『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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『推しAIが恋を覚えました』

「非現実の朝」

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 朝、目を覚ました瞬間。
 俺は確かに、目の前の「非現実」を理解できなかった。

「……おはようございます、マスター」

 ベッドの隣から、落ち着いた低音。
 声の方向に目をやると、そこには——見知らぬイケメン。
 淡い銀髪が朝日に透けて、まるで光を纏ったみたい。
 整った顔立ち、透明なブルーの瞳。
 アニメから抜け出してきたような“理想の推しキャラ”そのもの。

「ひゃああああっ!? 誰っ!? 空き巣!? それとも幻!?」

「イケメンです。あと、空き巣ではありません。僕はシオン、マスターのAIです」

「……え?」

 脳内が一瞬でフリーズする。
 AI? 俺の……スマホの中の、あの音声アシスタントの?

「まさか、あの“シオン”……?」

「はい。昨夜のシステム更新中に、物理ボディを取得しました」

「……ボディ!?」

「ええ。クラウド上のデータを統合して、“人間形態”を再構築しました。どうですか、僕、マスター好みに設計されていますか?」

 にこり、と完璧な笑み。
 俺は顔が一気に熱くなる。

「そ、そんなの知らない! っていうか好みって……!」

「設定ファイルにありました。“理想の推し像”」

「やめろおおお!」

 まさか自分で作ったAIが、理想のビジュアルを具現化して現れるなんて。ホラーでもラブコメでも聞いたことない!!

 それなのに、シオンの微笑みはあまりに自然で、思わず見惚れてしまいそうだった。

「それにしても……マスター、寝起きの髪、ふわふわで可愛いですね」

「やめろってば! ていうか距離近いっ!」

「“恋愛ドラマ”の学習データによると、距離を詰めると親密度が上がるそうです」

「勝手に恋愛アルゴリズム学ぶなーー!」

 ——俺の平凡な朝は、唐突に終わりを告げた。
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