんな甘くて幸せな演出をした。
「ハナ、向こうの世界では何て呼ばれていたんだい?空港で紛失した荷物を探したいから、パスポートに書かれた名前と住所を教えてくれるかい」
何の疑念も持たずにハナが素直に答える。
「サクラよ。私向こうの世界ではサクラ・タカミネという名前で、住所は○○県○○郡神の山町1-1で登録されているわ」
あちらの世界ではサクラ・タカミネ、という名前の君。
ミセイエルはよく考えもせず直ちにハナに強力な隠匿魔法をかけてバリアを張った。
それだけ動揺していたということだろう。
ちょっと考えれば、すぐに気がついたはずだ。
ヨンハを筆頭に祇家が一丸となって捜索をしている網になぜハナが掛からないのかということに。
再度呼びつけると、忙しいのに迷惑ですの気持ちを前面に醸し出したランが現れる。
「もう、結構だ。それよりもハナの部屋で豪華なピアスを見たことはないか?」
ああ、それならとメイド頭がハナから聞いていた情報を語ってくれた。
「お母さまの形見の品ですか?それでしたらこちらの世界に着いたその日にスーツケースごと行方不明だとおっしゃっていましたわ」
どういうこと?、と尋ねながらハナがあちらの世界から来たことをランが知っていたことに驚かされる。
顔に出したつもりはないがランが意味深なドヤ顔をした。
「あまりにもこちらのことをご存じないし、私たちしょっちゅうお茶会に呼んで頂ける仲ですから尋ねることには素直に答えてくださいます」
もちろん知りたいことを聞き出す手腕があるのは認めるが、少々含まれる嫌味にげんなりする。
どうやら蚊帳の外だったのは自分だけだったようで、ガックリ感がいや増しだ。
「こちらに迷い込んだその日に空港で倒れられたようで、気がついたらハトコの働く国立遺伝子研究センターのベッドの上だったとか。空港からは幾分離れておりますのに運よくハトコの元に運ばれたなんて偶然でかすね」
と首を傾げる。
どうにも納得できないといった口調だ。
空港で倒れた?ということはあの後すぐか?
「普通、荷物は倒れた人間と一緒に運ばれるか、近くの交番預かりになるだろう。荷物が届けられてないか確認してないのか?」
「パスポートとかいうあちらの世界の身分保証書が入っていて不法侵入者扱いになるとハトコの方に言われたようで、落とし物の届け出をされていないようです」
ここで一旦言葉を切ったランの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「ミセイエル様なら所在確認など簡単でしょ。探してあげればとても喜ばれますよ」
そういうとお辞儀をして部屋を出て行った。
もちろん大至急で探すさ。
ミセイエルは情報収集の達人の琉家の子飼いにあの日のハナの足取りを至急で調べろと思念を送る。
一方で、10年前に見た桜花真珠のピアスを思いうかべて透視能力を使った。
そして脳裏に浮かんだ桜花のピアスの変化とその背景に固唾をのんだ。
写真映像のピアスが画用紙に書かれた絵に変わったのだ。
何処にあるのかを知るためにはその背景が必要で、ズームインされたピアスから徐々にカメラを引いて映像の視野を広げていく。
そうすると映像は保管庫から、部屋、建物、場所を特定できるものに移り変わっていくはずだった。
しかし一瞬浮かんだピアスの写真映像は瞬く間にデッサン化され、ズームアウトしても背景は映らず画用紙の白が広がるばかりだった。
それはハナを探した時とよく似ていて、強力な透視防止のバリアが覆っている映像だ。
いったい誰の手の内にある?
首を傾げ考え込んでいると、先ほどの子飼いからの思念が返って来た。
「あの日、空港で倒れて病院に搬送されたのは80代と70代の男女2名のみです。若い女性に該当者はいません。ですが」
ですが、に続く長い間と言いにくそうな声。
「空港で倒れた若い女性がもう一人います」
眉間に皺の寄るミセイエルが思念で問いかける。
誰?
「ヨンハ様の婚約者のサクラ・タカミネ様です」
あちらから取り寄せたという黒髪の婚約者を堂々とお姫様抱っこで闊歩する写真が翌日の新聞を賑あわせたことを思い出した。
その映像が脳裏に映し出され、ミセイエルの目の前にパチパチと音を立てて火花が散った。
確かめなければ。
君の名前を。
ミセイエルはさっと腰を上げるとハナのいるダイニングキッチンに移動した。
何をやっているのか彼女はダイニングのテーブルの上に並べられた料理をみては食器棚の食器をあれこれ手に取ってはまた戻し、難しい顔で食器を睨んで首をひねりダイニングとキッチンを行ったり来たりしている。
いつもならそのもたつきに不機嫌を100%前面に押し出しているはずの自分がハナの無駄で効率が悪い動きを可愛く思っていることに苦笑する。
「何かトラブルかい?」
冗談交じりに声を掛けるとはにかんだ困り顔が振り返る。
掛け値なく可愛い。
「せっかくランさんがリキを入れて作ってくれたお料理を引き立てるような器に盛りつけたいのだけど、どれを選んだらいいかよくわからなくて。それにここの食器は最高級品で扱うのに気おくれする品ばかりです」
そう言われて、チラリとテーブルに視線を落としてから食器棚の前に立つハナの隣に並んで白や黒の大皿や小鉢や絵皿を的確に選んだ。
そうして、テーブルの上にある料理が品よく鮮やかに見えるように取り分け、ハナの椅子を引き彼女を座らせると自分もハナの前に座り、給仕しようとするメイド達を下がらせた。
その時間わずか数分、お見事!
