「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「ネイビーのスーツと、まだ知らない未来」

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 月末にある従弟の結婚式。
 クローゼットの奥から、蒼汰がスーツを引っ張り出してきた。

「これさ、成人式のとき着たやつやねん」

 そう言って広げたのは、ネイビーのフォーマルスーツ。
 流行り廃りのない色で、生地も思ったよりしっかりしている。

「仕事柄、スーツ着る機会ほぼないやん。
 だからずっと眠っててさ」

 ハンガーに掛けて、少し照れたみたいに肩をすくめる蒼汰。

 ……正直、思った。

 俺も見たかった、蒼汰のスーツ姿。

「どう?」
「どうって……」

 言葉を探している間に、蒼汰はジャケットを羽織る。
 背筋がすっと伸びて、普段より少し大人びて見えた。

「なんや、その顔」
「いや……発表会に来れんかった親父の気分っていうか」
「なんでやねん」

 笑われたけど、ほんまにそんな感じだった。

「シャツとネクタイ、これでええんかな」
「たぶん、新しくちゃんと選んだ方がいいだろ」

 結局、ふたりでスーツ屋に行くことになった。

 店内には、きっちり並んだフォーマルウェア。
 白シャツ、淡いグレー、シルバーやネイビーのネクタイ。

「結婚式やし、派手すぎんけど……
 地味すぎないのがええよな」
「蒼汰は、こういう落ち着いたの似合う」

 そう答えながら、ふと考えてしまう。

 ——いつか。
 こんな服を着て、二人で並んで立つ日が来るのかな。

 そんなことを考えていたら、
 ぐいっと腕を引かれた。

「ちょ、蒼汰……」
「静かに」

 フィッティングルームに引き込まれ、カーテンが閉まる。
 一瞬で距離がなくなって、
 次の瞬間、唇が軽く重なった。

「……おい、ここ店」
「大丈夫。今、店員さんネクタイ見に行ってくれてる」

 小声でそう言って、悪戯っぽく笑う。

「こういうの……ちょっと憧れててん」
「……ばか」

 顔が熱くなるのを隠すみたいに、
 前髪を直すふりをする。

 鏡に映るふたり。
 まだ先のことは分からない。

「なぁ、悠真」
「ん?」
「俺も、悠真のスーツ姿見たいな」

 当たり前みたいに言うから、
 余計に胸があったかくなる。

「……言われなくても」

 ネイビーのスーツは、
 思ってたよりずっと、よく似合っていた。
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