🎃悪と正義の3P♡ハロウィン🎃~二人の兄貴とコスプレえっち~

宗形オリヴァー

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悪と正義の3P♡ハロウィン

悪と正義の3P♡ハロウィン ~ハロウィン前夜~

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同じクラスの宗原優太(むねはら・ゆうた)の家に遊びに行くことは今までにも何度かあったけど、今日は優太のお兄ちゃんがタイミングよく帰って来て、リビングの奥で優太とゲームをしていたオレにも挨拶をしてくれた。
 
「ナオくん、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
優太とは年の離れた兄の宗原勇護(むねはら・ゆうご)さんが、爽やかな笑顔でオレの名前を呼んでくれる。
オレの名前、勝山素直(かつやま・すなお)を略してナオ。
背が高い勇護さんは高そうなスーツがとっても似合っていて、いつも落ち着きがあって、仕事の出来る大人の男の人って感じでオレはひそかに憧れているのだ。
「お、お邪魔してます」と返事する声が思わず上擦る。
 
「お兄ちゃん、お帰りなさい!」
小柄な優太が勇護さんに駆け寄り、頭を撫でて貰っている。ほんと、仲良しって感じで羨ましい。
優太の家は両親が亡くなってるから、兄弟で二人暮らしなんだ。
「優太、ケーキ買って来たぞ。ナオくんと食べなさい」
「やったー、お兄ちゃんありがとう! あっ、ハロウィンのケーキだ」
優太がケーキの箱を受け取って、オレの方にも見せてくれる。
かぼちゃのカタチをしたケーキの上に、チョコのコウモリが乗っていて、そういえば今はハロウィンの時期なのだと思い出した。
 
「ナオくん、ケーキ好きかな?」
勇護さんが、ぼんやりケーキを眺めていた僕に聞いた。
「あっ、はい、大好きです」
「よかった。そこの美味いから食べてみて」
ニコっと微笑まれて、違う意味でぼんやりしてしまう。
いいよなあ、こんなカッコいい兄ちゃん。
オレは微笑ましく二人を眺めて、ふっと自分の家の兄二人の存在を脳裏に思い浮かべたが―――――即座にその想像を打ち消した。
うちの兄たちと勇護さんとでは、天と地ほどの差があるからだ。
 
「あ~あ、優太はいいよなあ。オレもあんな兄ちゃんが欲しかったなあ」
勇護さんが自分の部屋に行ったのを確認してから、隣でコントローラーを握る優太に話しかける。
「えへへ。ナオくんにも高校生のお兄ちゃん二人もいるじゃない」
照れくさそうに笑う優太が言うように、オレにも少し歳の離れた双子の兄がいる。
オレは溜め息をついてコントローラーを床に置いた。
「ちぇっ。うちの兄ちゃんたちなんか全然ダメダメ。勇護さんって、洗練されたクールな大人~って感じがするじゃん?」
「クール……」
優太がなぜか視線を泳がせる。
「うちの兄ちゃん達なんか二人とも部屋にエロ本いっぱい隠し持ってるしさー。勇護さんはスケベなこととか一切興味無さそうだもんなー」
「う、うーん、どうだろ……。うちのお兄ちゃんも、男だし……その……」
なぜか頬を真っ赤にしてうつむく優太に、オレは「?」を浮かべた。

「でも、ナオくんとこはお兄ちゃんにいっぱい遊んでもらえそうで羨ましいなあ。うちのお兄ちゃんは普段はお仕事だから…」
コップにジュースを汲みながらそう言ってくる優太に、オレは出してもらったケーキを食べながら考え込んだ。
「オレも遊んでもらうことなんてほとんどないよ。セーギ兄は勉強ばっかで口うるさいし、アク兄はヤンキーだから喧嘩ばっかで家にいないし……」
確かに昔はよく一緒に遊んだけど、二人が高校に上がった頃からはほとんど構って貰った記憶が無い。
そりゃあ、オレと兄達とじゃ興味の対象も楽しいと感じることも違うだろうけど...。
歳が離れてても仲良しな優太と勇護さんを見ていると、やっぱちょっと羨ましい気持ちになる。

