鍵っ娘 ~開錠と施錠のスキルで、この世界で最強の引きこもりを目指します~

更楽 茄子

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本編

16話目 / 17話目

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『16話目・魔王と私 / 更楽茄子』



「…四天王を倒し、ここまでたどり着くとはな!。我こそは魔王─────魔王ベゼルなり!」

水牛の角を生やした魔王が玉座を立ち上がり、魔王が目の前に辿り着いた少女を睨む。


「………その、なんだ?。お前のその装備はなんだ?」

ユキナの明らかに初期装備っぽい革鎧を見て、魔王が何とも言えない顔をしている。

「ちょっと急いできたから、まぁ恰好は気にしないでくれていいから。とりあえず私の話を聞いてくれる?」

ユキナは魔王に対して、怯えるでもなくフランクに話しかけた。



(…え?。こいつなんなの?)

魔王は目の前に立つ勇者 (?)の少女をなんとなく調べてみた。


─────System───────
ユキナ
Lv2 鍵師
Exp:15
スキル:開錠アンロックLv5・施錠ロックLv5
───────────────


(…は?、Lv2……?。それもジョブが鍵師って??)

ステータスは軒並み一桁、HPやMPも30満たない、レベル相応の数値だった。

魔王は理解が追い付かない。


Lv2で魔王城に来れて、四天王倒してここまで来ると、どう考えてもかおかしいだろう?。

他にも仲間がいるかと思ったけど、そんなわけでもなさそうな様子。

そして最大の謎が、『魔王城を包む魔法壁が3枚消えてない』。


可能性として、この魔王の目の前まで魔法壁なども壊さずに転移してきたとする……まぁ普通に考えてそんな事は無理なんだけど。

だがそれだと少しおかしなことがある。


自分の方で四天王死亡は把握しているのだ─────実際、四天王の守っていた扉の封印も4か所全て解かれている。

つまり、このLv2の─────それも戦闘職ですらない鍵師が、間違いなく四天王を倒して目の前にいるのだ。



魔王は混乱している。



───────────────────────



『17話目・経験値と私 / 更楽茄子』



「えっと、まず言っとくけど、私のレベルは9999以上だから」

(…はい?。レベルは99上限だぞ?)

「ステータスも全て9999以上ね」

(…いやいや、HPとMPは999上限だし、ステータスは99だし…)

「そもそも『以上』ってなんだよ!」

流石に我慢できずに普通に突っ込んでしまった。


「あと、鍵のスキルの『施錠ロック開錠アンロック』なんだけど、これを派生させて出来たのが施錠ロック (事象)と開錠アンロック (事象)ね?」

(…こっちの疑問には答えずに、勝手に話を進めてるし)

「で、この『事象』ってのは、普通の扉とかだけじゃなく、数量的なものなの」

(…数量的なもの?)

「それを使って、まず私は経験値の上限を外したの」

「経験値の上限…?。どういうことだ?」

んーと眼の前の少女が言うと、突然屈んで床に絵を描きだした。

(…っ!?。指でなぞってるだけなのに、石の床がガリガリ削れてるんですけどぉ!?)

ここは魔王としての威厳があるし、驚いた風には見せない様になんとか踏みとどまる。



「たとえば私のジョブレベルがLv1だとして、ここにスライムがいるでしょ?。この子の経験値は3ね?」

「まぁLv1のスライムだし、そんなとこだろうな」

(…そりゃ、弱いやつで大量に得られたら、延々そこでレベルを上げるかもだしな)

「で、この子の経験値の上限を外すとどーなるでしょうか?」

(…いきなり質問来た!、知るかよそんなの!)

「…経験値が増える?、とかか?」

「正解っ!。ということで、この子を倒すと獲得経験値の上限までもらえる事になります」

(……………はい?)



「獲得経験値の上限って……9999だよな?。でもぶっちゃけ、魔王のオレを倒しても9000くらいだぞ?」

「あらら?。じゃあLv1のスライム以下だね。おっかしー」

悪びれもせずに、少女がけらけらと笑う。


「いやいや、相対的に獲得経験値は減るから!。あくまでも適正レベルで来た時が9000ってだけだから!。仮にお前がLv1だとしたら、余裕で9999いくわ!」

「なるほど。じゃあ仮に私がLv60くらいかな?。適正レベルで来たら、あなたの経験値は9000なのね?」

(…うん、間違ってはない…よな?。まぁ、そこまで弱くないけど)


「じゃあ質問です。私がLv60だとして、さっきのLv1のスライムは、経験値幾らくれるでしょう?」

「…あれ?。9999…?」

少女が心底楽しそうに、にやーっと笑った。



(…えー、魔王様なのにLv1のスライム以下とか、マジですか…)
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