「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「焼き芋とふたりの温度」

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 夜、夕食の支度を終えたころ。
 スマホが小さく震えた。

 《悠真、今出て来れる? 角のスーパーの前まで》
 《なに? いけるけど》
 《ええから、はよきて》

 短いメッセージに、胸がそわそわする。
 スーパーはもう閉まっているのに、何かあった?
 少し不安になって早足になると――
「悠真ーっ! こっちやでぇ!」
 
 角を曲がった先で、蒼汰が手を振っていた。
 その隣には、白い湯気を立てる焼きいもの屋台。

「ほら見て! 焼きいも屋さん! めっちゃええ匂いやろ?」
「……それで呼んだの?」
「もぉ~見てしもたら、食べたくなるやん!」
 
 蒼汰がうれしそうに笑う。
 その顔を見たら、怒る気もなくなり……
 結局、2つ買うことにした。

「めっちゃアツアツや……! あっつ! なぁ…今食べたい!」
「それ大きいし、ご飯の準備もできてるぞ……」
「じゃあ、一つだけ、半分こならええやろ?」
 
 そう言いながら、半分どころかほとんど自分で食べている。呆れて見ていると、蒼汰が最後の一口を差し出した。 

「最後の一口?はい、あーん」
「いい、いいよ」
「え、なんで? 暗いし誰も見てへんやん……」

 夜道の街灯が、ふたりの影を並べる。
 蒼汰の声が少し甘くなって、距離が近づいた。

「……悠真、照れてる?」
「照れてないって!」
「うそ。顔、赤いで」
 
 蒼汰が小さく笑って、焼きいもを差し出す。
 その距離が妙に近くて、思わず顔をそらした。
 ――ちょっと恥ずかしい。けど、なんか認めたくない。

「じゃあ、俺が食べるで?」
「おいっ、蒼汰」
 
 思わず腕を引いた拍子に、体勢を崩して抱き合うような形になる。蒼汰の胸がぶつかって、あたたかい息が頬をかすめた。

「こっちのほうが、もっと恥ずかしいやん…」
 
 そう言って、焼きいもをそのまま口に突っ込んでくる。「熱っ」と声を上げると、蒼汰が笑って、
 そのまま俺の肩に頭を預けた。
 
 口の中に広がる甘さと、指先に残るぬくもり。
 それはたぶん、焼きいもの温度より少しだけ高かった。
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