魔眼持ちの伯爵家当主(旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢)

ロシキ

文字の大きさ
60 / 65

60話

しおりを挟む
私はアリアの家で氷漬けにした男が、学園に居ることに、若干顔を歪めてしまった。

「馬鹿な、なんでここに居る?不法侵入でもしたの?」

「魔眼所持者2人を相手に、騒いでいた馬鹿ですから、やりかねないかと」

「あ、いえ、ガイは商会の次男でして、学園に入学してたんです。
特別優秀ではないですし、お貴族様でもないので、下級クラスらしいですけど」

私はアリアの言葉に成る程と納得した。
学園には大まかに分けて、3つのクラスがある。

上から、『お披露目会』を終えた高位貴族の子供や虹色以上の魔眼所持者が入れられ、各学年に一クラスしか無い、上級クラス。

次に、上級クラスで酷い成績を取った高位貴族や『お披露目会』を終えた下位貴族の子供、赤色と紫色の魔眼所持者に『大人の日』を終え入学した平民の中でも特別に優秀な者が入れられ、各学年に二~四クラス(入学者の人数によって変動)の中級クラス。

最後に、中級クラスで酷い成績を取った者や1代限りの貴族、白色と青色の魔眼所持者に学園に『大人の日』を終え入学した平民(商会の子供が主な対象)が入れられ、各学年に三~六クラスの下級クラスとなっている。

因みに、中級クラスと下級クラスの呼び方は中級ー1クラス、中級ー2クラス、下級ー1クラス、下級ー2クラスと段々数が増える形で区別される。
しかも、中級クラスと下級クラスは、順当に上からの成績順でクラスが振り分けられる。

なので、貴族家の大部分(数的な意味で)が振り分けられる中級クラスでは成績発表時には、阿鼻叫喚と聞く。
時たま、貴族の子供が無様な成績を晒して、家から追い出されるとかも聞くので、中級クラスの人間に取っては忌々しい制度なのだろう。

その点、上級クラスの人間は学年首席しか発表されない上に、余程酷い成績を取らなければ中級クラスに落とされることもない。
これだけで上級クラスは優遇されている事が分かるが、上級クラスでの成績発表は下手をすると中級クラス以上に荒れるので仕方無い面もある。


かなり話が逸れたものの、学園のクラスは以上の3つに分けられ、学ぶ内容や難易度が変わる。
例えば、平民に高位貴族が学ぶ様なマナーの講義は必要無いし、逆に高位貴族に平民が学ぶ様な貴族様に対する礼儀作法の講義は必要無い。

この様にクラスによって学ぶ内容が変わる事から、成績基準はクラス毎で異なる。
その為、成績が張り出される際にはクラス毎で行われ、学園の入学式や卒業式等で発表される学年首席は上級クラスから出されている。
ただし、上級クラス以外のクラスからは、クラス首席という形で中級クラスなら中級クラス全体で、下級クラスなら下級クラス全体で、クラス首席は表彰されるらしい。

何故、私が『らしい』と言っているのかというと、その表彰を見てないからだ。
学年首席は、国王や貴族達の多くが参加する入学式や卒業式等の行事で、全体に話す事がある。

その様な機会が、高位貴族以外の子供に耐えられるだろうか?
答えは否である。

もちろん、全体のクラスを無くそうという動きもあったらしいが、その度に下位貴族や商会の子供が、国王や貴族達の前に出て話せるかが問題になる。
問題になるものの、やってみようとなるなら良いが、やってみて失敗したら洒落にならない。
失敗でもしたら、文字通りに失敗した人間の人生が終わる。

この様な事から、この様な事情を知らない下位貴族や無知な商会の人間からクラスを統一して欲しいとの声があっても、統一されないのだ。

少し話が逸れたが、何が言いたいかというと、上級クラスの私やフィーナ、そのお付として学園にいるアリアと、下級クラスの男では確実に会う機会がない。
流石に魔眼所持者関係の講義は合同講義となる事から、私達の場合は合計3クラスで講義を受ける為、顔を合わせる機会もある。

しかし、それだって下級クラスとは合同ではやらない。
上級クラスの学園生が関わりを持つのは、合同講義で一緒になる事がある中級ー1か2クラスまでが精々と言える。


そんな絶対的に関わりようの無い男が、こちらに声をかけてきた時点で、要件は分かっていた。
しかし、私にも面子というものがあるので、無視しつ教室に向かおうとした所で、男は私の前に回り込んできた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

溺愛兄様との死亡ルート回避録

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 魔術と独自の技術を組み合わせることで各国が発展する中、純粋な魔法技術で国を繁栄させてきた魔術大国『アリスティア王国』。魔術の実力で貴族位が与えられるこの国で五つの公爵家のうちの一つ、ヴァルモンド公爵家の長女ウィスティリアは世界でも稀有な治癒魔法適正を持っていた。  そのため、国からは特別扱いを受け、学園のクラスメイトも、唯一の兄妹である兄も、ウィステリアに近づくことはなかった。  そして、二十歳の冬。アリスティア王国をエウラノス帝国が襲撃。  大量の怪我人が出たが、ウィステリアの治癒の魔法のおかげで被害は抑えられていた。  戦争が始まり、連日治療院で人々を救うウィステリアの元に連れてこられたのは、話すことも少なくなった兄ユーリであった。  血に染まるユーリを治療している時、久しぶりに会話を交わす兄妹の元に帝国の魔術が被弾し、二人は命の危機に陥った。 「ウィス……俺の最愛の……妹。どうか……来世は幸せに……」  命を落とす直前、ユーリの本心を知ったウィステリアはたくさんの人と、そして小さな頃に仲が良かったはずの兄と交流をして、楽しい日々を送りたかったと後悔した。  体が冷たくなり、目をゆっくり閉じたウィステリアが次に目を開けた時、見覚えのある部屋の中で体が幼くなっていた。  ウィステリアは幼い過去に時間が戻ってしまったと気がつき、できなかったことを思いっきりやり、あの最悪の未来を回避するために奮闘するのだった。  

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...