優しい時間

ouka

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空港で超美形に出会ましたが・・・

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 サクラは国際線ターミナルの中を移動しながら長~いため息をついた。
 はぁ~
  あんな傲慢失礼最低男に大事な宝物を貸すんじゃなかったと心底後悔する。
 機内で見かけた男の人の背中が初恋の相手に見えた。
 だから、10年前の花見で無くし物をした時に親切にしてくれた美麗の少年を思い出した。
 美形の憂いを和らげたいと思ったのに結果は散々!誰がナンパだ!自分がいくら美形だからって自意識過剰だろう!
 そりゃあ立ち姿もスマートで、仕事も出来て地位もありそうで、着ているものも高そうだったけど。
 行き交う男も女もチラチラ、あるいはガン見であなたのことを見てたけど、誰もがあなたのことを好きになるなんて思わないでよね。
 しばらく会っていないけれど自分には愛しのアサオがいるんだよ!あなたになんか興味ないわ!
 それにしても似てたな、機内で会った人。
 またもやため息が出る。
 でも自分を見ても何も言わないし、かけた声に振り返ることもしなかったから他人の空似だと思うけど、アサオに忘れられたようで正直結構へこむ。
 会えなかった7年間が自分を忘れさせているかもしれないと思うと不安がせり上がってくる。
 そんな気持ちを抱えていたから、ロビーで会った見目麗しい男に10年前の美麗の少年を重ねて、傘が無くてお困りですか?と声をかけたのだ。
 時々他人の心の中が見えるように感じる自分には、彼が会えない誰かを探して寂しそうに佇むように見えて、アサオと会えなくて寂しい自分と彼をリンクさせてしまった。
 励ましたかったから宝物の傘を貸したのに、ナンパ目的と思われたあげく嫌々借りてやったみたいな態度でひったくられた。
 彼女が自慢の傘を突き出したのだが、サクラの中では悪意のある行動をとられたに変換されている。     
 アドレスを教えろだと?ナンパしてるのはどっちだ?
 もう二度と会いたくない!今すぐ宝物を返して欲しい!
 こうして空港で出会ったミセイエルはサクラの中で超美形の傲慢失礼男!と認識された。 
 屋内を悪態を吐きながら速足で通過し、建物の出口でまだ止みそうにない雨を見上げて息をつく。
 傘がない。
 ここの空港は国際線ターミナルと国内線ターミナルの間にかなりの距離があり、屋根がない。
 もちろんバスやタクシーに乗ればいいのだがお金を支払わなくてはならない。
 今回の旅行は手持ちのお金に限りがあり、節約第一をモットウとする。
 昔から(自己満足的な)人助け癖があるために、後先も損得も考えずに突っ走った結果、窮地に立つこともしょっちゅうだ。
 仕方ない、か。
 着ていた長めのパーカーのフードを目深くかぶると、目に入る雨を避けるため地面だけを見て屋根のない通路を突っ走った。
 建物は目の前!もうすぐ目的地だぁ。
 やれやれ!と思ったのは一瞬、思わぬアクシデントが待っていた。
 ずぶ濡れになったあげく突然視野に飛び込んできたピンク色の障害物にもろにぶつかって転倒した。
 思わず「うぎゃ」っと小さな悲鳴を上げる。
 するとぶつかられた障害物が綺麗なアルトの声でしゃべった。
 「うぎゃ、?」
 ピンクの障害物が馬乗り状態のサクラ顔を下から睨みあげて、その綺麗な顔に不愉快という二文字を刻む。
 気がつけばハイスペックな男性を座布団がわりに敷きこんで、いや跨っていた。
 「ぎゃあぁ~」
 あまりな展開に思考がついていかず自己防衛本能が働いた結果、乙女に似つかわしくない濁った声で叫んでいた。
 「重い。さっさとどけ。大体、人にぶつかて押し倒し馬乗りになったあげく、被害者のごとく大音響の悲鳴を上げるなんて、どういう躾を受けたんだ」
 アルトの声が低く抑えられていて不快の色を醸しだしている。
 慌てて男から飛び降りたサクラはいったん姿勢を正し視線を合わせてから90度に腰を折る。
 「ごめんなさい。本当にごめんなさい。ケガはありませんか?」
