「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「朝のコーヒーは、君の味」

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「……おはよう」

 まだ寝ぼけたまま、目をこすりながらキッチンに向かうと、そこにはすでに蒼汰の背中があった。コーヒーメーカーの前で、なにやらあたふたしている。

「おはよう、蒼汰。どうした? コーヒー、飲みたかった?」
「あ、悠真……おはよ。うん、なんかさ、たまには俺が淹れたろ思てんけど……これ、どっから操作するんか全然わからん!」

 振り返った蒼汰は、説明書と格闘中。眠気もふっとぶほどの不器用さに、思わず笑ってしまう。

「じゃあさ、一緒に淹れよっか」
「ごめん? うれし……いや、教えてくれるん?」

 張りきって豆を手に取る蒼汰。だけど、いきなり豆を床にぶちまけて、「わあっ、地雷踏んだみたいになった!」とテンパる姿がまた愛おしい。

「まずは、豆をここに入れて、こうやって挽くの」
「へぇ~……音がええ感じ。なんか職人っぽい」

 ふたりでタイミングを合わせて、ゆっくり湯を注ぐ。蒼汰の指が俺の手に触れるたび、胸が少しだけくすぐったくなる。

「コーヒーって、丁寧に淹れると、香りも変わるんだ」
「ほんまや。部屋じゅう、ええ匂いしてる」

 香ばしい香りがふわっと広がって、まるで“今日”がふたりを優しく包むようだ。

「さあ、蒼汰のために一杯、淹れたよ」
「お、やった! ありがと」

 俺から渡されたカップを嬉しそうに受け取る蒼汰。そして――

「実はな、俺も悠真のために淹れてみてん」

 そう言って手渡してくれたマグには、ミルク多めのカフェオレ。俺の好みを、ちゃんと覚えてくれてる。

「……俺の好み、覚えてくれてたんだ」
「そりゃ、毎日一緒におるんやし。ほら、悠真が甘いの好きなんも、ちゃんと見てる」
「……ふふ。ありがとう。蒼汰のコーヒー、嬉しいよ」

 ふたり並んでソファに座って、ゆっくりコーヒーを飲む。外はまだ薄曇りだけど、胸の奥は、少しずつあたたかくなっていく。

「悠真、また一緒に淹れよな。俺、こんな時間、めっちゃ好き」

 蒼汰の言葉に、俺は少しだけ顔をそらしながらも、心の中でそっと頷いた。
(これからも、朝のこの時間がずっと続けばいいな…)
 そんなことを思いながら、静かなリビングでふたりのコーヒーカップが並ぶ。

 まだ見ぬ今日という一日に、ちょっとだけ胸を高鳴らせながら。―こんな朝が、これからもずっと続きますように。
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