時計を見るともう午後5時。そろそろ家に帰る時間だった。
優太と勇護さんに帰ることを告げて、ランドセルを背負って玄関で靴を履く。
二人は寄り添って、オレが玄関から出るのを見送ってくれた。
 
「じゃあ、また学校でね」
「ナオ君、気をつけて帰るんだよ」
 
「はーい、お邪魔しましたー」
ぴったりくっついて手を振ってくれる優太と勇護さん。
うーん、二人を見ていたらオレも久しぶりに弟ゴコロが目覚めてしまったかも。
帰ったら、たまには兄ちゃんたちにお願いしてみようかな……。
前は休みの日に公園に連れて行ってくれたり、映画を観に行ったりしたし......。
素直に言ったことなんか無いけど、兄に構って欲しいっていうのは、弟として当然の欲求だよな…!?
オレは大義名分を抱えた気分で、家へと急いだ。

 
「ただいまあ」
ランドセルを部屋に置いてリビングに行くと、ワイシャツにエプロン姿のパパがキッチンで料理をしていた。
魚の焼けるいい匂いが漂っている。
「ナオ、おかえり」
数年前にママが病気でこの世を去ってから、在宅で仕事をしているパパが毎日ご飯を作ってくれている。
昔は結構男前だったらしいパパだけど、在宅仕事に切り替えてからは体重が増えてきたみたいで、今では立派にぼよんとお腹が突き出ている。
外に出なくなって剃るのをサボってるアゴ周りのヒゲが、いかにもおじさんっぽい。
「帰ってきて早々悪いけど、洗濯物取り込んでくれない?」
「わかったー」
手が離せないパパに返事して庭に干された洗濯物を取り込む。
忙しいパパの手助けをするべく、オレも日々出来ることは手伝うようにしてるんだ。
「それと、もうご飯出来るからお兄ちゃんたち部屋から呼んできてくれよ」
パパが慌ただしくお皿を用意しながら言う。
「はーい。まったく、兄ちゃんたちはしょうがないなあ」
 
二階への階段を上がって、まずはセーギ兄の部屋をノックする。
「セーギ兄。ご飯だぞーっ」
扉の外から呼びかけるも返事なし。よく見ると扉に「ただいま勉強中」のプレートがかけてあった。
それを無視してドアを開くと、無駄なものが置かれていない無機質な部屋で、勉強机に向かっているセーギ兄の背中が目に入った。
 
「おいナオ、おれが勉強してる時は勝手に入るなっていつも言ってるだろ?」

どっしりと座っていた椅子をくるりと回転させて、野暮ったい黒縁の眼鏡をかけたセーギ兄ちゃんが振り向いた。
勉強を邪魔されて、神経質な顔をむすっとしかめている。
彼が、オレの双子の兄の一人で勝山星義(かつやま・せいぎ)。
名は体を表すド真面目で、人に厳しく自分にも厳しい性格。
学校でも生徒会なんかに入ってるらしくて、最近はいつも部屋にこもって受験勉強ばかりしてるくせに、「運動不足はよくない」と言ってダンベルで筋トレまでしてて身体は筋肉質だからむかつく。
普段から冗談ひとつ言わない、ハッキリ言って面白みがないひと。
 
「もうご飯だって、パパが呼んでるよ」
「いいか、ナオ。勉強って言うのは如何に集中できるかどうかなんだ。飯の度に邪魔されたら気が散ってしょうがないだろ。わかるか?」
せっかく呼びに来てあげたのに。
「ぜんぜんわかりませーん」
鼻をほじる仕草でからかうと、セーギ兄は顔をしかめた。
 
「大体お前は毎日遊びまわっているが、ちゃんとやることはやってるのか? 自主的に勉強しないと、将来困るのは自分なんだぞ」
 
そう言ってセーギ兄はシャーペンをビシッとオレの方へ向けてくる。

「学校の宿題はちゃんとやってるからいいでしょ。いくら成績良くたって、セーギ兄は弟とのコミュニケーション力、ゼロ点だね」
「ぐっ……! 減らず口ばかり……っ」
セーギ兄は負けじと腕組みして、オレに言う。
「将来を見据えてコツコツ真面目に努力することが、それこそ正義なんだ。そのためには無駄なことなんて一切省いて、若いうちから効率よく人生を生きなきゃ損なんだ」
「そんなこと言われても……」
セーギ兄はオレの顔を見る度にこうしてお説教をしてきてうんざりする。
言ってることは正しいのかもしれないけれど、今を楽しく過ごすことだって大事だとオレは思う。

