テトテヲトッテ ~杖と拳と時々亜人~

更楽 茄子

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リズの場合

その3

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「こ、これはっ!?…間違いない、街で売ってた甘い匂いのする菓子なのじゃ。なんでお前がこれを持って来たのじゃ!?」

シスターは受け取ったお菓子を見て明らかに興奮していた。

そして受け取ったお菓子を横の椅子の上に置くと、大げさにコホンと咳をした。


「ま、まぁ。折角お土産を持ってきてくれたのじゃ。儂も忙しい身ながらも、少しくらいで良ければ見てやるのじゃ」

「はいっ!?…ありがとうございますっ!」

シスターの言葉にリズは頭を下げる。

「あ…その前にちょっと待っておくのじゃ。これを渡してくるのじゃ」

そう言うとシスターが、お土産のお菓子を持って1人教会の扉を開けて出て早足でかけてゆく。

外へ出たシスターを窓から見てると、少し離れた宿舎の方に走って行ってる様だった。


しばらくすると、これ以上にないくらいに溶けたような、そんなデレデレなシスターが戻ってくる。

「子供達は喜んでましたの?」

「うむ…やっぱ子供達がが美味うまかーっち食べちょる様は、本当まっことかねぇ…辛抱たまらんばい…!」

子供達とのふれ合いで興奮冷めないのか、訛りが漏れ出しているために、聞き慣れないリズは少し困惑の表情を浮かべている。



「コホン…では、外に出るのじゃ。こっちについてくるのじゃ」

咳を一つして気を落ち着かせて、シスターがリズに声をかける。


それから、教会の裏の林の中で弱体魔法の教授をリズはしばらく受ける。

火球ファイアボールなどの攻撃魔法と違い、他者へと影響を与える効果の為に目で見ることは出来ない。

そんな弱体魔法の理解の為に、リズは結局全てを自分の体で体感する羽目になった。

痺れたり、眠くなったり、なんか体が重くなったり…自分が書物で見た魔法、そして書物では見た事も聞いた事もない魔法も色々体感した。


「お主ら魔法使いの使う攻撃魔法は自分内で完結する。じゃが、相手にかける以上弱体魔法はそうもいかんのじゃ。とりあえず修練を頑張ってみるのじゃ」

「は…はい…分かりましたぁ…」

色々変な効果をかけられすぎて、体に上手く力が入れれずにヨロヨロなリズが、それでも精一杯力強く返事をする。




「───まぁ、あれじゃったらまた見てやってもいいのじゃ。ただ…今度もお菓子があると、儂もちょっとだけ嬉しいのじゃ…」

シスターが少し歯切れ悪く、視線を逸らし気味にリズに言う。

「わ、分かりました!。ピーディー先生、今後もよろしくお願いします!」

リズはそんなシスターに、大きな声で感謝を述べるのだった。

「うむ…頑張れなのじゃ」


「ではピーディーさん、今日は忙しい中ありがとうございましたですの」

「ピーディー先生、私練習頑張ります。ありがとございました!」

少女とリズはシスターに頭を下げて、また来た道をてくてくと街に向って歩き出した。


「なんか…凄い人だったね、ピーディーさんって」

「えぇ、あの人達はとてもすごい人なんですの。内緒ですけど、この前のオークが来た時にも大活躍してますの」

リズが驚きが、顔全体から漏れ出していた。

(…ん?、あの人?)

リズはちょっとだけ単語が引っかかったものの、気のせいかなとスルーをする。



「凄いとは思ったけど、本当にそんなに凄い人だったんだね…マレットちゃん、紹介してくれてありがとうね」

「はい!、リズさんも練習頑張ってくださいですの。ところで…元気は出ましたの?」

少女が少し不安げにリズを見上げる。

「うん、すごく元気が出たよ。あんな凄い魔法を使える様になったら、ラーズもきっと驚くと思うし、きっと私にメロメロになるよ!」

女子2人、楽しく話しながら街への道を進んでいくのだった。



「ちょっと、シスターピーディーっ!。なんでご飯の時間が近いのに、子供達にあんなに沢山のお菓子をあげちゃったんですかーっ!?」

「す、すまんのじゃナタリーよっ!。でも、お菓子は少しでも早く食べた方がきっと美味しいと思ったのじゃ。ごめんなさいなのじゃーーーっ!」


2人を見送ったシスターがその後、シスターナタリーからこっぴどく怒られていた事を、少女達は知る事はなかった。
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