鍵っ娘 ~開錠と施錠のスキルで、この世界で最強の引きこもりを目指します~

更楽 茄子

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本編

18話目 / 19話目

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『18話目・床ガリガリと私 / 更楽茄子』



「─────まぁというわけで、経験値上限を外したスライム叩くだけで、私のレベルはめきめき上がる様になったってわけ」

「理屈は分かるが、お前のステータスのLv2鍵師ってのはなんだ?」

んーと考えて、また少女が指で床をがりがり削り出した。


「ステータスって言えば出てくるこれって、私の事象をまとめて表示してくれてるから、どうも事象に含まれるみたいなんだよねー」

そう言うと、ステータスと床に書く。

「なので、ジョブレベルがLv2になった時点で、ステータスの表示を施錠ロック (事象)しました」

「えー…つまり、Lv2になった時で表示が止まってるだけで、今の本当のステータスじゃない、という事か?」

パチパチと少女が拍手をしてくる。

「ちなみに、この『開錠アンロック (事象)』のステータス表示は、女神様に見られたら厄介そうなので、施錠ロックのスキルで隠してあります」

「…なるほど。だからさっき見たステータスには、それが載ってなかったという事か…」

我ながら渋い顔をしてるだろうとは思っている。



「経験値も溜まると効果を発するから、これも事象ね?」

更に経験値と床に書いた。

「HPやMPそれとステータスも事象だから、これもいけます」

HPとMPとステータスと書く。

(…すいません、床の補修費は、誰が出してくれるんでしょうか?)



「あと、数値は見えないけど『スキルの修練度?』は事象だったみたいなのね」

スキルと書き加えられた。

「なので、私は宝箱の獲得スキルの上限を開錠アンロックすることで、更に上げていったわけ」

「…ちょっとまて。その突然出てきた宝箱ってなんだ?」

意味不明すぎるが、せめて分かりそうなとこだけでも理解させてくれ。


「あー、宝箱ってのは、女神様から最初に貰った、初期装備が入ってる箱ね。中身を取ると消えちゃうので、中にはまだ革鎧と短剣が入ってます」

(…あ、もしやこいつが今着てるのがそれだね!。魔王様1つ理解!)

「で、それをパカパカやってるうちに開錠アンロック (概念)と施錠ロック (概念)を派生させました」

「パカパカ…」

またガリガリと今度は概念と床に書いた。


「この概念ってのは、文字通り概念です」

「すいません、分かりません…」

んーと言いながら急に立ち上がる少女。



「概念はそれとわかるもの─────つまり、世界の全てといっても過言じゃないんだよ!」

「すべて…」

手を広げて、オーバーアクションで、何かをこちらに訴えてくる少女。


…はい、魔王様は既についてけてません。

ただ、嫌な予感だけはビンビンしてます。



───────────────────────



『19話目・和解と私 / 更楽茄子』



「その世界の全てとやらで何を開錠アンロック…」


言ってる途中でなんとなく気付きましたよ?、さすが魔王様は聡明ですよね!。

最初にこいつが言ったレベル、色々と訳が分からないものを外せるという事を踏まえると、多分これが正解だろう……正解であって欲しくはないのだが…。


「私は自分のステータスの『桁の概念』を開錠アンロックしました!」

「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

そして再び屈み、最初に描いたスライムの絵を指さす少女。



「さて問題です。桁の概念を開錠アンロック出来るようになったら、このスライムはいくつの経験をくれるでしょうか?」

「………あ」


桁の概念を開錠アンロック出来るというのなら話が大きく変わってくる。

今まで辛うじてこの世界のシステム上限という事で止めれていた9999の経験値や99のレベル、99のステータスの上限が意味を成さなくなる。

更に言えば、桁の概念を外した上に、獲得経験値の上限を外したのなら、一匹倒せば無限の経験値が入る様になるだろう。

そして当然レベルも無限に上がる。

無限に上がるレベルに合わせて、上限を解除されたステータスもあがる。

間違いなく超人の完成だ。


「あと、スキルも概念なので、全てのスキルも開錠アンロックしました!」

(…えー、こいつ倒すの無理じゃーん。こんなかわいい魔王様とか無力じゃーん)

「────というわけで、ここまではいい?」

「………はい」

いつの間にか魔王様は正座してました……石の床が痛いです。



よしっと気合を入れると、少女も目の前に正座をする。

「実を言うと、私は元の世界に帰りたくありません!」

「…はぁ?」

あまりの事に、とても抜けた返事になってしまった。

(…異世界からきて帰りたがらないのも珍シイデスネー)


「というわけで、魔王ちゃんには生き残ってもらわないと困ります!」

「…善処します」

(…まぁ目の前の人がその気になれば、即塵になるけどね!)



「あと、魔王ちゃんが世界を壊しても私が戻されます!」

「!!!」


オレはこいつにはまず勝てないが、こいつはオレを倒さない。

それなら、どさくさで世界を壊せば、こいつを元の世界に追い返せる!?。


少女がジト目でこっちを見てる気がする。

もしかして嬉しさが顔から漏れたのかもしれない。



「コホン…。魔王ちゃんは、この椅子にこれから永遠に施錠ロックされたいですか?。それともされたくないですか?」

「はい、されたくありません!!!」

即答です、迷いなんかはありません、もぉなんでもいいです。



少女はよしよしというと、立ち上がり膝の埃をはたいた。

「じゃあ、魔王ちゃんは世界を壊さない程度なら自由にしていいからね?。私は最初の町にもどって、スローライフを堪能するから」

(…お?。もしやワンチャン、どさくさ世界破壊狙えるんじゃね?)


「…あ、いい事思いついたっ!。この世界で一番大きい国を5重の魔法壁で施錠ロックして、中の時間流れの概念も施錠ロックしとくから、最悪この世界全部更地にしてもいいよ?」

「魔王城より堅固にしてんじゃねぇよっ!。というか、他は更地でいいんだ…」

さすがの魔王様でも引くこの提案に、変な笑いが出ました。


でもぉ、と少女はこっちを見ながら言う。

「抵抗勢力残しとかないと、きっと暇になるよ?」

「…そうだな。程よくやることにする」


オレがそう言うと、少女はこちらに向けて、満面の笑みでにっこりと笑った。
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