あーあ。これじゃあ、なおさら憧れちゃうよなあ……勇護さんみたいな優しい兄ちゃん。
目の前で腕組みをしてむすっとしているセーギ兄を見る。
校則を遵守した模範的な黒髪短髪にピシっと伸びた背筋と、いつも\/の形に吊り上がった眉。
紳士服売り場のマネキンみたいに一番上までシャツのボタンを留めた、まるで刑務所の看守みたいなセーギ兄。

勇護さんとは比べるまでもないけど、オレはちょっとだけ優太に嫉妬していて...。
だって、オレだって、たまには、兄ちゃんに遊んでもらいたい……。
 
「あ、あのさ、セーギ兄……」
オレがさっきまでとは声色を変えてもじもじと呼びかけると、セーギ兄はぎょっとした顔になる。
「なんだよ、急にしおらしくして……。ああ、わかった。小遣いが欲しいんだろう? ダメだぞ、おれだって勉強のためにバイト辞めてカツカツなんだからな」
 
な…! そんな失礼な勘違いにオレは憤慨する。
「ち、違うし! たまには遊んでよって言いたかっただけだし! 前は映画とか一緒に観に行ってくれたじゃんかっ! バカバカバカっ!」
オレは勘違いしているセーギ兄の膝に飛び乗って、ポカポカと厚い胸板を叩いた。
「な、なんだよっ! 遊んでるヒマなんかあるわけないだろっ、こら、よせよっ」
「う~っ!」
オレはセーギ兄が止めるのも聞かず、ポカポカと自分より大きな体躯を叩き続ける。
「だあああっ! しかも膝に乗るなよっ! 股間っ、股間、踏みそうになってるだろ!」
セーギ兄はガリ勉のくせにわりと逞しい身体をしてるから、これくらいしても平気なはず。
「セーギ兄のバカっ! 勉強しててもバカっ!」
スネたままポカポカ叩いていた拳が、つい、セーギ兄のズボンの股間に偶然ポカリとヒットしてしまう。
「はぅ!」とセーギ兄が上を向いて叫んだ。
 
「おま、おまえ、そこは、ダメだろ……っ」
この世の終わりのように震えながら、セーギ兄は青い顔をしている。
「あっ、ごめん、つい……。じゃあ、ポカポカするのやめるから、遊んでくれる?」
「ふっ、そんな時間はない……あはぁあっ!」
返事に腹が立って、反射的にもう一度股間をペチンと叩いてしまった。セーギ兄は顎を上向けて再度情けない声を出す。
「ナオ、お前なぁ~~!!」
「ご、ごめん、つい! ここ? 痛い? ごめんってば」
申し訳ない気持ちを込めて、叩いてしまった股間の痛みが引くようにスリスリとそこを撫でてあげる。
「だ~~~~っ!? そ、そんなとこ撫でるな、馬鹿っ!」
「え、じゃあ、叩く?」
「叩くのも駄目だぁっ!」
なんか、いつもは見れないセーギ兄の慌てっぷりが面白くて、そのまま続けて股間を手のひらで軽くペチペチし続ける。
 
「はぅっ! あぅんっ! ぐぬっ! ぬぁぁあっ! そ、そこはっ、やめてくれっ、ナオ……っ!」  

息も絶え絶えに、目をぎゅっと閉じて赤くなった情けない顔で懇願してくるセーギ兄。
もちろん痛くはないように手加減してるけど、そろそろやめてあげよう……。
でも、なんかズボンがさっきよりもっこりしてる気が……。
 
