十秒探偵ナポレオン＆トモロー 写楽の正体を暴け！

東洲斎写楽

北斎

『いやァ、主に画材だよ』


「画材？」


『そうさ。当時は西洋の画材はバカ高くて、普通じゃァ手に入らなかったんだよ。特に油絵の具とかねえェ』



「ああァ、そうなのか」

『なにしろ絵を描くために生まれてきた男だからね。いくら高くても西洋の画材が欲しくてたまらないんだよ』　

「はァ、子どもみたいな人だったんですね」



『ああァ、それで借金を精算するために、北斎は蔦屋重三郎の言いなりになるしかなかったんだ』


「それで、写楽を？」

『そうさ。覆面浮世絵師、東洲斎写楽の誕生だよ』



「ううゥ……」
『だけどこれは蔦重と北斎の二人の思惑が合致したんだよ』

「思惑？」



『そう、北斎は常に新たなモチーフを模索していたんだ』


「モチーフ？」

『それが写楽だよ。北斎はほとんど役者絵を描かなかった。だから北斎は役者絵が嫌いだったと言う評論家がいたんだ』


「はァ北斎は役者絵を描かなかったの？」



『ああァ、ほとんどね。だけど、北斎は写楽として十ヶ月の間に百四十点も役者絵を描いたんだ。もう飽き飽きして、役者絵を描きたくなかったんだろうね』



「はァ、なるほどねえェ」