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ドッペルゲンガー編
⒍外の景色
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「それでは、失礼いたします」
「恐れ入る」
深く礼をするメイドの女性に軽く頭を下げ、退室するのを見送った。
静かに閉められたドアに、部屋の中には私だけになる。そのことを確認すると、大きく息を吐き出した。
フローライトの部屋に比べれば小さくも、それでも広い部屋に設置されたベッドへ浅く腰掛ける。
あの後、フローライトに部屋を用意され、彼女とディアンとはそこで別れた。フローライトには微笑まれ手を振られ、ディアンには警戒心に滲む目で睨まれながら。
はぁ、と再度漏れた息に、これではいけない、と眉間にシワが寄る。
先程は気が動転してしまい、ちゃんと思考できていなかったがーーーここが本当に、異世界なのか。それをちゃんと、この目で確かめなければ。
この世界の地図と見せられたアレも、偽物を用意した可能性だった無くはない。
彼女達と言葉が通じている事もあるし、本当は日本のどこかなのではという疑念も、まだ捨てきれないな。
ベッドから立ち上がり、部屋の窓へと近寄る。そして、そっと閉められていたカーテンを横へとスライドさせた。
「…………これ、は」
そして視界に収まった光景に、私は瞬きも忘れ呼吸も忘れ、動きを止めた。
気付けば沈んでいた日の代わりに、暗闇が落ちた空に輝く月が登っていた。
それが、3つ。
大・中・小の大きさをした月(アレが月であるなら)が、寄り添うようにして3つ、空へと浮かんでいた。
しかも、白・青・紫といった具合に色が異なっている。
……私は疲れてでもいるのか?
そう目を擦ってみるが、見上げた景色に変わりはなかった。
満月だからなのか、3つの月は等しく綺麗な円形を描いている。一番小さな月が、私の良く見知った月のサイズのように見えるが…。
アレは一体、どれ程大きな星なのだろうか。それとも距離が近いのか。
真っ暗な空の中、白く光り輝く月以外にはあまり慣れたものではないが……青や紫といった闇夜に吸い込まれる色は、どうしてだか、嫌いではなかった。
きっと、あの白く輝く月が見えなくなれば、青と紫の月は見えなくなってしまうだろう。それは少し、勿体ないな。
「…さすがに、信じるしかない、か…」
地図を偽物と交換しようと、空に浮かぶ月まではどうしようもないだろう。
試しに窓を開いてみても景色は変わらず、そっと腕を伸ばしてみても何かにぶつかる事もない。
つまり、これは本物の光景。
本当は、明日になれば近くの街まで案内しようというフローライトの申し出を受け、それから判断するつもりだったのだが。
これを見て、ここが地球だと思い込むには、私には無理だ。
吹き込んできた風が思いのほか冷たく、私は肩を微かに震わせ静かに窓を閉める。
そして最後に、3色で地上を照らす月を見上げると、不思議と落ち着いた気持ちになりながらカーテンを閉じた。
「恐れ入る」
深く礼をするメイドの女性に軽く頭を下げ、退室するのを見送った。
静かに閉められたドアに、部屋の中には私だけになる。そのことを確認すると、大きく息を吐き出した。
フローライトの部屋に比べれば小さくも、それでも広い部屋に設置されたベッドへ浅く腰掛ける。
あの後、フローライトに部屋を用意され、彼女とディアンとはそこで別れた。フローライトには微笑まれ手を振られ、ディアンには警戒心に滲む目で睨まれながら。
はぁ、と再度漏れた息に、これではいけない、と眉間にシワが寄る。
先程は気が動転してしまい、ちゃんと思考できていなかったがーーーここが本当に、異世界なのか。それをちゃんと、この目で確かめなければ。
この世界の地図と見せられたアレも、偽物を用意した可能性だった無くはない。
彼女達と言葉が通じている事もあるし、本当は日本のどこかなのではという疑念も、まだ捨てきれないな。
ベッドから立ち上がり、部屋の窓へと近寄る。そして、そっと閉められていたカーテンを横へとスライドさせた。
「…………これ、は」
そして視界に収まった光景に、私は瞬きも忘れ呼吸も忘れ、動きを止めた。
気付けば沈んでいた日の代わりに、暗闇が落ちた空に輝く月が登っていた。
それが、3つ。
大・中・小の大きさをした月(アレが月であるなら)が、寄り添うようにして3つ、空へと浮かんでいた。
しかも、白・青・紫といった具合に色が異なっている。
……私は疲れてでもいるのか?
そう目を擦ってみるが、見上げた景色に変わりはなかった。
満月だからなのか、3つの月は等しく綺麗な円形を描いている。一番小さな月が、私の良く見知った月のサイズのように見えるが…。
アレは一体、どれ程大きな星なのだろうか。それとも距離が近いのか。
真っ暗な空の中、白く光り輝く月以外にはあまり慣れたものではないが……青や紫といった闇夜に吸い込まれる色は、どうしてだか、嫌いではなかった。
きっと、あの白く輝く月が見えなくなれば、青と紫の月は見えなくなってしまうだろう。それは少し、勿体ないな。
「…さすがに、信じるしかない、か…」
地図を偽物と交換しようと、空に浮かぶ月まではどうしようもないだろう。
試しに窓を開いてみても景色は変わらず、そっと腕を伸ばしてみても何かにぶつかる事もない。
つまり、これは本物の光景。
本当は、明日になれば近くの街まで案内しようというフローライトの申し出を受け、それから判断するつもりだったのだが。
これを見て、ここが地球だと思い込むには、私には無理だ。
吹き込んできた風が思いのほか冷たく、私は肩を微かに震わせ静かに窓を閉める。
そして最後に、3色で地上を照らす月を見上げると、不思議と落ち着いた気持ちになりながらカーテンを閉じた。
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