「セーギ兄、もしかして叩かれてちんちん立たせたの……??」
 
「なぁぁあ!? たっ、勃つわけないだろ! そんなこと、あ、ありえないっ!!」
汗びっしょりでキョドキョドと挙動不審な態度になりながら、確実に膨らんでいるズボンの前をセーギ兄は誤魔化そうとする。
その時、階段の下からイカつい声が聞こえてきた。
 
「たでーま~~。おお~い、誰かタオル持ってきてくんね~か?」
この声は。
「あ、アク兄帰ってきた。セーギ兄になんか、もう頼まないもんね~だ!」
「あっ、おい、ナオ!」
セーギ兄の膝から飛び降りて、階段を駆け下りて玄関へ向かう。
 
そこには額からダラダラ血を流したスプラッターなコワモテの男が立っていた。
 
「ぎゃ~~! パパ~!またアク兄がケンカで殴られて帰って来てるんだけど~!」
思わずオレは叫んだ。
「うるせぇ、バイト帰りに一発貰っちまっただけだよ。でもしっかりぶっ飛ばしてきたから問題なし。なんだよナオ、オトコなのに血にビビってんのかぁ?」
土とか血で汚れた学ランを着崩したアク兄が僕を見てニヤリとバカにしたように笑う。
「だって、頭から流血したひとが帰ってきたら驚いて当たり前でしょ……」
オレが呆れ半分、心配半分でタオルを手渡すと、アク兄は豪快に怪我した額にそれを巻き付けた。
「わりーわりー。まだまだお子ちゃまなナオには、血まみれ上等ぶっかけバトルはシゲキ強すぎだよなぁ!だっはっはっ!」
どんなバトルだよ。
「それはお子ちゃまじゃなくてもシゲキ強すぎだと思うけど……」
粗暴な態度で豪快に笑っている、放課後を喧嘩とバイトに浪費するこのヤンキー崩れがオレのもう一人の双子の兄。名前は勝山明来(かつやま・あくる)。通称アク兄。
 
くすんだ金髪を逆立てて、耳に丸い金のピアス。
毎日の喧嘩と工事現場のアルバイトで鍛えた筋肉ボディに、これまたボロボロの学ランが引っかかってるって感じ。
真面目なセーギ兄とは正反対の、「力」にステータスを全振りしてるのがアク兄。
学校で色々あって、よく他校の生徒に絡まれるらしいけど、すぐ喧嘩に持っていきたがる悪癖を直して欲しい。

ああ、セーギ兄に引き続き、アク兄も勇護さんとの差は歴然だ。
  
「つーかよぉ、アク兄って呼ばれたらなんか悪人みてぇじゃねえかよぉ。アクはアクでも悪じゃねえ。今日に勝てば明日が来るで明来(あくる)! イカした名前なんだからよぉ」
「そうだね...今日頼んだら明日には配達してくれる通販会社みたいだね」
「そりゃアスクルだ」
 
