142 / 150
「コンビニデートが好きな理由」
しおりを挟む
春はまだ遠い夜。
ドアを開けると、冷たい空気がふわっと顔に当たる。
「うわ、さむいっ!」って声に出すと、蒼汰がクスクス笑った。
「なに、そんな寒がってん。昼あったかかったやん」
「夜は別やん! 油断してた……」
白い息がふたりの間でふわりと重なる。
夜道は10分ほどしかないのに、なんだか冒険みたいに長い。
「肉まん、まだあるの?」
「あるって、俺が食べたいんやから……絶対あるねん!!
だから、今からコンビニ行くんやし」
自動ドアが開くと、温かい空気と照明に包まれる。
蒸気で少し曇ったガラスを指でなぞりながら、
蒼汰はレジ横のケースを覗き込んだ。
「わぁ、うまそう……といいたいねんけど……」
「最後の一個?半分こ?」
「そうやんな……そのほうが美味しい気するやん!」
結局、肉まんはひとつ買った。
まぁ、ほかにもいろいろと。いつものことだけど……
帰り道、器用に真ん中から割る蒼汰。
「悠真、ほら、これ大きいで」
「おっ、おいしそう。いいの?」
「ええに決まってんやん!」
湯気が指先にふわっとかかる。
じゅわっと肉汁が口に広がって、なんだかほっぺもぽかぽかしてくる。
「うま……」
「な?」
夜の静かな住宅街。
遠くで犬が吠えても、僕らには関係ない。
足音も、息も、全部ふたりだけのリズム。
「手、冷たいな」
小声で呟いたら、蒼汰がすぐに指を絡めてきた。
冷たいはずなのに、触れたところからじんわりあったかい。
「……別に、繋がなくても」
「なんでぇ……春、まだ遠いし」
俺はくすっと笑って、ちょっと意地悪に言う。
「理由になってない」
「ええやん、寒いから、冬のお楽しみやんかぁ」
手の温もりが、肉まんの湯気よりずっとリアルに感じる。
なんだろう、この安心感。
蒼汰と一緒だと、寒さも遠くへ飛んでいく。
マンションの灯りが見えてくる。
「なぁ、悠真」
「ん?」
「今度、少し先のコンビニ行かへん?」
「どうして?」
「あそこ大きいし、肉まんいっぱいあるかなって……」
握る力が少しだけ強くなる蒼汰。
思わず顔がにやける。
「帰ったら、なんかお腹足りんくなる気がするねん」
「……それは肉まんちゃうやろ」
春はまだ遠い夜、
つないだ蒼汰の手をまだ離したくないのは俺も同じだから
ドアを開けると、冷たい空気がふわっと顔に当たる。
「うわ、さむいっ!」って声に出すと、蒼汰がクスクス笑った。
「なに、そんな寒がってん。昼あったかかったやん」
「夜は別やん! 油断してた……」
白い息がふたりの間でふわりと重なる。
夜道は10分ほどしかないのに、なんだか冒険みたいに長い。
「肉まん、まだあるの?」
「あるって、俺が食べたいんやから……絶対あるねん!!
だから、今からコンビニ行くんやし」
自動ドアが開くと、温かい空気と照明に包まれる。
蒸気で少し曇ったガラスを指でなぞりながら、
蒼汰はレジ横のケースを覗き込んだ。
「わぁ、うまそう……といいたいねんけど……」
「最後の一個?半分こ?」
「そうやんな……そのほうが美味しい気するやん!」
結局、肉まんはひとつ買った。
まぁ、ほかにもいろいろと。いつものことだけど……
帰り道、器用に真ん中から割る蒼汰。
「悠真、ほら、これ大きいで」
「おっ、おいしそう。いいの?」
「ええに決まってんやん!」
湯気が指先にふわっとかかる。
じゅわっと肉汁が口に広がって、なんだかほっぺもぽかぽかしてくる。
「うま……」
「な?」
夜の静かな住宅街。
遠くで犬が吠えても、僕らには関係ない。
足音も、息も、全部ふたりだけのリズム。
「手、冷たいな」
小声で呟いたら、蒼汰がすぐに指を絡めてきた。
冷たいはずなのに、触れたところからじんわりあったかい。
「……別に、繋がなくても」
「なんでぇ……春、まだ遠いし」
俺はくすっと笑って、ちょっと意地悪に言う。
「理由になってない」
「ええやん、寒いから、冬のお楽しみやんかぁ」
手の温もりが、肉まんの湯気よりずっとリアルに感じる。
なんだろう、この安心感。
蒼汰と一緒だと、寒さも遠くへ飛んでいく。
マンションの灯りが見えてくる。
「なぁ、悠真」
「ん?」
「今度、少し先のコンビニ行かへん?」
「どうして?」
「あそこ大きいし、肉まんいっぱいあるかなって……」
握る力が少しだけ強くなる蒼汰。
思わず顔がにやける。
「帰ったら、なんかお腹足りんくなる気がするねん」
「……それは肉まんちゃうやろ」
春はまだ遠い夜、
つないだ蒼汰の手をまだ離したくないのは俺も同じだから
0
あなたにおすすめの小説
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
定時後、指先が覚えている
こさ
BL
職場で長く反目し合ってきた二人。
それでも定時後の時間だけは、少しずつ重なっていく。
触れるはずのなかった指先。
逸らさなかった視線。
何も始まっていないのに、
もう偶然とは呼べなくなった距離。
静かなオフィスでゆっくりと近づいていく、
等身大の社会人BL。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
さよなら、永遠の友達
万里
BL
高校時代、バスケットボール部のキャプテン・基樹と、副部長として彼を支える冷静な舜一。対照的な二人は親友であり、マネージャーの結子を含めた三人は分かちがたい絆で結ばれていた。しかし舜一は、基樹への決して報われない恋心を隠し続けていた。
卒業を控え、基樹との「ずっと一緒にバスケをする」という約束を破り、舜一は逃げるように東京の大学へ進学する。基樹を突き放したのは、彼が結子と結ばれる幸せを近くで見届ける自信がなかったからだ。
10年後。孤独に生きる舜一のもとに、基樹から「結子が事故で亡くなった」という絶望の電話が入る。ボロボロになった親友の悲痛な叫びを聞いた瞬間、舜一の中にあった想いが目を覚ます。仕事もキャリアも投げ出し、舜一は深夜の高速をひた走る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる