鍵っ娘 ~開錠と施錠のスキルで、この世界で最強の引きこもりを目指します~

更楽 茄子

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本編

14話目 / 15話目

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『14話目・魔人ベリルと私 / 更楽茄子』





開錠アンロック

スキルの効果で、魔王城を包む魔法壁が3枚一気に消えた。

開錠アンロックLv10のスキルを持つ私には、あんなイベントアイテムがなくても、この程度の魔法壁なら自在に開け閉めできるのだ。

通り抜け橋の中腹まで来たところで、施錠ロックで魔法壁を戻すのも忘れない。



「まずは、さっきの4人の記憶を────施錠ロック (概念)」

私の中でカチャリと音がして、さっきまで何をしていたかを思い出せなくなったが、忘れる程度ならたいした事ないだろうと気にしない事に。

「あっ、あとなんで閉じたか知らないけど施錠《ロック》してた、道徳心モラルを────開錠アンロック (概念)」

再び私の中でカチャリと音がして道徳心モラルが戻ってきたみたいだけど、まぁなんの変化もないです。


「さて、じゃあ魔王城攻略、いきますかっ!」

私は橋を渡り、魔王城の入り口から中に入るのだった。



魔王城内には物騒なモンスターが多数徘徊しているものの、存在感を施錠ロックしているユキナに気づけるモンスターはいなかった。

しばらく行くと大きな赤い扉と、その前に魔人っぽいモンスターが立っていた。


「よくぞここまでたどり着いたな。オレの名は魔人将ベリル。ここがお前の墓場だ、死ねー!」

目の前の魔人が手に持った剣でユキナに斬りかかってきた。


(…なるほど。つまり中ボスみたいな存在なのね。エリアに入ったら強制的に戦闘突入するから、存在感を施錠ロックしてても意味がないって事か…)

ぼんやりと考え事をしてたユキナは、避けるでなくそのまま立っている。


─────カキーン
「いたっ…!」

袈裟斬りに振られた魔人の剣が肩に当たったが、剣はユキナに傷1つ付けることなく、肩で止まっている。

「…はい?」

魔人は剣が当たっている肩を見て、未だに理解が追い付いていない。


その時、ユキナの手の平に、尋常じゃない熱を放つ灼熱の火球が発生する。

「─────ファイア」

放たれた火球はベリルに直撃したまま壁まで飛んでゆき、文字通り骨すら残さず燃やし尽くして、壁を黒く焦がした。

魔人の消滅がそのキーだったのか、それと同時に赤い扉がギギギと重い音を立てて勝手に開かれていく。



「やっぱ当たると反射で「いたっ!」って言っちゃうな……恥ずかしい…」

ぶつぶつ文句を言いながら、ユキナは魔王城を進んでいった。



───────────────────────



『15話目・四天王と私 / 更楽茄子』



「ベリルをたおすとは中々やるな。だがヤツは四天王の中では一番の小物。俺様を奴と一緒と侮らない事だぁ!」


しばらく進むと見えてきた大きな扉の前に、燕尾服のような服装に背中に生えた蝙蝠みたいな羽のモンスターがいた。

周囲を飛ぶ大量の蝙蝠を見る限り吸血鬼か何からしい。


「我が名は吸血鬼ドラアク!お前の血を全て吸い尽くしてやろう!」

…正解だった。


ドラアクはそう言うと羽をはばたかせ浮かび上がり、一気にユキナ向かって飛び込んでくる。

「─────ホーリーライト」

広いホール状の部屋が真っ白になるほどの強い閃光がユキナの手に出現した。

向かって来ていた吸血鬼は、光を浴びて真っ白な灰の様になり、ユキナに届く事なくそのまま粉となりさらさらと崩れていった。

同時に、背後にあった青い扉がギィィィィと開きだす。

ユキナは体にかかった粉を払い落とすと、開いた扉の方へと進んでいった。



「ギャオー(我が名は邪龍ダーク。この扉を通りたくば見事倒して見よ)」

全長20メートルはありそうな龍が居た。

後ろには大きな黒い扉がある。


ユキナは面倒くさいらしく、龍は無視して扉に向う事にした。

開錠アンロック

あっけなく開きだす黒い扉。


「ギャギャギャ!?(ちょ、ちょっとまて。素通りされたらオレの立場が!)」

なんか焦った龍が襲いかかってきたので、とりあえず腰の短剣を投げつけるユキナ。

「ギャーーーー…(そんなバカなぁ…)」

頭から尻尾の先まで貫通した短剣は、そのまま壁を抜けてどこかへ飛んでいった。


「あ、武器がなくなった…まぁいいか」

ユキナは気にも留めずに、扉の先にある階段を上っていく。



「よくぞここまで来たな。我こそは……ギャーーーー」

いちいち名乗りを聞くのも面倒くさいのか、いきなり手を振り風の刃を飛ばすユキナ。

うっかり扉ごと切ってしまったけど、まぁ結局開けるんだしセーフ……らしい。



階段を上ると、今までとは明らかに雰囲気が変わる。

いうなら、どこかの城の謁見の間の様な感じだ。

ただ、一面黒で、禍々しい雰囲気が漂っている。


そして奥に巨大な玉座があり、そこに座る人物の頭には水牛の角の様なものが生えていた。

そう、この者こそがこの世界を脅かすラスボス─────魔王であった。
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