異世界ドッペルゲンガー

Ryo

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エレスチャル王国編

22.ガーディアンとして(フローライト視点)

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「それじゃ、行ってくるわ。ちゃんと見ててね」
「あぁ。頑張ってこい」


 暖かい視線のケイに見送られ、多くの生徒や教師の視線が集まる舞台へと歩みを進める。

 3年次へと上がり、ガーディアンとしても3席となり、こうして皆の前に立つのも5度目。
 入学式と始業式、新ガーディアンの発足式、終業式、そして今日。

 人前に出ることに、特に緊張を覚えることもなくなりました。
 まぁ、元々ないようなものでしたけど。


「ただいまより、始業式を始めますーー」


 静かな正堂へ、私の声が響き渡っていきます。
 ハウ様などは、こういった事が苦手そうですわね。ふふ。

 進行内容は休業中に頭に入れておりますから、真っ直ぐ視線をあげて続けます。

 これといって指定された場所があるわけでもないので、見知った同期が散見されました。
 小さく手を振ってくださる方がいらっしゃいますが、仕事中なので少し微笑むだけにしましょう。

 決められた通りの言葉を読み上げ、順々に式を進行させていきます。

 そして、滞りなく最後の学院長のお話となりました。

 ヴィオレット学院の長であるダンビュライ・アゼツ様は、白髪と白髭の高齢な方ですが、穏やかな瞳に理知的な光を宿し確かな足取りで舞台へと上がられます。


「1年次の皆さんにとっては、学院での始めての長期休暇となりましたが、ちゃんと息抜きは出来ましたかな。
 学院の、そして生徒の本分は勉学。それに励むのは素晴らしいことですが、貴方たちはまだ若い。今の年の頃でしか体験出来ないようなことが多々ありましょう。
 皆さんが将来、どのような姿となっているかは、皆さん次第。是非とも、後悔のないーーいえ、後悔よりも希望の多い人生となるよう」


 生徒一人一人の顔を見渡すように、優しげにそう締められた学院長が舞台を降り、私も閉会の言葉を述べた。

 生徒が各自の教室へと移動を始め、私も舞台袖へと下がる。


「おつかれ。堂々たる姿勢だった。さすがだな、フローラ」


 そう微笑んでくれるケイに、私は少しだけ得意げに胸を逸らしてみせます。
 他の方ならばともかく、ケイに褒めていただけるのは嬉しいことですわ。

 残念なのは、学院で他の方々の目がある為に、いつものように頭を撫でてはくれないことね。


「私ならこれくらい当然よ」
「はは、そうか。頼もしいよ。私には無理だな」


 まぁ、ケイはあまり目立つのが好きではなさそうですものね。

 正堂の方をチラリと眺めたケイが、他の生徒が移動するのを見て私へと首を傾げます。


「この後は、フローラも教室へ?」
「そうよ。今日は授業は午前だけですから、その後にまたガーディアンで集まることになるわ」
「なるほど」


 授業か……と呟くケイは、少しだけ遠くを見るような目をされました。
 彼女は私と同い年。元の世界では学生であったと聞いていますし、やはり思うところがあるのでしょう。

 ケイには無事に元の世界へ戻ってほしいとも、このまま共にいてほしいとも思ってしまう私は、嫌な人間ですね。


「さぁ、行きましょう」


 それでも、手を伸ばせば笑顔で取ってくれるケイを、もう暫くお貸しくださいな。
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