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ジュライヘ
その12
しおりを挟む「冒険者の皆様、おつかれさまでした。我が商団はここで3泊した後、サンド=リヨンへと向かいます。3日後の朝にまたこちらに集合という事でよろしくお願いします」
ジュライの門を抜け街中へ入ったことろで、商団《キャラバン》の長ジャスティンが冒険者達に言う。
そして冒険者達は、各々自分の荷物を、街へと消えていった。
ここはジュライの街中…商団は極めて順調に到着したので、昼までまだもう少しある。
今からどこか目的地に寄ってから宿を探しても十分な時間帯である。
「マレットちゃん達はどうするの?。私達は今からとりあえずこの街の冒険者ギルドに向かおうかと思ってるけど?」
魔法使いの恰好をしたリズが神官の少女に質問をした。
少女は、一度横の黒衣の青年の方を見る。
青年は「いいんじゃないか」と雑に答えるので、少女はリズに着いて行くことにした。
リズと少女が並び、その後ろに青年、そして剣士のラーズという並びだ。
「ところで、ここ数日ラーズさんが元気なさそうに見えるんですの。何かありましたの?」
「んー、4日目の夜くらいから、なにか考え事してるみたいなんだよね。多分すぐに治ると思うんだけど」
リズもはっきりとした理由は分かってないらしく、見守っている状態らしい。
「何かあったらわたくし達にも言ってくださいですの。なにか力になれる様でしたら、是非とも力を借しますの」
リズは少女にありがとうと言うと、門を抜けてすぐに書いてもらった簡単な地図を見ながら冒険者ギルドを目指した。
しばらく街を歩くと、立派な酒場にも見える店構えの建物に着く。
扉を抜け中へ入ると、多数の冒険者がいた。
見たこともない立派な鎧に身を包む騎士風の者、禍々しい刃を装飾された漆黒の鎧をまとう大鎌使い───ウィズ=ダムではそうそう見る事のない、上位ランクの冒険者というのが一目でわかる感じだった。
そこでラーズは自分の装備を見る。
それなりに奮発したとはいえ、やはりここにいる冒険者に比べれば明らかに見劣りする。
ランク3なのだからと言えばそうなのだが、やはり気後れはしてしまう。
「どうしましたの?。受付に行くんじゃありませんの?」
いつの間にか追い抜いて前に出ていた少女がラーズとリズに声をかける。
その後ろに立つ青年も含めて、周囲に気圧されてる感じは全くしない。
(…すごいな、マレットちゃん達は)
リズは「うん」と自分に気合を入れると、ラーズの手を引き少女と一緒に並ぶ。
しかし、受付が3つもあるのに、全て順番待ちとはすごい活気だとラーズ達は思った。
ウィズ=ダムではよっぽど運が悪くない限り、すぐに対応してもらえる。
まぁその分、カウンター1つお姉さん一人というなかなかブラックなワンオペなんですが、それはそれ。
しばらく待つと、少女達の順番になる。
代表してラーズが青銅の冒険者章を出し、高位鑑定士の受付の場所を尋ねる。
話によると、ここで必要な書類を書いて鑑定台を払うと、城の方で見てもらえるとの事だった。
4人分の書類を貰い、各自で必要事項を書くと、鑑定代の銀貨3枚を納めた。
「…しかし、見てもらうだけで銀貨3枚って、結構な金額だよな」
ふとラーズがぼやく。リズも「そうだねー」と同意する。
そんな2人を見ながら、周囲の冒険者たちがニヤニヤと笑っていた。
「たかだか銀貨3枚で…」
「おいおい、奮発して田舎から出てきてるんだ。言ってやるな…」
「しかし、あんな貧乏くさい装備で、よくここに来られるよな…」
「大方ウィズ=ダム辺りの田舎の冒険者だろうよ…」
わざと聞こえよがしに言ってるのがありありと分かる声量で、ラーズとリズの2人は居辛そうに、小さくなっていた。
「ラーズさん、リズさん、こんなとこ早く出ますの。気分悪いですの」
少女が2人の手を引き、ギルド外へと出る。少し遅れて青年も出てくる。
「まだ時間はありますの。一度どこかでご飯を食べて、城に向いますの」
「…うん、そうだね。折角のジュライだし、ちょっといいもの食べて行こう」
4人は並んで食事の店を探しに街へ向って歩いていくのだった。
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