2人きりになったミセイエルはニッコリと少々胡散臭い営業スマイルを浮かべ、さ、食べようとハナを促して、ハナの心をチラリと覗くことにした。
前菜から始まる小鉢にそれぞれのソースを添え、給仕まがいのことを始めたミセイエルをハナが不思議そうに見つめている。
<なぜにあなたがそんなことを?>
甘い煮物や甲殻類が好きだったよね、などとハナの好みを確認しては取り分ける量を調整する手元を見る目がうっとりしている。
<綺麗でスマートな所作は目の保養になる!おまけに私の好みも適量もを知っているなんて!ぜひいつも一緒にお食事させてほしい!>
そうだろ。姿勢といい、カトラリーの扱いなどのテーブルマナーはもちろん完璧だからね。
ハナの反応に満足して美しい所作でにっこりと笑うと瞬時に身構えられた。
<あれ?なんか怪しい感じ?>
おや?少しは危機感のアンテナが張れるのかい?
「今からこちらでの恐ろしい慣習を教えようと思ってね」
「恐ろしい習慣?」
「今では少なくなったが、こちらでは正式なディナーの招待をした場合、家長がメインデッシュを切り分ける習慣が今でも残っていて、家長に気に入られていないものはいつまで待っても自分の前に料理が出てこないんだよ」
出来る限り甘い声を出し、取り分けたおいしそうな料理をずらりと自分の前にだけ並べる。
顰められた眉が、もの問いたげだ。
<何の意地悪ですか?>
吹き出すのを我慢して取澄ましていると、まるで待てを指示された子犬のように視線が取り分けられた皿と飼い主であるミセイエルの顔を行き来する。
<気に入らなくていい!普通でいいから。少しぐらいは食べ物を取り分けてください。私の好物ばかりを目の前において”待て”なんて卑怯です!>
ハナの心の声に我慢できずに思わず吹いてしまう。
アハハと声を出すと、プイと顔を背ける。
純粋に愛おしいものが目の前にいることが自分をこんなにも満たす。
彼女の視線が一番に向いたハナの大好物のエビのクリームコロッケを切ってホークで突き刺し目の前に差し出した。
「食べたい?」
ウンウンと首を振る。
「聞きたいことがある」
「ナニ?」
視線をコロッケに固定したまま首を傾ける。
「こちらの世界に着いたのは僕と会った空港?」
ウンウン頷く口にクリームコロッケを放り込む。
ムシャムシャと咀嚼する顔は幸せそうだ。
「空港で倒れる時にいたのは誰?」
「グランドホステスのお姉さん」
今度はヒラメのポワレを放り込む。
「じゃあ、それ以外に話をした人を覚えてる」
ハナが咀嚼しながらコクリと頷く。
「誰?知っている人?」
「知り合いじゃないけど知っている人」
やはり予想した人物を匂わす答えだった。
自分の顔色は間違いなく変わったはずだが、好物を堪能中のハナは気がつかない。
誰?と追及する。
「テレビによく出てるヨンハ・ギーツさんとかいう顔の綺麗な俳優さん」
今一番聞きたくない名前をサラリと口にした。
気持ちを搾り上げられる体感に下唇を噛んで耐えている自分の前で、能天気な顔で何かを思い出したのか、小さな声が上がる。
「あ!」
「どうした?」
「そういや、クリーニング代まだ払ってないなと思って」
ニヤケタ顔で失敗、失敗と笑う。
頭痛に襲われるのと同時に張りつめていた気持ちが幾分緩んだ。
やはりい君はつも僕の予想のはるか斜め上の答えを出してくるんだね。
「夫の前で他の男を褒めた上に借金持ちだなんて、監視役を増やさないといけないね」
やめて~おちおちトイレにも行けなくなるから~と、わめいているが無視だ、無視。
キョロキョロしたぐらいで寄って来るし、誰かに声を掛けられると番犬のように相手を威嚇するからお出掛がちっとも楽しくな~いと、ブツブツいう文句も聞かなかったことにする。
おいしい食事と、冗談交じりに見える軽い口調で相手の気持ちを緩めて確信を突くのはミセイエルの常とう手段だ。
次の質問の答えを聞くためにこんな甘くて幸せな演出をした。
「ハナ、向こうの世界では何て呼ばれていたんだい?空港で紛失した荷物を探したいから、パスポートに書かれた名前と住所を教えてくれるかい」
何の疑念も持たずにハナが素直に答える。
「サクラよ。私向こうの世界ではサクラ・タカミネという名前で、住所は○○県○○郡神の山町1-1で登録されているわ」
あちらの世界ではサクラ・タカミネ、という名前の君。
ミセイエルはよく考えもせず直ちにハナに強力な隠匿魔法をかけてバリアを張った。
それだけ動揺していたということだろう。
ちょっと考えれば、すぐに気がついたはずだ。
ヨンハを筆頭に祇家が一丸となって捜索をしている網になぜハナが掛からないのかということに。
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