オレはリビングのソファーで怪我の手当てをしてあげながら、アク兄にも頼んでみることにした。
「あのさーアク兄、お願いがあるんだけど……」
オレが両手を組んで上目遣いに言うと、アク兄はフッと笑った。
「おう、お前が何言いたいかわかったぜ」
「えっ、ほんとに?」
「その情けねえ顔みたらわかるっつうの……」
アク兄は照れ臭そうに鼻の下を指で擦る。
「気に入らねえやつ、代わりにボッコボコにしてほしいんだろ? いいぜぇ、言ってみろよ、同じクラスか? それとも他校のヤツらか?」
「ぜんぜん違う! そんなんじゃなくて、たまにはオレと遊んでよっ! 昔みたいに公園でキャッチボールとかさあ~っ!」
さっき手当したばかりの頭をポカポカ叩く。
「いたっ! だっ! ナオ、やめろっ! また血ィ出るだろ、ゴラァァ!」
アク兄はオレを背後から抱え込むと首に腕を回して、プロレス技をかけるみたいにグリグリとオレの体を締め上げた。
「ほ~れ、遊んでやんよぉ……!」
「うわあ~ん! こういうのじゃなくてぇ~っ!」
首を固定されたまま、もう片方の手で脇腹をコチョコチョとくすぐられる。
「あはははははははっ! やだやだ、やめ、あははっ! もうっ、ギブっギブっ!あははははは!」
アク兄のゴツゴツした指の小刻みな動きに、体がぞくぞくして反応してしまう。
「へへっ、おとなしくしやがれ……っ」
さらにコチョコチョを激しくするアク兄。
「わはははっ! まってまってっ、うはははっ、あははははっ!」
なんとか手の動きを止めたくて、オレはとっさに……首に巻きついたアク兄の太い腕にガブリとかぶりついた。
「ぬぉおっ!?」
予想外の反撃にアク兄が変な声を上げる。
「んぐうぅ~っ、あぐあぐ……っ」
鍛え上げられた分厚い二の腕に小さな口で噛みついても、アク兄には痛くもかゆくもないだろうけど。それでも抗議の意を込めてオレはかぷかぷとアク兄の腕を食んだ。
「んなっ、こら、うひゃ、くすぐってぇ…っ!」
今度はアク兄が身をよじるけど、オレはやめてあげない。
「ううぅ~っ! 遊びに連れてってくれるなら、離してあげる……!」
硬くて浅黒い腕をハムハムしながらアク兄の顔をちらりと見ると、やたらに情けない表情をしていた。
「わーった!わーったから、その、甘噛みすんのやめろやぁ……っ!」
その時、オレのお尻の下のアク兄の股間が、ぐぐっと硬くなった。
「あれ? アク兄、今ちんちん立った?」
「なっ……!! んなわけあるかっ! 硬派な漢(オトコ)は勃起なんかしねえんだよっ!」
かぁっと赤面したアク兄が、無理やりオレを引き剥がして誤魔化すようにタバコを吸い始める。だけど。
「明来! ナオの前でタバコなんか吸うんじゃない!」
鬼の形相のパパに速攻で怒られていた。
それでアク兄はメチャクチャ不機嫌になっちゃって、お願いするような雰囲気ではなくなってしまった…。

オレはくすぐられてヨレヨレになった服を直しながら、暗い気持ちになった。
ち、違う…。こうじゃない…。
構ってほしいって、こういうことじゃない…。
もっとこう、優太のところみたいに平和に仲良くしたいのに……。
 


「……で、どうしてナオがこんなにスネてるのか、誰かパパに教えてください」
エプロンを付けたままのパパが「はぁ~っ」と盛大なため息をついて言う。
オレとパパ、そして双子のセーギ兄とアク兄。
男ばかりの家族四人で囲む食卓はいつもよりも重苦しい雰囲気に満ちていた。
理由は簡単で、オレが最大限にほっぺたを膨らませて、ご飯に手をつけないからだ。
「パパ! オレもっと優しい兄ちゃんが欲しかったっ! セーギ兄はユーモアゼロでつまんないし、アク兄は野蛮すぎだし!」
ここぞとばかりに訴える。
「なんだなんだ、そんなにぷんすこして。ナオは反抗期なのか?」
パパが慌てて兄たちを見る。
「父さん、真に受けるなよ。ナオがワガママ言ってるだけだ」
セーギ兄はオレの顔を見もせずにパクパクとおかずを口に運んでいる。
「そーだそーだ、なんか話聞くとよォ、やれ映画連れてけとか、やれ公園連れてけとか、俺らは忙しーんだっつぅの」
アク兄も、オレの話なんかどうでもいいとばかりにガツガツと口に食べ物を詰め込む。
二人のその言いように、オレはさらにムスッとして頬を最大限に膨らませた。
「ああ、なるほど。ナオは寂しいんだな。じゃあたまにはパパとお出かけしようか」
パパが笑顔で言ってくる。その提案も嬉しいんだけど……。
「オレは、兄ちゃんと行きたいの!」
「えぇー……」
ショックを受けて項垂れるパパ。
うぅ……ごめんね。
でも今は、兄ちゃんたちにオレの気持ちをわかってもらいたいんだ!
 
