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男装麗嬢の麗しき日常
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普段から騎士服くらいしか身につけていないアレクサンドラは、主であるベアトリスの強い要望で、珍しく女装で夜会へと参加しようとしていた。
しかも、ベアトリスと母であるアリアドラだけでなく、何故か第二王子アイザックまで制作に関わったらしく、そのうえアイザックからの贈り物として届いたドレスである。
肌触りの良い上質な生地で、有事の際には動けるよう配慮したのかシンプルなデザイン。身体のラインに沿った作りで、スペースを取らないのはアレクサンドラとしては好ましかった。
神樹ユグドラの色であり王家の色でもある緑のドレスは、普段、身につけている近衛騎士の服を連想させて安心する。
問題は、これが第二王位から贈られた、ということであった。
どうしてそんなことになったのか分からぬアレクサンドラであったが、それでも文句をいえるわけもなく、エスコート役まで買って出たアイザックを着替え部屋にて待っていた。
近衛騎士である身としては、王子に迎えに来させるなど恐れ多いことだが、その王子とベアトリスによって言い負かされていた。
今日、何度目かの溜息を飲み込んだアレクサンドラの耳に、ドアをノックする音が届く。
「ーーアレクサンドラ、良いか?」
「はい、どうぞお入りください」
部屋の中のドア近くに控えていた侍女が素早くドアを開けると、王子らしく豪華に着飾ったーーものではなく、アレクサンドラのドレスに合わせたのかシンブルなデザインの、しかし高価な生地で作られた緑が基調となった礼服に身を包んだアイザックが入室した。
座っていたイスから立ち上がり、出迎えとして頭を下げるアレクサンドラの姿に、つい足が止まるアイザック。
自身が望んだデザインのドレスは、彼女の騎士として鍛えられた、引き締まったしなやかな身体にとても良く似合っていた。
普段は左耳にかけるだけの髪も、ハーフアップして神樹の枝をモチーフにした髪飾りで彩られている。
望んでいた、それ以上の実物を前にアイザックは顔が赤くなるのを感じた。思わず咳払いして誤魔化す。
「その、アレクサンドラ……に、似合っているぞ」
「光栄です、アイザック様。素敵な贈り物、ありがとうございます」
「……」
「……? どこか、おかしいでしょうか?」
「っえ⁉︎ いや、そんなことはないぞっ」
ついつい想い人の姿に見惚れて固まってしまうアイザックに、不思議そうに首を傾げるアレクサンドラ。
再び大げさに咳払いしたアイザックは、アレクサンドラの側へと歩み寄ると優雅に手を差し出した。
「それでは、行こうか」
「はい」
騎士とはいえ、公爵家の令嬢でもあるアレクサンドラは、家柄を損なうことない洗礼された動作でその手を取る。
そんな2人を内心微笑ましく思いながらも、プロとして空気になっていた侍女がドアを開け、2人は夜会の会場へと向かった。
しかも、ベアトリスと母であるアリアドラだけでなく、何故か第二王子アイザックまで制作に関わったらしく、そのうえアイザックからの贈り物として届いたドレスである。
肌触りの良い上質な生地で、有事の際には動けるよう配慮したのかシンプルなデザイン。身体のラインに沿った作りで、スペースを取らないのはアレクサンドラとしては好ましかった。
神樹ユグドラの色であり王家の色でもある緑のドレスは、普段、身につけている近衛騎士の服を連想させて安心する。
問題は、これが第二王位から贈られた、ということであった。
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近衛騎士である身としては、王子に迎えに来させるなど恐れ多いことだが、その王子とベアトリスによって言い負かされていた。
今日、何度目かの溜息を飲み込んだアレクサンドラの耳に、ドアをノックする音が届く。
「ーーアレクサンドラ、良いか?」
「はい、どうぞお入りください」
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普段は左耳にかけるだけの髪も、ハーフアップして神樹の枝をモチーフにした髪飾りで彩られている。
望んでいた、それ以上の実物を前にアイザックは顔が赤くなるのを感じた。思わず咳払いして誤魔化す。
「その、アレクサンドラ……に、似合っているぞ」
「光栄です、アイザック様。素敵な贈り物、ありがとうございます」
「……」
「……? どこか、おかしいでしょうか?」
「っえ⁉︎ いや、そんなことはないぞっ」
ついつい想い人の姿に見惚れて固まってしまうアイザックに、不思議そうに首を傾げるアレクサンドラ。
再び大げさに咳払いしたアイザックは、アレクサンドラの側へと歩み寄ると優雅に手を差し出した。
「それでは、行こうか」
「はい」
騎士とはいえ、公爵家の令嬢でもあるアレクサンドラは、家柄を損なうことない洗礼された動作でその手を取る。
そんな2人を内心微笑ましく思いながらも、プロとして空気になっていた侍女がドアを開け、2人は夜会の会場へと向かった。
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