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キヌアの前当主は最強の能力持ち!(前)
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時刻は少し遡り、場所はキヌア領主の隠居邸。
「おじい様、天界に連れ去られてしまいました」
情けない顔で報告する孫に一瞬苦虫を噛んだ彼だが、すぐにいつも通りの好々爺の笑みを見せる。
「18を過ぎたあの子が自ら手を取ったのなら静観するしかないさ」
そう言い切った言葉が祖父の真意であるかどうかわからないのは常の事。
「私としてもようやく会えた従妹にはこのキヌアにもう少しいて欲しかったかったのですがね」
キヌアの切れ者と言われる私も祖父の意向には逆らえない。
ところで、と前置きしてから祖父が悪戯を仕掛けるように自分に尋ねた。
「お前はゼウスと次期ゼウスのどちらがアレの婿にふさわしいと思う?」
「・・・」
そう聞かれて私は言葉に詰まった。
どちらを押しても文句を言われるのはわっかっている。
「その2択の中に私も加えて3択にしといてください」
本当に食えない祖父にそう答えると敵はだんまりを決め込んだ。
私がその従妹の存在を知ったのはごく最近のことだった。
高齢にもかかわらず何事も澄ました顔でサラリと難題を解決してしまう祖父に領民は今も絶対的な信頼を寄せている。
そんな祖父が側近を侍らせて淡々と領地の改正政策に指示を出していた時に、何を思ったのか顔色を変えて幻のごとく姿を消してしまったとの報告を受けた時には少々驚いたのだが。
それまでもふらりと出かけて半日ほど行方が分からないことは時々あったが、私があちらの世界にいるという従妹の存在を知るきっかけとなったあの事件の時は祖父の行方不明は長すぎた。
何が起こったのか掴めずに対処が後手に回る中、祖父が目の前から突然ドロンする出来事に初めて遭遇した重臣共が祖父は神隠しにあっただの、身罷ったのだと騒ぎ出し、あっという間にその噂が領地に広がった。
何か良くないことが起こる予兆かもしれないといった不穏な空気が流れだし、不安に怯えた領民が自宅に引き籠りだすと、あっという間に生活に支障をきたし始めた。
活気の消えた領地を巡り物資を配給したり、心配はいらないと領民を説得して回りながら火急の案件を片付ける日々が続く中、当の祖父は2週間後に何食わぬ顔で帰って来て、ちょっと気が向いて散歩に出ていたという。
「!会議の途中で突然あなたが姿を消すと領地がどうなるかぐらいわかっていたでしょう!なのにどうして!?」
目くじらを立てて憤慨する自分に、涼しい顔でそんなに大騒ぎすることではないよ、というから益々腹が立った。
こっちはあなたの気まぐれのせいでこの10日以上碌に寝ていないんです!
気まぐれに散歩に出たなどと、子供騙しの言い訳でお茶を濁されたのではたまりません。
今日こそはあなたの雲隠れの秘密を聞き出しますから!
目を眇めて声色を一段低め、間を置いて、いいですか、と切り出した。
「いいですか。おじい様。領地の者は天変地異が起こると大騒ぎするし、あの時一緒にいた重臣達は卒倒者が続出して家に引きこもる。それを宥め、期限の迫る重要案件を早急に処理するのがどれほど大変だったかおわかりですか!」
聡く千里眼の視野を持つ祖父にはわっかっていて行方不明を決行する理由が絶対にあったはずだ。
苛立つ気持が暴走しないように人差指で執務机を叩き、散々文句を垂れ、問い詰め、最後に脅しをかけると、やっと従妹が異世界にいる事を白状したのは一年前のちょうど今頃だった。
トントントン
「おじい様、2週間前のあれはどういうことですか」
「・・・」
トントントン
「側近たちからは突然消えたおじい様が神隠しにあったと報告を受けましたが、あれは天界人が行う瞬間移動だったのでしょう。今までも密かに使ってましたよね。地上人のおじい様がどうし使えるのですか」
「・・・」
トントントン
「ここでその特殊能力を使うのを違法としたのは確かおじい様でしたよね」
「・・・」
トントントン
「その地上人には無い能力を使っていったい、この2週間、どこで何をされていたのですか」
「・・・」
「私も、今までおじい様が普通の地上人でないことは薄々感じておりましたよ。この機に洗いざらい話してくれませんか」
「・・・」
どんなに問い詰めても何も答えない祖父に私は業を煮やした。
バシーン!