「だって、優太のところの兄ちゃんは、すっごいかっこよくて優しいんだよ。お休みの日は色んなところ連れてってくれるらしいし、仕事帰りにオシャレなケーキも買ってきてくれるし、それに全然怒ったりしないし!」
オレは諦めずに抗議を続ける。兄二人をじろりと見やると、二人ともフッと不敵に笑った。
「ほー。その優太くんとやらは、きっとナオみたいに口が悪くなくて、人の股間をむやみに叩いたりしない礼儀正しい子なんだろうなあ」とセーギ兄。
「そうだそうだ、たぶんナオとは違って、人の腕を齧ったりしない大人しいイイ子なんだろうぜぇ、だっはっは!」と笑い飛ばすアク兄。
 
ぐぬぬ……!!!! 
セーギ兄とアク兄の反論に言い返せない悔しさに、オレは震えた。
確かに、オレが勇護さんと自分の兄を比べるのと同じで、オレと優太を比べるとこちらもまた、弟としては劣る部分がある……気がする……。
セーギ兄とアク兄が「理想の兄」じゃ無いように、オレもまた「理想の弟」では無いということに気が付いてしまった……。
 
ちぇっ、なんだよ……。
優太みたいな、純粋で素直な弟だったら、オレだって兄ちゃんたちに可愛がってもらえたのかなぁ。
 
「…………うぅ」
そう考えると……なんだか勝手に涙が出てきて……。
「お、おい、ナオ!? 星義、明来、お前たち謝りなさい!」
パパがオレの涙を見てあたふたと慌て始める。
セーギ兄とアク兄も、バツの悪い表情になってうろたえている。
「まあ、よそはよそ、うちはうちであるからして……」
「お、オトコなんだからそう簡単に泣くんじゃねぇよ、ったく……」
しどろもどろの兄二人の言葉。
二人とも、別にオレのことなんかどうでもいいんだ。
そう考えると一層たまらなくなって、胸の中のモヤモヤが膨れ上がって、さらに涙が込み上げてきた。
でも。
オレは優太みたいに可愛くないから、素直に泣かされて終わるなんて出来ない。

衝動のままに、オレは大きく息を吸い込んで。

そして叫んだ。

「セーギ兄とアク兄のバカ~~~~~っ!! オレ、知ってるんだからな……っ! こうなったらバラしてやる~っ!」
席を立ち上がるオレに、三人が注目する。

「セーギ兄もアク兄も、部屋で一人でエッチなことばっかしてるくせに~~~っ!!」

…………。

「「「え………」」」

兄二人と父がぽつりと声を漏らした…。

みんな、突然のオレの暴露に石化したように固まる。
 
「セーギ兄はいつも部屋に入ると慌てふためきすぎ! 読んでたエロ本、参考書の下にとっさに隠してるのバレバレだから!!」
石化していたセーギ兄の顔にビシッと亀裂が入る。

「アク兄の部屋はいつも湿ったティッシュがそのまんま転がってて匂いヤバすぎ!今着てるその服まで変な匂いしてるから!!」 
同じく石化していたアク兄の顔にも、ビシッと亀裂が入る。

普段からセーギ兄は真面目ぶって、アク兄は硬派ぶってそういうスケベな部分を隠していたので、二人ともこれは効いたに違いない。
 
「二人ともエロいことする時間あるんならちょっとくらいオレと遊んでくれてもイイじゃんかぁ~~っ!! この二卵性スケベ双生児~~!!」
 
オレが言うだけ言って、部屋に駆けてこうとするのをパパが止める。
「な、ナオ、待ちなさい……! そういうデリケートなことを思春期の二人に言うのはだな…!」
「いやパパだって、ジャケットのポケットにエッチなお店の会員証入ってるの知ってるから」
「えっ」
パパも一瞬で石化して、顔にビシッと亀裂が入る。
 
「うわあ~~ん! このスケベ家族どもが~~~!!!」
オレは泣き叫びながら部屋に駆け戻ってドアをパタンと閉めた。
 
食卓には、ずーん、と落ち込んだ兄二人とパパ。

「参考書じゃなくて、エロ本広げてたのバレてたか……」とセーギ兄。
「俺、イカ臭いおかげで今までケンカ勝ててたんかな……」とアク兄。
そして涙目のパパ。
「ぐすん……パパは完全に二人の流れ弾だよ……」
 

