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第1章『心を焦がす名前のない想い』(少年期)
4「君の知らない、君への想い」
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天界の広場には、神の祝福を告げる柔らかな音楽が静かに流れていた。
昼下がりの陽光が白い石畳をそっと照らし、空気ごと淡い光に包みこんでいく。
僕は、階段の上にミカエルと肩を並べて座っていた。
風に揺れるのは、“透花”――天界にのみ咲く、ひとしずくの光のように澄んだ花。
その透明な花を、そっと手のひらに乗せて見つめていると、
「この花、きれいだね」
隣から届いた声は、透き通る水のように静かで優しかった。
その瞬間、ミカエルの視線が僕の手に落ち、そして、そっと指先が僕の指に触れた。
その瞬間、心臓が跳ね上がった。
小さく、けれど確かに胸の奥で響いた音。
――指先がふれただけ。
ただ、それだけなのに。
ふれた場所から、じんわりと熱が広がっていく。
まるで、触れたところから何かが芽吹くように、淡くて甘い痺れが全身をめぐっていった。
「……ルシファス? ごめん、びっくりさせた?」
君がそっと覗き込んでくる。
その瞳はいつもと同じ。優しくて、まっすぐで。
――だからこそ、胸が苦しくなる。
たぶん、君にとってはなんでもない仕草。
でも、僕にとっては――それは、小さな奇跡だった。
ただの一瞬が、胸の奥に深く焼きついて、離れなかった。
君の指先が触れた手のひらには、まるで見えない刻印が残されたみたいに、いつまでも熱が消えなかった。
「……うん。なんでもないよ」
そう言った声が、わずかに震えていたのを、自分でもわかっていた。
……君は、僕に何も感じていないの?
僕だけが、こんなにも揺れているの?
同じ場所にいるはずなのに――どうして心は、こんなにも遠いんだろう。
どうしようもなく、切なかった。
「……この花、君にあげるよ」
熱を残したままの手のひらから、そっと花を差し出す。
ミカエルは一瞬、驚いたように目を丸くして、それから柔らかく微笑んだ。
「えっ? いいの? ルシファスが見つけたのに」
「君に……似合うと思ったから……」
ただの気まぐれなんかじゃない。
この透き通る花のように、どこまでも純粋で、触れれば壊れてしまいそうな
――そんな繊細な君に、ふさわしいと思った。
ミカエルは、少し照れたように笑って、その花を大事そうに胸に抱えた。
「ほんとにいいの? ……ルシファスって、いつも優しいね」
優しくなんて、ないよ。
本当は、こんな想いを抱えているくせに。
君の無垢さに甘えて、知らないふりをして、そばにいるだけなのに……
――この想いが、届かないままでいることが、怖い。
でも、届いてしまうことも同じくらい、怖いんだ。
触れた指先の熱は、まだそこに残っていた。
でも、その奥にある君の心には、どうしても手が届かない。
わずかな距離が、こんなにも遠いなんて
言葉にできない想いが、胸の奥でずっと渦を巻いていた。
それでも――
君の隣にいられるのなら。
このまま何も言わずに、触れられない想いを抱えたままでもいい。
君がくれたその微笑みに、そっと、僕の心を預けるようにして、ただ、君の隣に座っていたい。
昼下がりの陽光が白い石畳をそっと照らし、空気ごと淡い光に包みこんでいく。
僕は、階段の上にミカエルと肩を並べて座っていた。
風に揺れるのは、“透花”――天界にのみ咲く、ひとしずくの光のように澄んだ花。
その透明な花を、そっと手のひらに乗せて見つめていると、
「この花、きれいだね」
隣から届いた声は、透き通る水のように静かで優しかった。
その瞬間、ミカエルの視線が僕の手に落ち、そして、そっと指先が僕の指に触れた。
その瞬間、心臓が跳ね上がった。
小さく、けれど確かに胸の奥で響いた音。
――指先がふれただけ。
ただ、それだけなのに。
ふれた場所から、じんわりと熱が広がっていく。
まるで、触れたところから何かが芽吹くように、淡くて甘い痺れが全身をめぐっていった。
「……ルシファス? ごめん、びっくりさせた?」
君がそっと覗き込んでくる。
その瞳はいつもと同じ。優しくて、まっすぐで。
――だからこそ、胸が苦しくなる。
たぶん、君にとってはなんでもない仕草。
でも、僕にとっては――それは、小さな奇跡だった。
ただの一瞬が、胸の奥に深く焼きついて、離れなかった。
君の指先が触れた手のひらには、まるで見えない刻印が残されたみたいに、いつまでも熱が消えなかった。
「……うん。なんでもないよ」
そう言った声が、わずかに震えていたのを、自分でもわかっていた。
……君は、僕に何も感じていないの?
僕だけが、こんなにも揺れているの?
同じ場所にいるはずなのに――どうして心は、こんなにも遠いんだろう。
どうしようもなく、切なかった。
「……この花、君にあげるよ」
熱を残したままの手のひらから、そっと花を差し出す。
ミカエルは一瞬、驚いたように目を丸くして、それから柔らかく微笑んだ。
「えっ? いいの? ルシファスが見つけたのに」
「君に……似合うと思ったから……」
ただの気まぐれなんかじゃない。
この透き通る花のように、どこまでも純粋で、触れれば壊れてしまいそうな
――そんな繊細な君に、ふさわしいと思った。
ミカエルは、少し照れたように笑って、その花を大事そうに胸に抱えた。
「ほんとにいいの? ……ルシファスって、いつも優しいね」
優しくなんて、ないよ。
本当は、こんな想いを抱えているくせに。
君の無垢さに甘えて、知らないふりをして、そばにいるだけなのに……
――この想いが、届かないままでいることが、怖い。
でも、届いてしまうことも同じくらい、怖いんだ。
触れた指先の熱は、まだそこに残っていた。
でも、その奥にある君の心には、どうしても手が届かない。
わずかな距離が、こんなにも遠いなんて
言葉にできない想いが、胸の奥でずっと渦を巻いていた。
それでも――
君の隣にいられるのなら。
このまま何も言わずに、触れられない想いを抱えたままでもいい。
君がくれたその微笑みに、そっと、僕の心を預けるようにして、ただ、君の隣に座っていたい。
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