とうとう我慢しきれずに目の前の机に持っていた書類を叩き付けていて最後通牒を突きつけた。
「そうですか。分かりました。おじい様と私との信頼関係はこれまでです。わたくしはこのキヌアを出てデリカにでも移り住みますので今後のことは父を再教育するか、誰かおじい様のお目にかなう方でも養子に迎えて後継者を育成をやり直して下さい」
そう宣言し、では、と腰を上げたところで、ようやく、待てと声がかかる。
「あさお。お前には一から話そう」
ニヤリと人の悪い笑みが浮かんだ私を見た祖父は、フウっと一息あきらめのため息を吐いた。
「あさおは、ここキヌアと天界との間には古から伝わる誓約があるのを知っているだろう」
「キヌアの領民に特殊能力を持った者が生まれても天界には干渉ない。その代わり、天界人もキヌアでは特殊能力を使わないというあれですか」
そう確認すれば、肯定の頷きがかえってくる。
「では、その誓約がどうしできたのかを考えたことがあるか」
「特殊能力を持たない我々の領地を、天界人達に荒らされないためですよね」
「それは、こちら側が受け取るメリット。では天界に差し出すものは何かわかるか?それがなければ契約は成立しないよ」
言われてみればもっともな話で、疑問符を顔に出した私を見てフンと笑うおじい様はやっぱり曲者だ。
「それも含めて、私にわかるように今日こそ、洗いざらい吐いてもらいますから」
気合と勢いで正面から見据えると、隠し事を白状する子供のように祖父が気まずそうに目をそらす。
「孫の様子が気になって、ちょっとあちらの世界に行っていたのだよ」
孫が、どこにいるですって!と叫びたかったが、突飛すぎる話に声は出ず、情けなくもあわあわするのみになった。
ちょっと変人だったおじい様がとうとうボケた!
あちらの世界に孫がいる!?孫は自分一人のはずだ。
だから不甲斐ない父の代わりになりたくもないキヌアの後継者に指名され、政治経済学に社会学、果ては帝王学なんかも習得させられ、今も裏方の見習い修行中の身である。
それにちょっと、あちらの世界って、近所に買い物にでも行くように言わないで下さいよ。
大体、異世界移動はゼウスの能力持ちや、嶺家の当主にだってそれなりの対策が必要なイベントじゃないですか!
「うん、普通はそうなんだけどね。私の場合特殊能力がゼウスのそれよりも異常に高くてね。割と簡単に行けちゃうんだよね」
心の声に応えたこの告白にさすがの私も目剥いた。
「今は、お前の心を読んだのだよ。私はそんな事も出来るんだよね」
だよねって、重要なことを語るのに萎えた言い方はやめてくださいよ。
「それは桜家が得意とする能力じゃぁ・・・。おじい様は天界人なんですか」
「いや、キヌア人だ。ここキヌアに稀に生まれる高い特殊能力を持った人間は古の誓約に縛られているんだ」
そう言って、切なげに自嘲した。
「ゼウス以上に特殊能力を使いこなせる地上人が天界の覇権を望んで喧嘩を吹っ掛けたら大変なことになるだろう。これで天界とキヌアはお互いに干渉しないためにあの誓約を結んだと天界にある皇家の図書館所蔵の古記に書かれてあるそうだ」
ああなるほど、そういう訳か。
そのせいで、と遠い目をした祖父が先を続ける。
「そのせいで、若い頃に貰った天界人の嫁とはすぐに別れることとなり、生まれたはずの息子にも会わずじまいだ」
まさか、そんな非道な事って・・・
「彼女は、琉家のお姫様だったし、何よりその息子がね、ゼウスの能力持ちだったから天界が離さなかったんだよ」
年齢から推測すると、それはまさか前ゼウスのオーク様?ですか!