オレは自分の部屋のベッドで布団を思い切りかぶる。
「うっ……ううっ……」
つい、感情のままに色んなことを叫んでしまったけど……兄ちゃんたちやパパのことが本当に嫌いだったりするわけじゃない。
ただ、ほんのちょっと構ってほしかっただけだ。

オレは部屋に飾ってある、古びた戦隊ヒーローの人形を眺めた。
小さい頃から好きだった、絶頂戦隊イクンダーのレッドのビニール人形。その隣には、悪役のデカマラー魔王の人形もある。
オレの数年前の誕生日に、セーギ兄とアク兄がプレゼントしてくれたものだった。
ヒーローの人形だけじゃなくて、悪役の人形も付けてくれたのはアク兄らしい。

ベッドから抜け出て、その二つの人形を手に取る。
ヒーローごっこするみたいに戦わせて、前はよく兄ちゃんたちとオレの三人で遊んだっけ……。
 
オレはベッドに寝転んで、想い出を手繰りよせるように目を閉じた。

テレビ番組の中で勇敢に魔王と戦うイクンダーを真剣に見つめるオレ。その両隣に兄ちゃん二人が座っていて、オレのことを見守ってくれている。
「ナオは本当にヒーローが好きだなあ」
セーギ兄が感心したように言って、
「でもこの悪の魔王ってのも、俺はシビれるけどな」
イクンダーの宿敵、デカマラ―魔王を指さしてアク兄が言う。
「ナオはタスケテ君にそっくりだな」
毎回敵の幹部にさらわれる役の、イクンダーの友達の田介亭(たすけてい)アキラくんのことだ。
「そうだな、カワイイところがそっくりだ」
「いや、ナオの方がカワイイぜ」
そう言って優しく笑う兄ふたりにわしゃわしゃと頭を撫でられて嬉しかったことを覚えている。
「よし、ナオ、よく見てるんだっ。おれがイクンダーだッ!」
セーギ兄が立ち上がって、丸めた新聞紙の剣を構える。
「じゃあ俺はデカマラー魔王だぜっ。おらおら~っ!」
アク兄も触発されて立ち上がり、ファイティングポーズ。
そのままポカポカとじゃれ合う兄二人に声援を送るのが、あの頃の、オレの役目だった。
セーギ兄のイクンダー、アク兄の魔王、どっちも負けて欲しくなくて、笑いながら二人ともを応援していた。
すぐに騒ぎを聞きつけたパパがやって来て、「三人とも何してるんだ~?」と困り顔で聞いてくる。
すると二人はいつだって笑顔でこう答えるのだ。
「「三人で、遊んでるだけ~~!!」」

そうやって、三人で仲良く遊んでた頃に戻りたいだけなのに……。
「はぁ………」
思わずため息が出た。
それってもう無理なのかな。
目を閉じると、そのままオレは睡魔に負けて眠ってしまった。




深夜の食卓にて。
セーギ兄とアク兄が二人で深刻そうな話をしている。
「ナオは一体どうしたもんかな……。やっぱり母さんがいない分寂しいんだろうが……」
ため息をつくセーギ兄に、鼻をほじっていたアク兄が閃いた顔をする。
「あのよぉ、俺にイイ考えがあんだけど……ほら、明日ってアレだろ、ハロゲンだろ?」
「ハロウィンな。それじゃヒーターだろ……。で、どんな考えだ?」
「つまりよぉ、突飛なことしても許される日ってことだぜ。いいか?まず……」
大柄な男二人が肩を寄せ合ってヒソヒソ話をする。

「……なるほど! よし、その線で明日はナオを楽しませてやろう…!」
「腕が鳴るぜぇ…!どっちの方がナオが気に入るか、勝負だからな!だーっはっはっはっ!!」
「望むところだ、おれは負けない! はっはっはっはっ!」
深夜にも関わらずバカ笑いしあう二人。
そんな兄二人の思惑も知らず、オレはその頃スヤスヤと眠っていたのだった…。