 サクラが退くとすぐに立ち上がった男の手が近くに飛んだサングラスをひらい、シャツとズボンの汚れを払う。
 顰めらせた綺麗な顔に再び視線をもどすと、不機嫌なアルトボイスが再度頭上から降ってた。
 「尾てい骨は打ったがケガはない。まったく演技とsex以外で初対面の女に跨れたのは初めてだ」
 今何て?後半部分が意味不明なんですけど・・・
 おずおずと体を起こしながら視線を相手の胸元まで上げると濡れたシャツの前で握られた壊れたサングラスが目に入り、自分がやらかした事に心底青くなる。
 「ああ、壊れてしまったな」
 感情のない不機嫌な声に再度90度に腰を折り頭を下げる。
 「弁償します。それにシャツや、ズボンのクリーニング代もお支払します」
 いったいいくらかかる?高額そうな品々に、ハァ~とため息が出る。
 こんな事ならバスに乗ればよかったと思う。
 だから美形に係わるのは嫌なんだ!今日は本当についていない!
 長身細身のボディーに手入れの行き届いたブロントの似合う中性的な甘いマスク、すらりと伸びた手足でオーダーメードの個性的なショッキングピンクのシャツを見事に着こなしている。
 このヨハン・ギーツのオーラに初めて充てられた女性は大概のものが感嘆のため息を零しボーとなって口もきけなくなるのだが、今のサクラは弁償金額がいくらになるのか頭の中でそろばんをはじくのに忙しい。  
 超美形は観賞用で係わるものではないという持論に基づき、アンラッキーな出来事に、トーンダウンしたため息が零れ、眉が残念を表わすハの字になる。
 美形が困惑オーラを醸しだして怪訝な表情になるが、ここは必要な情報を単刀直入ズバリ聞かなくては。
 「それ弁償するのにいくら必要ですか?私あまり金がなくて、高額だと分割にしていただくことになりますが大丈夫ですか?」
 は? ハハハ  ピュー ???相手のリアクションが理解できない。
 勇気を振り絞ってなけなしのプライドを捨てて尋ねたのに返ってきたのは驚きの顔に続く笑い声と尻上がりな口笛。
 うら若き乙女が恥を忍んでお金の話をしているのに、ちょっとそれは失礼でしょうが。
 思わずムっとした顔でにらみそうになり慌てて視線を逸らす。
 「君、変わってるね。類稀な人?だね」 
 今、人の後に失礼な?付きましたよね?はっきり言いましょう。あなたほどではありません!
 「OK、弁償は免除するよ」
 え?本当ですか?
 「ただし、これから少し付き合ってよ」
 ?
 「まさか、僕のこと知らない?」
 ??初対面だと思いますがどこかでお会いしていましたか?
 「君どこから来たの?僕を知らないなんて異世界人のレベルだよ」
 ??? 異世界人てなに?あなたほどに美形ではないですが宇宙人程異形ではないつもりです。叔母は超美形ですが私の造作レベルは普通です。
 「とにかく今僕は妻になってくれる人を探していて、君をスカウトしたんだけど、勿論返事はOKだよね」
 初対面の、しかも特別のオーラを持つ男に突然妻になって欲しいと言われても、勿論答えはNOに決まっている。
 何をいっているのだこの人は?
 頭の中で思案し導き出した答えは、特別なオーラ=普通じゃない=変人=変人には関わってはならない=即この場を去れ。
 「弁償しなくていいのなら助かりました。(相手は代替え要求をしたのであってしなくていいとは言っていない)急いでいるん失礼しますね」
 そう言って、少し身構えてから自分の要求をとおす時に使う金色の笑みを顔に乗せる。
 その柔らかくて明るい笑顔はいつも相手に自分の要求を飲ませてしまう。
 昔から困ったときには決まってこの笑顔を使ってみるのだが、初対面の相手にそれが通じなかったことなど一度もない。
 目の前の彼もそうだったようで、見開いたままの眼力100%の視線が微動だにしなかった。
 いつものように動けないでいる相手に一礼するとベネチア行のサービスカウンターに向かって歩き出した。
 変人さんごめんなさい。弁償は次回機会とお金があればさせて頂きます。
 かくして、ヨンハ・ギーツはサクラの中で超美形の変人サンに変換された。
  
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