衝撃に震える私とは対照的に、そういうことになるかなぁ、と素っ気ない返事が返ってくる。
本当に?と少々胡乱な眼差しを向けると、だって仕方がないじゃないか、一度も会ったことがないんだからとちょっと情けない顔になる。
「で、その息子の娘があちらの世界にいてね。その子が天界5族の家宝に好かれちゃってちょっと大変なことになってたから励ましに行ってたんだよ」
そんな狐に抓まれたような話は到底信じられませんし、第一。
「オーク様にお子様がいらっしゃったという話は聞いたことがありませんが」
「特殊な事情でこちらの世界のトップシーックレットになってるからね」
「その、特殊な事情とは何なんなのですか」
それを、知りたいのならこれを呼んでおけと言って投げ渡されたのがここメルタに伝わるお伽噺の絵本だった。
「おじい様、天界に連れ去られてしまいました」
情けない顔で報告する孫に一瞬苦虫を噛んだ彼だが、すぐにいつも通りの好々爺の笑みを見せる。
「18を過ぎたあの子が自ら手を取ったのなら静観するしかないさ」
そう言い切った言葉が祖父の真意であるかどうかわからないのは常の事。
「私としてもようやく会えた従妹にはこのキヌアにもう少しいて欲しかったかったのですがね」
キヌアの切れ者と言われる私も祖父の意向には逆らえない。
ところで、と前置きしてから祖父が悪戯を仕掛けるように自分に尋ねた。
「お前はゼウスと次期ゼウスのどちらがアレの婿にふさわしいと思う?」
「・・・」
そう聞かれて私は言葉に詰まった。
どちらを押しても文句を言われるのはわっかっている。
「その2択の中に私も加えて3択にしといてください」
本当に食えない祖父にそう答えると敵はだんまりを決め込んだ。
私がその従妹の存在を知ったのはごく最近のことだった。
高齢にもかかわらず何事も澄ました顔でサラリと難題を解決してしまう祖父に領民は今も絶対的な信頼を寄せている。
そんな祖父が側近を侍らせて淡々と領地の改正政策に指示を出していた時に、何を思ったのか顔色を変えて幻のごとく姿を消してしまったとの報告を受けた時には少々驚いたのだが。
それまでもふらりと出かけて半日ほど行方が分からないことは時々あったが、私があちらの世界にいるという従妹の存在を知るきっかけとなったあの事件の時は祖父の行方不明は長すぎた。
何が起こったのか掴めずに対処が後手に回る中、祖父が目の前から突然ドロンする出来事に初めて遭遇した重臣共が祖父は神隠しにあっただの、身罷ったのだと騒ぎ出し、あっという間にその噂が領地に広がった。
何か良くないことが起こる予兆かもしれないといった不穏な空気が流れだし、不安に怯えた領民が自宅に引き籠りだすと、あっという間に生活に支障をきたし始めた。
活気の消えた領地を巡り物資を配給したり、心配はいらないと領民を説得して回りながら火急の案件を片付ける日々が続く中、当の祖父は2週間後に何食わぬ顔で帰って来て、ちょっと気が向いて散歩に出ていたという。
「!会議の途中で突然あなたが姿を消すと領地がどうなるかぐらいわかっていたでしょう!なのにどうして!?」
目くじらを立てて憤慨する自分に、涼しい顔でそんなに大騒ぎすることではないよ、というから益々腹が立った。
こっちはあなたの気まぐれのせいでこの10日以上碌に寝ていないんです!
気まぐれに散歩に出たなどと、子供騙しの言い訳でお茶を濁されたのではたまりません。
今日こそはあなたの雲隠れの秘密を聞き出しますから!
目を眇めて声色を一段低め、間を置いて、いいですか、と切り出した。
「いいですか。おじい様。領地の者は天変地異が起こると大騒ぎするし、あの時一緒にいた重臣達は卒倒者が続出して家に引きこもる。それを宥め、期限の迫る重要案件を早急に処理するのがどれほど大変だったかおわかりですか!」
聡く千里眼の視野を持つ祖父にはわっかっていて行方不明を決行する理由が絶対にあったはずだ。
苛立つ気持が暴走しないように人差指で執務机を叩き、散々文句を垂れ、問い詰め、最後に脅しをかけると、やっと従妹が異世界にいる事を白状したのは一年前のちょうど今頃だった。
トントントン
「おじい様、2週間前のあれはどういうことですか」
「・・・」
トントントン
「側近たちからは突然消えたおじい様が神隠しにあったと報告を受けましたが、あれは天界人が行う瞬間移動だったのでしょう。今までも密かに使ってましたよね。地上人のおじい様がどうし使えるのですか」
「・・・」
トントントン
「ここでその特殊能力を使うのを違法としたのは確かおじい様でしたよね」
「・・・」
トントントン
「その地上人には無い能力を使っていったい、この2週間、どこで何をされていたのですか」
「・・・」
「私も、今までおじい様が普通の地上人でないことは薄々感じておりましたよ。この機に洗いざらい話してくれませんか」
「・・・」
どんなに問い詰めても何も答えない祖父に私は業を煮やした。
バシーン!
