化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏

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第2章 ライオン☆ハート

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「あら、優斗ゆうとくんいらっしゃ~い! あなた、成績優秀で学年トップなんですってね? 美玲みれいからよく聞いているわよ~。これからもあの子と仲良くしてやってね!」

 家にくなり、ママさんが玄関から飛び出してきた。ぼくの助言じょげんのすぐあと、もえちゃんに借りた携帯電話で、美玲みれいちゃんが家に連絡をしたからだ。
 ママさんはみんなをかき分けるようにして、一番うしろにいた優斗ゆうとくんの両手を握ると、引っぱるようにして家の中へまねき入れた。

「あら、もえちゃんもいるのね。いらっしゃい」

 それからもえちゃんにそっけない挨拶あいさつをして、とても小学生とは思えない、大きな体のチャーシューを見上げた。

「あなた、どなた?」

「となりのクラスのかおるくんです。同級生なんですよ、そうは見えないでしょうけど……」

 あわててもえちゃんが紹介すると、チャーシューはていねいにお辞儀じぎをしてから家に上がった。

 最後に家に上がろうとしていた美玲みれいちゃんの腕をむんずとつかんで、ママさんがたずねる。

「あのかおるくんって子も、お婿むこさん候補こうほなの?」

「はあ? ただの友だちだけど。それもごく短期間の」

「そうやって油断ゆだんしてると、いつのまにか仲良くなっちゃうのよ。ママみたいにならないよう、気をつけなさい!」

 美玲みれいちゃんはため息まじりでその手をふりはらうと、小声でママさんにたずねた。

「そんなことよりママ、わたしの部屋、片付けておいてくれた?」
 
「ばっちりよ! 将来有望ゆうぼうな、美玲みれいのお婿むこさん候補こうほが、いらっしゃるんだから~」

 ママさんは急いで家に上がると、みんなをリビングにまねき入れた。お茶を用意してくれているらしい。

 ママさんは美玲みれいちゃん以上に、優斗ゆうとくん獲得ゲットに燃えているようだ。




「これを見てほしい」

 リビングでママさんご自慢のパンケーキをいただいたあと、みんなで美玲みれいちゃんの部屋に移動して、緊急ミーティングが開かれた。
 いつになく小綺麗こぎれい美玲みれいちゃんの部屋に、いつになく真面目まじめなチャーシューの声がひびく。

「これは一九九八年、イギリス郊外こうがいの、とあるはい病院で撮影された心霊映像や」

 チャーシューが持参じさんしたノートPCの画面には、暗視あんしカメラで撮影したのであろう、緑色のモノクロームな陰影いんえいだけで撮影された病室が映っていた。

 画面中央のパイプベッドのまわりに、やぶれた間仕切まじきりカーテンががっている。画面下のカウントは進んでいるのに、病室の映像は静止画せいしがのように変化がない。


「これがなに? どうかしたの?」

 と、美玲みれいちゃんが言った瞬間、映像が急にみだれて、天井に変わった。

 バチっとはじけるような音が、ときおり聞こえてくる。

「わかるか? カーテンはれていなかった。風もないのに、カメラが倒れたんや……。ちなみにバチバチいうとるのは、霊がいるときに聞こえる、ラップ現象という音や」


「きゃああ。コワい~」

 もえちゃんがわざとらしい悲鳴ひめいを上げて、優斗ゆうとくんの腕に抱きつく。

「まだまだ、おどろくのは早いよ。問題はこの後さ」

 いつになく不自然なしゃべり方でチャーシューはそう言うが、動画はずっと病室の白い天井を映したまま、変化がない。


「どこよ、どこどこ?」 

 美玲みれいちゃんをはじめ、優斗ゆうとくんやもえちゃんまでが画面に顔をよせたとたん、とつぜんカメラに何かが落ちてきたのか、画面がくろになった。


「ぎゃあああああっ!」


 さっきのかわいい悲鳴ひめいとは、まったくちがう声音こわねをあげて、もえちゃんがのけぞる。

「髪の毛だ。長い髪の毛がカメラにおおかぶさってきたんだ……」


 優斗ゆうとくんも気味悪きみわるそうに口をおさえて、画面から目をそむけた。


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