「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「その隣に立つ日まで」

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 蒼汰のスマホが鳴ったのは、夕飯のあとだった。
 スピーカーから聞こえる声は、どこか明るくてやさしい。――蒼汰のお母さんだ。

「え、真也、結婚? 今月末だな? うわ、マジか~はやいなぁ!」
「……ああ、そっか。めでたいなぁ」

 楽しそうに笑う蒼汰。
 いとこの真也くんが結婚するらしい。蒼汰とは同い年で、小さいころから兄弟みたいに一緒に遊んでいたそうだ。

「悠真のことも話してるからさ。もしよかったら一緒に来ないかって」
 電話を切ったあと、蒼汰がそう言った。
「オカンたちも会いたがってたでぇ」

 少し考えて、俺は首を横に振った。
「……今回は、遠慮しとくよ」

「なんで? 別に気にせんでええのに」
 蒼汰がちょっとだけ口を尖らせる。
 その顔が子どもみたいで、余計に胸が痛んだ。

「気にするよ。蒼汰の親戚だけじゃなくて、新婦側の親戚もいるだろ?
 俺が行ったら、気ぃ使わせるだけだと思う」

「そんなことないと思うけどなぁ」
「……でも、俺は、たぶんまだ……」

 言いながら、自分でも少し苦くなる。
 両親が亡くなってから、俺は親戚づきあいをほとんどしていない。
 姉さんと祖母には蒼汰のことを話しているけど、それ以外の親族には、まだ。

 説明とか立場とか、そういうのを考え出すと、どうしても構えてしまう。

「俺はさ、悠真のこと、ちゃんと見てほしいねん。
 “誰と付き合ってるか”やなくて、“どんな人か”って。俺の彼氏、最高やねんでぇって、みんなに自慢したいやん」

「……それは、わかってる。けどなぁ……」
「わかるよ、悠真の言いたいこと……。けど、やっぱり“自分らしく”が俺のモットーやん」

 その言葉に、思わず笑ってしまう。
「ほんと、そういうとこ真っすぐやな」

 どちらも間違っていない。
 ただ、俺たちは、少し立っている場所が違うだけ。

 しばらくして、蒼汰が小さくため息をついた。
「……ごめん、ちょっと強引になってもた」
「いや、俺も……」

「俺は、悠真がそういうとこ慎重なのも、ちゃんと好きやし。無理してほしないから」

 蒼汰がそう言って、テーブルの上にあった俺の手をそっと握った。
 温かくて、包み込むような掌。
 さっきまで少しだけ擦れていた空気が、やわらかく溶けていく。

「真也の結婚式、写真撮ってくるわ。式場の花とか料理とか、あとお土産も買ってくる。」
「うん。楽しみにしてる」
「なぁ、悠真。いつかでええけど……“うちの婿です”って、みんなに紹介する日は、ちゃんと来てや」

「うん、その時は――ちゃんと隣に立つよ」
「ほら、悠真、ちょっと照れてるぅ! かわいいぃ」

 結局、最後は笑って終わる。
 俺たちの“いま”は、まだ途中。
 でも、少しずつでも歩いていけるなら、それでいい。
 こうして向き合えることが、きっといちばんの進歩なんだと思う。
 ――いつか、お前の隣に立つ日まで
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