24 / 88
僕が恋した君は人間じゃなかった
『屋上で、半妖がポンコツ宣言』コメディ編
しおりを挟む
九時過ぎ。
自室でだらだらと動画を眺めていた俺のスマートフォンが、
デスクの上で「ブブッ」と景気のいい振動を上げた。
《屋上来れる? 急ぎ! マジで急ぎ!🙏✨》
画面を見た瞬間、俺は盛大な溜め息をついた。
「……急ぎ、ねぇ」
俺は渋々、パーカーを羽織り、夜の校舎へ向かった。
夜の学校、誰もいない廊下を煌々と照らす自販機のLEDが妙に眩しい。
屋上への階段を上る途中、放置されたモップとバケツが視界を遮った。
誰だ?掃除サボったやつ……。そんなことを考えながら鉄扉を押し開ける。
吹き込んできた夜風と同時に、間の抜けた声が飛んできた。
「あ、だいち! ちょっと来るの早すぎだって!」
声の主はハズキだった。
手すりの前で、なぜか「コ」の字型に腰を曲げ、地面に顔を近づけて何かを必死に探している。
「いや、呼び出したのお前だろ。何だよ、その格好」
「違うんだって! 心の準備というか、物理的な準備というか……!」
意味が分からないまま近づいた瞬間、ハズキは慌てて立ち上がろうとして、フェンスに後頭部を強打した。
鈍い音が夜空に響く。
「……いっ、たたた! 今ので寿命が三年縮んだ……!」
「大げさなんだよ」
深く、深く溜め息が出た。
見上げれば月は明るく、星もよく見える。
ロケーションだけは、無駄にロマンチックなのに……
目の前の男がすべてを秒速で台無しにしている。
「その……だいち。落ち着いて聞いてほしいんだけど」
赤くなった後頭部を押さえながら、ハズキは急に背筋を伸ばした。
ただし、目は泳ぎ、指先は落ち着きがない。
「話があるんだよな。めちゃくちゃ大事な」
「そう! 国家機密レベルで大事!」
そこだけはやけに真剣で、俺の胸の奥が一瞬だけざわついた。
……この流れで告白、とかだったらどうしよう。
そんな淡い期待が、ほんの一瞬だけ頭をよぎる。
「……で、何だよ」
「……えーと、つまり……」
ハズキは大きく深呼吸し、ビシッと姿勢を正した。
その拍子に、ジャケットのポケットから何かが転がり落ちる。
食べかけのチョコ棒の袋。
月明かりの下で、やけに存在感がある。
「…………それ、今必要だったか?」
「いや、緊張すると血糖値が下がって脳が停止するだろ?」
「しない」
即答だった。
俺は肩の力を抜く。
不安と、脱力感と、「ああ、やっぱりこいつだ」という妙な安心感。
自室でだらだらと動画を眺めていた俺のスマートフォンが、
デスクの上で「ブブッ」と景気のいい振動を上げた。
《屋上来れる? 急ぎ! マジで急ぎ!🙏✨》
画面を見た瞬間、俺は盛大な溜め息をついた。
「……急ぎ、ねぇ」
俺は渋々、パーカーを羽織り、夜の校舎へ向かった。
夜の学校、誰もいない廊下を煌々と照らす自販機のLEDが妙に眩しい。
屋上への階段を上る途中、放置されたモップとバケツが視界を遮った。
誰だ?掃除サボったやつ……。そんなことを考えながら鉄扉を押し開ける。
吹き込んできた夜風と同時に、間の抜けた声が飛んできた。
「あ、だいち! ちょっと来るの早すぎだって!」
声の主はハズキだった。
手すりの前で、なぜか「コ」の字型に腰を曲げ、地面に顔を近づけて何かを必死に探している。
「いや、呼び出したのお前だろ。何だよ、その格好」
「違うんだって! 心の準備というか、物理的な準備というか……!」
意味が分からないまま近づいた瞬間、ハズキは慌てて立ち上がろうとして、フェンスに後頭部を強打した。
鈍い音が夜空に響く。
「……いっ、たたた! 今ので寿命が三年縮んだ……!」
「大げさなんだよ」
深く、深く溜め息が出た。
見上げれば月は明るく、星もよく見える。
ロケーションだけは、無駄にロマンチックなのに……
目の前の男がすべてを秒速で台無しにしている。
「その……だいち。落ち着いて聞いてほしいんだけど」
赤くなった後頭部を押さえながら、ハズキは急に背筋を伸ばした。
ただし、目は泳ぎ、指先は落ち着きがない。
「話があるんだよな。めちゃくちゃ大事な」
「そう! 国家機密レベルで大事!」
そこだけはやけに真剣で、俺の胸の奥が一瞬だけざわついた。
……この流れで告白、とかだったらどうしよう。
そんな淡い期待が、ほんの一瞬だけ頭をよぎる。
「……で、何だよ」
「……えーと、つまり……」
ハズキは大きく深呼吸し、ビシッと姿勢を正した。
その拍子に、ジャケットのポケットから何かが転がり落ちる。
食べかけのチョコ棒の袋。
月明かりの下で、やけに存在感がある。
「…………それ、今必要だったか?」
「いや、緊張すると血糖値が下がって脳が停止するだろ?」
「しない」
即答だった。
俺は肩の力を抜く。
不安と、脱力感と、「ああ、やっぱりこいつだ」という妙な安心感。
0
あなたにおすすめの小説
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
馬鹿な先輩と後輩くん
綿毛ぽぽ
BL
美形新人×平凡上司
新人の教育係を任された主人公。しかし彼は自分が教える事も必要が無いほど完璧だった。だけど愛想は悪い。一方、主人公は愛想は良いがミスばかりをする。そんな凸凹な二人の話。
━━━━━━━━━━━━━━━
作者は飲み会を経験した事ないので誤った物を書いているかもしれませんがご了承ください。
本来は二次創作にて登場させたモブでしたが余りにもタイプだったのでモブルートを書いた所ただの創作BLになってました。
思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む
木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。
その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。
燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。
眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。
それが妹の名だと知っても、離れられなかった。
「殿下が幸せなら、それでいい」
そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。
赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎月影 / 木風 雪乃
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる