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「光の端っこで、君を見てた」
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ねぇ、最近の天界、ちょっと騒がしすぎじゃない?
ルシファスの話題で持ちきりなんだ。
——自由をうたい、他の天使たちまで惑わせた罪で幽閉。
神への反逆ってやつ。天界じゃ一番重い罪だよね。
でも、あいつらしい。高慢で、でもどこか……美しかった。
それからすぐ、ミカエルが天の軍の指揮官になるって噂を聞いた。
僕? もちろん、すぐそばに陣取ったよ。
「神の伝達任務? はいはい、後回し~!」
……だって、ほっとけるわけない。
ミカエルの笑顔、あんなに曇ってたのに。
気づいたら、勝手に足が向いてたんだ。
「また来たの?」
「だってさ、指揮官の補佐がいないと困るでしょ?」
「補佐なんて、頼んでないけど」
「え、でも僕、けっこう役に立つんだよ? たぶん」
「……“たぶん”か」
そう言いながら、ふっと笑う。
ああもう、ずるい。その笑顔ひとつで、世界が救われた気になっちゃう。
でも、僕は見てしまった。
ルシファスが幽閉された日の、あのミカエルの顔を。
瞳が夜みたいに暗くなって、泣きも怒りもしなかった。
ただ静かに、光を失っていた。
あの横顔を見たら、僕でもわかる。
——ミカエルは、ルシファスを想ってるんだって。……悔しいけど。
審問でルシファスが“ミカエルへの想い”を語った部分は、記録から抹消された。
でも僕は、あの場で聞いてしまった。ミカエルには言えないけど……きっと気づいてる。
でも誰も口にしない。
天使のくせに、僕らって案外、面倒な生き物だ。
……なんか、やだな。
胸の奥がきゅって軋む。
でも、笑ってごまかす。
だって僕は、光の端っこでミカエルを見守るだけの天使だから。
なぁ、ルシファス。
ミカエルにこんな顔させたお前を——
一発ぶん殴ってやりたい。
……でも同時に、ライバルとして、友として、抱きしめたくもなるんだ。
お前の語った“自由”って、こんなに苦しいものだったんだね。
それでも僕は、光の中で立ち尽くしてる。
ミカエルの笑顔を見られるなら、それでいいやって思っちゃうんだ。
……ねぇ、ルシファス。
最後にお前が言った言葉、僕は忘れない。
——“愛は秩序より美しい”。
ルシファスの話題で持ちきりなんだ。
——自由をうたい、他の天使たちまで惑わせた罪で幽閉。
神への反逆ってやつ。天界じゃ一番重い罪だよね。
でも、あいつらしい。高慢で、でもどこか……美しかった。
それからすぐ、ミカエルが天の軍の指揮官になるって噂を聞いた。
僕? もちろん、すぐそばに陣取ったよ。
「神の伝達任務? はいはい、後回し~!」
……だって、ほっとけるわけない。
ミカエルの笑顔、あんなに曇ってたのに。
気づいたら、勝手に足が向いてたんだ。
「また来たの?」
「だってさ、指揮官の補佐がいないと困るでしょ?」
「補佐なんて、頼んでないけど」
「え、でも僕、けっこう役に立つんだよ? たぶん」
「……“たぶん”か」
そう言いながら、ふっと笑う。
ああもう、ずるい。その笑顔ひとつで、世界が救われた気になっちゃう。
でも、僕は見てしまった。
ルシファスが幽閉された日の、あのミカエルの顔を。
瞳が夜みたいに暗くなって、泣きも怒りもしなかった。
ただ静かに、光を失っていた。
あの横顔を見たら、僕でもわかる。
——ミカエルは、ルシファスを想ってるんだって。……悔しいけど。
審問でルシファスが“ミカエルへの想い”を語った部分は、記録から抹消された。
でも僕は、あの場で聞いてしまった。ミカエルには言えないけど……きっと気づいてる。
でも誰も口にしない。
天使のくせに、僕らって案外、面倒な生き物だ。
……なんか、やだな。
胸の奥がきゅって軋む。
でも、笑ってごまかす。
だって僕は、光の端っこでミカエルを見守るだけの天使だから。
なぁ、ルシファス。
ミカエルにこんな顔させたお前を——
一発ぶん殴ってやりたい。
……でも同時に、ライバルとして、友として、抱きしめたくもなるんだ。
お前の語った“自由”って、こんなに苦しいものだったんだね。
それでも僕は、光の中で立ち尽くしてる。
ミカエルの笑顔を見られるなら、それでいいやって思っちゃうんだ。
……ねぇ、ルシファス。
最後にお前が言った言葉、僕は忘れない。
——“愛は秩序より美しい”。
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