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紅顔の美少年とお宅訪問ツアーと時をこえた再会
第32話
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結局、ダンが園芸委員会に入るかは保留という扱いになりましたが、まだ気は抜けません。相変わらず人手が不足している事実に変わりはありませんし、ジェイが彼を勧誘する可能性も十分に有り得るでしょう。かといって、具体的にどうすれば彼の入会を阻止できるかという対策も思いつきません。
ともかく、今は彼の気が変わるよう祈るほかありませんでした。
「とうとうダンにも会っちゃったかぁ。こうなると、全員コンプするのも時間の問題だね」
「そんなつもりはなかったのですが……。どちらかといえば、これ以上候補を増やしたくはありませんでした。話がややこしくなりそうなので」
事の次第をミツに説明している間、私はつい重い溜め息が漏れ出るのを禁じ得ませんでした。
「ところで……まだ来ないのかな、ミュゲちゃん。ここで待ってるって言ったんだよね」
「ええ。仕度は終えているので、そろそろ下りて来るはずですが……」
我々が談話室の扉へ視線を向けた直後、ちょうどミュゲが姿を現しました。
今日はレースや刺繍をあしらった瀟洒なドレスではなく、故郷で野良仕事をするときに着ていたようなエプロンドレスに身を包んでいます。
「はわわわ……美少女のエプロンドレス……最高……」
興奮気味に瞳を輝かせ、頬を紅潮させながらミュゲを抱きしめるミツも、普段よりシンプルな格子縞のワンピース姿でした。肩には愛用のストールを羽織っています。
クライス・ティアでは毎日のようにどこかしらの校舎で講義や研究会が行われているので、休まず勉学に励もうと思えばそれも可能です。
しかし、ほとんどの生徒は週に一日か二日、各々の裁量で休日を設けています。寮でのんびり過ごしたり、課題を片付けたりする生徒もいれば、校外へ出かける生徒もいたりと、休日の過ごし方はさまざまです。
今日はたまたま我々三人の休日が重なったので、せっかくだからとドーム・ロビンの談話室に集まったのでした。
さて、三人揃ったところで、何をして遊ぶかが問題です。
まだ行ったことのない教室棟を探検してみようとか、学生街まで足を延ばそうとか、いろいろな案が出たものの、今回は学生寮訪問ツアーで意見が一致しました。
クライス・ティアの構内に設けられている六つの学生寮は、それぞれ建てられた時期や構造が異なり、外観からして同じ学生寮とは思えないほど個性的です。
中には貴重な文化財として保護の対象とされている建物もあり、以前からきちんとこの目で見ておきたいものよと思っていました。
流石に部屋の中まで入るのは難しいものの、談話室までなら寮生でなくとも自由に出入りできます。見学ついでに、同じく休日を過ごしているだろう友人たちにも会いに行くつもりです。
「ドーム・フィンチには先日遊びに行きましたから、今日は違う寮を見てみたいですね」
私の何気ない提案に、ミュゲが驚いたようにこちらを凝視します。
そうでした。先頃、ドーム・フィンチの談話室でミツと話をしたとき、ミュゲはその場にいなかったのです。しばらく責めるような視線を向けられた後、小さな拳で背中をぽかすかと叩かれました。おそらく抜けがけしたことを怒っているのでしょう。
三人でじゃれ合うようにして歩くうちに辿り着いたのは、ドーム・レイヴンです。
ドーム・レイヴンは六つの寮のうち最も古く、規模の大きい寮として知られています。南棟、東棟、西棟の三棟により構成された建物は、クライス・ティアの建国当初に竣工されたという歴史もあり、宮殿といわれても納得してしまうほどの堂々たる風格です。
談話室もドーム・ロビンやドーム・フィンチとは段違いに広く、多くの生徒たちで賑わっていました。
「おーい、みんな。こっちだよ」
談話室に入ると、我々に気付いたジェイが大きく手を振りながら呼びかけてきます。
「本当に遊びに来てくれたんだ。お休みの日にも会えるなんて、何だか不思議な気分」
休日だからか、ジェイも普段より肩の力が抜けた格好でした。白い綿のシャツに若草色の毛糸で編んだ薄手のベスト、霜降りのグレーのスラックスを身に着けた彼は、正装を纏っているときよりも幾分か幼い印象を受けます。
「ミュゲちゃんとミツコちゃんも、いつもと違う雰囲気だね。とっても可愛いよ。しーちゃんは……あんまり変わらないような……」
「ええ、まあ……普段から動きやすい服しか着ないので……」
ジェイの指摘通り、私は授業のある日だろうと休日だろうと変わらず、洗い晒しのシャツとジレ、ジョッパーズパンツにブーツという出で立ちでした。
「それにしても、初めて来ましたが……聞きしに勝る絢爛ぶりですね。うちの寮とは比較にならないほど豪奢といいますか……」
「建てられた時代が全然違うせいかもしれないね。ドーム・ロビンは一番新しい寮だから。でも、あっちの寮もドールハウスみたいに可愛くて、僕は好きだよ」
言われてみれば、ドーム・レイヴンは手入れこそ行き届いているものの、柱や壁、扉など至るところに年季の入った様子が見て取れます。一方、ドーム・ロビンは傷みらしい傷みはなく、それどころか階段の手すりや窓枠などは、ペンキを塗った直後のように真っ白です。
