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第四章 熟さぬ果実
第三話 緑の果実 ※
しおりを挟む手際よく火をおこし、枝に縛った野ウサギを丸焼きにしていく。ルーカスが火の番をしている間、ブライアンは木の実の採取へ。袋いっぱいに詰められた木の実の一つを石ですり潰す。
そして肉汁が浮かび始めた肉にそれをかけた。
「香辛料か」
「はい」
「その大きな果実は何だ?」
袋から覗く、レモンの様な緑の果実。見た事が無かった。
「これはデザートです」
「詳しいのだな」
「父は農業を専門としていますからね。色々教えてもらいました」
火に照らされたブライアンの横顔が急に曇る。ルーカスも同じ心配事を抱えていた。
「ダラムは大丈夫だろうか」
ブレジストン家に遣えている農奴で、ブライアンの父ダラム・マーク。主人が疾走した日に息子も消えたとなれば、疑いの目は向けられる。
「逃げていると思います。父は気が付いていましたから」
投げ入れられた木の枝が炎に吸い込まれ火力を増す。
「奥様が出て行くのも、旦……ルーカスが出て行くのも、勿論貴方と同じ時に私が何処かへ行くのも気が付いていました」
ダラムとブライアンが住む小屋は裏口にある。気が付かない方がおかしいだろう。そして新月と満月に決まって出て行く息子に不信感を抱かないわけがない。
「気苦労をかけたな」
「好きにしろと言われました。それ以外は何も」
「寡黙なダラムらしいな」
良い塩梅になった肉を火からおろし、ルーカスが短刀で切り分けて行く。それを大きな葉に乗せ、久しぶりの食料に口をつけた。
「なので私も、もしもの事があれば逃げて欲しいとだけ伝えました。私が稼いだ金は償いと感謝の意味も込めてほとんど父に与えていましたので」
「寡黙な所が親子そっくりだ」
「父もルーカスに感謝していました。貴方が来てから農奴にも給料が支払われるようになった。本当にありがとうございます」
大したことではない。
だが自分のしてきたことが、誰かの幸せにつながっていたのはとても嬉しい。その気持ちをどう表現していいか分からず、ルーカスは黙って肉を食べ進めた。
久しぶりの食事は保存食分だけ残し、あとは骨だけになった。骨も何かに使えるかもしれないとブライアンは葉にそれを包む。
その後、再び人間の臭いがしない風上に罠を仕掛け、ようやく寝るまでにこぎつけた。
「そういえば、これはまだ食べないのか?」
ルーカスが緑の果実に視線を送った。色からして熟しているようには思えない。
ブライアンがそれを一つとり、指を皮に押し付けた。微量の飛沫を漏らしながら果実に裂け目が出来る。そこからゆっくりと果汁が零れだし、甘い香りがする。
しかし柑橘系の果汁とは違い、ドロリとしていて白濁色だ。
「女性が肌の保湿の為に使用する顔料です」
食べ物でない事を告げるブライアン。
「しかしデザートと言ったではないか」
「ええ、デザートですよ。食べますか?」
どこか不敵な笑みを浮かべるブライアンと、結局のところ食せる顔料なのかと疑問が沸き、溢れる好奇心が抑えられなかった。
「食べる」
「分かりました」
立ち上がり、ルーカスの目の前に座ったブライアン。そしてベルトに手をかけた。
「?!」
ルーカスは本能的に腰を引いてしまう。そしてますますその果実の用途がわからなくなった。
「滑りやすくしないと、貴方まで痛い思いをしてしまいますから」
何を滑りやすくするのか分からず呆気に取られていると、その隙をついて下半身に纏っていた物を全て剥ぎ取られた。
そして、ルーカスの雄に果汁が垂らされる。そして、それをブライアンが広げ始めた。
案の定、見た目通りの音を鳴らす液体。グチュリと鳴り、少し冷たいが次第に体温で温かくなっていく。
「なるほど。デザートとはそういうことか」
「はい。やっとありつけますね」
まさか食べ物ではなく、自分自身を比喩されていたとは思わなかったルーカス。
そして今か今かと待ち望んだが、一向に後ろの秘部には触れられない。
ルーカスも男同士のやり方はなんとなく知っているし、いつか肉体で繋がりたいとも思っていた。
そして抱かれるのは自分だと勝手に思っていたが、ブライアンは違ったようだ。
「少し準備しますのでお時間を下さい」
と、結局ルーカスの秘部には指一本触れずに、自身のズボンに手をかけた。
「俺が挿れるのか?!」
「勿論です」
「ダメだ! そんな激痛を君に与えられるわけないだろ! 俺に挿れろ!」
と、果実を奪う。割れ目からドロリと出た液体が指を伝っていく。その指を自身の秘部へあてがったが、ブライアンにその手を取られ押し倒された。
「譲れません。お願いです。私を抱いてください」
「俺も譲れん! 俺を抱け!」
「かなりの痛みを伴います」
「やってみなければ分からないだろ」
強い意志の籠った瞳がブライアンに向けられる。
「困ったお人だ」
溜息を零しそうになりながらブライアンは顔をルーカスの股間に埋めた。
ルーカスはブライアンが諦めたと思った。
しかし……
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