「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「ハンバーグの香りと、ふたりの距離」

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 玄関を開けた瞬間、香ばしい匂いがふわりと漂った。
「……おかえり、蒼汰。ハンバーグできてるぞ」

 声をかけると、ぐったりしていた蒼汰の表情が一瞬で明るくなる。
「ハンバーグのためにお仕事がんばってきたでぇ!?」

 靴もそこそこに、蒼汰は勢いよく台所へ飛び込んでくる。
 エプロン姿の俺を見つけると、子どもみたいに目を輝かせた。

「今日は、ちゃんと玉ねぎを炒めたからな。甘みもばっちり出てるはず」
「玉ねぎって炒めると甘なるんや……知らんかった。……悠真って、やっぱ天才やな」

「いや、大げさだろ。ほら、はやく着替えてこい」
「はーい! でも、はよ食べたいからダッシュで着替えてくる!」

 数分後には、ルームウェア姿で戻ってきて、もう待ちきれない顔をしている。

 食卓に並べたのは、ふっくらと焼いたハンバーグに、とろりと濃厚なデミグラスソース。サラダやにんじんのグラッセ、炊きたての白ごはんも添えた。

「いただきます!」
 最初のひと口を頬張った瞬間、蒼汰の瞳がまんまるになる。
「……うまっ! このハンバーグ、めっちゃうまい!!」

 その顔を見ているだけで、胸がじんわりとあたたかくなる。
「誰が作ったと思ってるの? ちゃんと隠し味も入ってるから」
「ほんまプロみたいやな! なになに、隠し味って何?」
「秘密かな」

(――隠し味は、愛情なんて。さすがに言えないけど)

 俺がごまかすと、蒼汰は口を尖らせて「けちぃ」と笑った。

 夕食は、まるで祭りみたいに賑やかだった。蒼汰はごはんをおかわりして、口いっぱいにハンバーグを頬張る。「おいしい、おいしい」と繰り返すたびに、俺の頬も自然とゆるんでしまう。

「……ん?」
 蒼汰が小首をかしげて見上げてくる。

「なに?」
「いや……ごはん、美味しそうに食べてくれるの、嬉しいなって思って」

 思わず本音を漏らすと、蒼汰の顔がぱっと赤くなる。
「そりゃあ、だって――悠真の料理、大好きやもん」

 胸の奥が熱くなる。こう真っ直ぐ言われると、逃げ場がなくなる。

 片付けもふたりで並んで。俺が皿を洗い、蒼汰が拭いて棚に並べていく。
 ふとした拍子に、指先と指先が触れ合った。

「……ハンバーグのお礼、」
「え? お礼?」

 俺がきょとんとした瞬間、蒼汰はそっと顔を寄せる。頬に軽く唇を触れさせた。

「っ……!」
「ハンバーグのあとのデザート。……甘いやつ」

「……ずるいな、ほんとに」
 照れ隠しみたいに呟いて、蒼汰の腰をぎゅっと引きよせる。

「ごちそうさま、悠真」

 その仕草に思わず笑みがこぼれる。
 こんなふうに食卓を囲んで、くだらない会話をして、ちょっとしたキスで赤くなる――。
 俺の毎日は蒼汰の色が増えていく。
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