こうして、ハロウィン前夜は更けていった……。


 
次の日、オレは兄ちゃんたちと顔を合わせる前に家を出た。
さすがに気まずくて、まだ普通に話せる気分じゃなかったから…。
学校では優太とハロウィンの話題になった。
「今日、ハロウィン当日だけどナオくんは仮装とかするの?」
「しないしない。ウチはハロウィンとか毎年なんもしないんだよ」
「そうなの? まあ、僕のところもそうかも」
「でも勇護さんなら、どんな仮装でも着こなせそうだよな~」
簡単に思い浮かべるだけでも、ドラキュラとか狼男とか、イケメンの定番ハロウィン衣装も勇護さんならきっとぴったりだ。
うちの兄ちゃんたちは……何が似合うか想像も浮かばないや。
「ナオくん、なんか元気ないね」
心配そうな顔を向ける優太に、ギクリと心臓が跳ねた。
「えっと……わかる? 実は昨日、兄ちゃんたちと色々あって……」
「そうなんだぁ。僕もお兄ちゃんとケンカするときあるよ」
「えっ、優太もあるの?」
「もちろんだよ~」
「そういう時、優太ならどうする??」
優太はうーんとあごに指を当てて。
パッと笑顔で言った。
「お兄ちゃん、ごめんね~って言って、ぎゅって抱きつくかな♡」
「ぜ、絶対できない………」
無邪気な顔の優太に、オレは苦笑いを返すしかなかった。


家に帰ると、兄ちゃん二人もパパも、まだ誰も帰ってきていなかった。
洗濯物を取り込んだり、お皿洗いを終わらせてから一人でおやつを食べて、部屋に戻る。
兄ちゃんたちが帰ってきたら……昨日のこと、二人に謝らなきゃ、だめだよな……。
棚に飾ったイクンダー人形と魔王人形を見ると、素直にそう思えた。
人形たちを手に取って、ベッドに横になる。

イクンダーとデカマラー魔王。
二つの人形を右手と左手でコツコツと戦わせてみる。
この二つの人形を見ていると、どうしてもセーギ兄とアク兄に重ねて見てしまう。
正反対だけど、どちらも異なる魅力があるところが二人に似ているんだ。
それはセーギ兄にも、アク兄にも、それぞれいいところがあるってこと。
勇護さんや他の誰かとは違う……二人だけのいいところがあるって、本当はオレもわかってる。
でも、どうしてか素直になれなくて…。

「……生意気な弟でごめんね」

人形たちを兄ちゃんたちに見立てて呟いてみる。

「ほんとはもっと、素直ないい子になりたいんだけどさ……」

本人に言えなくても、人形にならこうして言える。
そうするだけでも、なんだか気持ちがスッとした。
「セーギ兄、アク兄……。二人とも、オレのこともう嫌いになっちゃったかな……」
人形の顔をマジマジと眺める。
「オレは、ほんとは、その…………」

それ以上は気恥ずかしくて、人形相手にも言えない。
けど。
そういえば、幼稚園の頃はよく、兄たちの頬にふざけてチューしたりしてたっけ。
それを不意に思い出して……。

「………………ちゅっ」

オレは、人形の頬にちゅっと口付けた。

唇に触れる、柔らかい感触に頬が一気に熱くなる。
こんなこと、本人たちには絶対に出来ないなあ。

「わーっ恥ずかしいっ」
赤面したまま、ベッドにもぐりこんで目を閉じた。

そのまましばらくはもじもじしていたが、知らない間に心地よい眠気が襲ってきて……。

オレの意識は、甘い暗闇に溶けていったのだった……。





🎃どちらの人形にキスをした?🎃


イクンダー人形にキスをした 
→→→→ 【勝山 星義ルート】へ続く
 

デカマラー魔王人形にキスをした 
→→→→ 【勝山 明来ルート】へ続く


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蔵屋
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漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
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どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

水泳部合宿

RIKUTO
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とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

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Kokonuca.
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ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
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ダメリーマンにダメにされちゃう高校生の話

タタミ
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高校3年生の古賀栄智は、同じシェアハウスに住む会社員・宮城旭に恋している。 ギャンブル好きで特定の恋人を作らないダメ男の旭に、栄智は実らない想いを募らせていくが── ダメリーマンにダメにされる男子高校生の話。

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