剣士アスカ・グリーンディの日記

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第4章 貴方へ愛の言葉を

アタフ

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看守長ゲーベルドンは、消えた囚人バルケーの捜索を看守数名に指示した。



囚人部屋の壁や床を調べ、




そして、カインハッタ牢獄内の通路も脱出経路が隠されていないか、確認していた。



僕と一緒にこのアメリディロ島に来た護衛のウイプル兵1人だけを、まだこの島に残していたけど。


港町ゲヤローフからの迎えの船が今日、アメリディロ島にやって来る。


このカインハッタ牢獄の現状を、国王に報告してもらうためだ。






看守達に、看守や外の番兵以外で、僕の様な者がここに配備された事はあるのかと訊いてみた。



全くいないわけではないけど、随分前の事で、覚えてはいない、と。





季節感がない島がそうさせるのか。





そういえば、ウイプルには、季節感があっただろうか。超高度の山岳に囲まれている事もあってか、冷気などあまり入ってこない様に感じる。



極端に暑いと感じる事もあまりないな。





遥か北の大陸には、白い雪が降っているのに。






でも、時が過ぎ、咲く花は変わる。季節感は、あるんだろう。











囚人部屋001の囚人は、今日は陽気な表情を浮かべている。







何を楽しそうに笑っているんだと思ったけど、すぐに僕にとって、それは望ましい光景だと気がついた。







二重人格者の男だ。








私を見つめて、笑っていた。









アタフだ。






彼は、僕に何かを語ろうとしていた。





陽気で口の軽いアタフ。





その二重人格は、生まれつきのものか?







それとも、何かの強い精神的圧迫で生まれたものか?








例えば、このカインハッタ牢獄で。










それは、ただの憶測に過ぎないか。











僕は鉄の戸にある小さな格子状の窓から、彼を手招きして呼んでみた。






少し声をらして笑い、僕に近づいてきたアタフが、最初に伝えてきた言葉。






その言葉。








事は重大だ。








僕はアタフに静かにする様にと、また聞かせてほしいと、伝えたんだ。






バルケーの姿が見えないと気づいたのなら、看守や外の番兵でもいい、カインハッタ牢獄だけじゃなく、アメリディロ島全体に捜索を出すべきなのに。





それを指示している様子がない。







カインハッタ牢獄で、僕の目につく範囲だけの捜索。








それも、危機感というものも伝わらない単純な作業の様に見える。








違和感はあった。








今日、ウイプルに戻っていくウイプル兵1人に、僕からのお願いを国王に伝えてほしいと、言った。









何が目的なんだ。









アタフの言った言葉は、一言。










別の者にすり替わってる、と。









ジスマリアの18日
     カインハッタ牢獄内にて
___________





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