ジェイは我々がしばらく滞在するものと思っていたらしく、お茶の一つも飲めないことを残念そうにしていましたが、まだ立ち寄りたい場所があったため、少し立ち話をしてから次の寮へ向かいました。
ともかく、今は彼の気が変わるよう祈るほかありませんでした。
「とうとうダンにも会っちゃったかぁ。こうなると、全員コンプするのも時間の問題だね」
「そんなつもりはなかったのですが……。どちらかといえば、これ以上候補を増やしたくはありませんでした。話がややこしくなりそうなので」
事の次第をミツに説明している間、私はつい重い溜め息が漏れ出るのを禁じ得ませんでした。
「ところで……まだ来ないのかな、ミュゲちゃん。ここで待ってるって言ったんだよね」
「ええ。仕度は終えているので、そろそろ下りて来るはずですが……」
我々が談話室の扉へ視線を向けた直後、ちょうどミュゲが姿を現しました。
今日はレースや刺繍をあしらった瀟洒なドレスではなく、故郷で野良仕事をするときに着ていたようなエプロンドレスに身を包んでいます。
「はわわわ……美少女のエプロンドレス……最高……」
興奮気味に瞳を輝かせ、頬を紅潮させながらミュゲを抱きしめるミツも、普段よりシンプルな格子縞のワンピース姿でした。肩には愛用のストールを羽織っています。
クライス・ティアでは毎日のようにどこかしらの校舎で講義や研究会が行われているので、休まず勉学に励もうと思えばそれも可能です。
しかし、ほとんどの生徒は週に一日か二日、各々の裁量で休日を設けています。寮でのんびり過ごしたり、課題を片付けたりする生徒もいれば、校外へ出かける生徒もいたりと、休日の過ごし方はさまざまです。
今日はたまたま我々三人の休日が重なったので、せっかくだからとドーム・ロビンの談話室に集まったのでした。
さて、三人揃ったところで、何をして遊ぶかが問題です。
まだ行ったことのない教室棟を探検してみようとか、学生街まで足を延ばそうとか、いろいろな案が出たものの、今回は学生寮訪問ツアーで意見が一致しました。
クライス・ティアの構内に設けられている六つの学生寮は、それぞれ建てられた時期や構造が異なり、外観からして同じ学生寮とは思えないほど個性的です。
中には貴重な文化財として保護の対象とされている建物もあり、以前からきちんとこの目で見ておきたいものよと思っていました。
流石に部屋の中まで入るのは難しいものの、談話室までなら寮生でなくとも自由に出入りできます。見学ついでに、同じく休日を過ごしているだろう友人たちにも会いに行くつもりです。
「ドーム・フィンチには先日遊びに行きましたから、今日は違う寮を見てみたいですね」
私の何気ない提案に、ミュゲが驚いたようにこちらを凝視します。
そうでした。先頃、ドーム・フィンチの談話室でミツと話をしたとき、ミュゲはその場にいなかったのです。しばらく責めるような視線を向けられた後、小さな拳で背中をぽかすかと叩かれました。おそらく抜けがけしたことを怒っているのでしょう。
三人でじゃれ合うようにして歩くうちに辿り着いたのは、ドーム・レイヴンです。
ドーム・レイヴンは六つの寮のうち最も古く、規模の大きい寮として知られています。南棟、東棟、西棟の三棟により構成された建物は、クライス・ティアの建国当初に竣工されたという歴史もあり、宮殿といわれても納得してしまうほどの堂々たる風格です。
談話室もドーム・ロビンやドーム・フィンチとは段違いに広く、多くの生徒たちで賑わっていました。
「おーい、みんな。こっちだよ」
談話室に入ると、我々に気付いたジェイが大きく手を振りながら呼びかけてきます。
「本当に遊びに来てくれたんだ。お休みの日にも会えるなんて、何だか不思議な気分」
休日だからか、ジェイも普段より肩の力が抜けた格好でした。白い綿のシャツに若草色の毛糸で編んだ薄手のベスト、霜降りのグレーのスラックスを身に着けた彼は、正装を纏っているときよりも幾分か幼い印象を受けます。
「ミュゲちゃんとミツコちゃんも、いつもと違う雰囲気だね。とっても可愛いよ。しーちゃんは……あんまり変わらないような……」
「ええ、まあ……普段から動きやすい服しか着ないので……」
ジェイの指摘通り、私は授業のある日だろうと休日だろうと変わらず、洗い晒しのシャツとジレ、ジョッパーズパンツにブーツという出で立ちでした。
「それにしても、初めて来ましたが……聞きしに勝る絢爛ぶりですね。うちの寮とは比較にならないほど豪奢といいますか……」
「建てられた時代が全然違うせいかもしれないね。ドーム・ロビンは一番新しい寮だから。でも、あっちの寮もドールハウスみたいに可愛くて、僕は好きだよ」
言われてみれば、ドーム・レイヴンは手入れこそ行き届いているものの、柱や壁、扉など至るところに年季の入った様子が見て取れます。一方、ドーム・ロビンは傷みらしい傷みはなく、それどころか階段の手すりや窓枠などは、ペンキを塗った直後のように真っ白です。
ジェイは我々がしばらく滞在するものと思っていたらしく、お茶の一つも飲めないことを残念そうにしていましたが、まだ立ち寄りたい場所があったため、少し立ち話をしてから次の寮へ向かいました。
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