とうとう我慢しきれずに目の前の机に持っていた書類を叩き付けていて最後通牒を突きつけた。
「そうですか。分かりました。おじい様と私との信頼関係はこれまでです。わたくしはこのキヌアを出てデリカにでも移り住みますので今後のことは父を再教育するか、誰かおじい様のお目にかなう方でも養子に迎えて後継者を育成をやり直して下さい」
そう宣言し、では、と腰を上げたところで、ようやく、待てと声がかかる。
「あさお。お前には一から話そう」
ニヤリと人の悪い笑みが浮かんだ私を見た祖父は、フウっと一息あきらめのため息を吐いた。
「あさおは、ここキヌアと天界との間には古から伝わる誓約があるのを知っているだろう」
「キヌアの領民に特殊能力を持った者が生まれても天界には干渉ない。その代わり、天界人もキヌアでは特殊能力を使わないというあれですか」
そう確認すれば、肯定の頷きがかえってくる。
「では、その誓約がどうしできたのかを考えたことがあるか」
「特殊能力を持たない我々の領地を、天界人達に荒らされないためですよね」
「それは、こちら側が受け取るメリット。では天界に差し出すものは何かわかるか?それがなければ契約は成立しないよ」
言われてみればもっともな話で、疑問符を顔に出した私を見てフンと笑うおじい様はやっぱり曲者だ。
「それも含めて、私にわかるように今日こそ、洗いざらい吐いてもらいますから」
気合と勢いで正面から見据えると、隠し事を白状する子供のように祖父が気まずそうに目をそらす。
「孫の様子が気になって、ちょっとあちらの世界に行っていたのだよ」
孫が、どこにいるですって!と叫びたかったが、突飛すぎる話に声は出ず、情けなくもあわあわするのみになった。
ちょっと変人だったおじい様がとうとうボケた!
あちらの世界に孫がいる!?孫は自分一人のはずだ。
だから不甲斐ない父の代わりになりたくもないキヌアの後継者に指名され、政治経済学に社会学、果ては帝王学なんかも習得させられ、今も裏方の見習い修行中の身である。
それにちょっと、あちらの世界って、近所に買い物にでも行くように言わないで下さいよ。
大体、異世界移動はゼウスの能力持ちや、嶺家の当主にだってそれなりの対策が必要なイベントじゃないですか!
「うん、普通はそうなんだけどね。私の場合特殊能力がゼウスのそれよりも異常に高くてね。割と簡単に行けちゃうんだよね」
心の声に応えたこの告白にさすがの私も目剥いた。
「今は、お前の心を読んだのだよ。私はそんな事も出来るんだよね」
だよねって、重要なことを語るのに萎えた言い方はやめてくださいよ。
「それは桜家が得意とする能力じゃぁ・・・。おじい様は天界人なんですか」
「いや、キヌア人だ。ここキヌアに稀に生まれる高い特殊能力を持った人間は古の誓約に縛られているんだ」
そう言って、切なげに自嘲した。
「ゼウス以上に特殊能力を使いこなせる地上人が天界の覇権を望んで喧嘩を吹っ掛けたら大変なことになるだろう。これで天界とキヌアはお互いに干渉しないためにあの誓約を結んだと天界にある皇家の図書館所蔵の古記に書かれてあるそうだ」
ああなるほど、そういう訳か。
そのせいで、と遠い目をした祖父が先を続ける。
「そのせいで、若い頃に貰った天界人の嫁とはすぐに別れることとなり、生まれたはずの息子にも会わずじまいだ」
まさか、そんな非道な事って・・・
「彼女は、琉家のお姫様だったし、何よりその息子がね、ゼウスの能力持ちだったから天界が離さなかったんだよ」
年齢から推測すると、それはまさか前ゼウスのオーク様?ですか!
衝撃に震える私とは対照的に、そういうことになるかなぁ、と素っ気ない返事が返ってくる。
本当に?と少々胡乱な眼差しを向けると、だって仕方がないじゃないか、一度も会ったことがないんだからとちょっと情けない顔になる。
「で、その息子の娘があちらの世界にいてね。その子が天界5族の家宝に好かれちゃってちょっと大変なことになってたから励ましに行ってたんだよ」
そんな狐に抓まれたような話は到底信じられませんし、第一。
「オーク様にお子様がいらっしゃったという話は聞いたことがありませんが」
「特殊な事情でこちらの世界のトップシーックレットになってるからね」
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