AZ雫over drive

sayure

文字の大きさ
40 / 41

ラーメン屋さん

しおりを挟む
「聞いてくれ、智樹。僕は昨日、弘前駅前にあるラーメン屋に行ったんだ」



「ああ、あそこのラーメン屋うまいらしいな。それで、どうだった?」



「昨日、僕は誕生日だったんだぞ」



「それは一大事だ。悲しいお話じゃないか。泣けるな」



「いや、その頼んだラーメン。実はここだけの話…麺が入ってなかったんだ」



「店員のボケもそこまで振り切っているのなら、むしろ気持ちがいいな。それで、お前はどうした?」



「仕方がなく、汁をすすったさ」



「バカかお前?バカのレベルが横並びじゃないか。何で、麺が入っていないって、店員に言わないんだよ!?」



「言っても仕方がなくないか?」



「言わなきゃ、仕方がなくないか?お前、汁を飲みに店に入った訳じゃないだろう。目的を思い出せよ」



「汁を飲みに行った」



「じゃあ、問題ないな。ミッションコンプリートだ。需要と供給が重なり合った奇跡の瞬間じゃないか」



「麺がないんだぞ?」



「麺が入っていたら、むしろ一大事じゃないか。お前は汁を飲みに行ったんだからな」



「でも、ラーメン屋だ」



「ラーメン屋でも、ラーメンしか頼めない訳じゃないからな。汁を飲みに行ったお前だ、麺なんか気にするな」




「頼んだのは、味噌ラーメンだ」



「スープを飲みに行ったお前が、しっかりラーメン頼んでるじゃないか。じゃあ、始めからそう言えよ」



「でも、麺なんておまけにしかならない」



「そうか。親切なラーメン屋じゃないか。お前がわざわざラーメン屋に行って汁だけ飲みたがる奇怪な存在と理解して、始めから麺を抜いておいてくれたんだ」



「今度からお前の通いつけの店は、その店一択で決まりだ」



「だけど、俺もたまには麺を食べたい時がある」



「昨日は、その麺を食べたい時だった訳じゃないだろう?」



「入っていないのがわかると、急に食べたくもなるものさ」



「いい感じに面倒臭い奴だな。じゃあ、麺が入っていたら、ちゃんと食べるのか?」



「その麺は、一本も口にくわえる事なく残すだろうな」



「キチガイ参上って感じだな。さては、ラーメン屋が潰れまくっているのは、お前のせいだろう?」







『麺と汁』…完



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...