『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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僕が恋した君は人間じゃなかった

『屋上で、半妖がポンコツ宣言』コメディ編

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 九時過ぎ。
 自室でだらだらと動画を眺めていた俺のスマートフォンが、
 デスクの上で「ブブッ」と景気のいい振動を上げた。

 《屋上来れる? 急ぎ! マジで急ぎ!🙏✨》

 画面を見た瞬間、俺は盛大な溜め息をついた。
「……急ぎ、ねぇ」

 俺は渋々、パーカーを羽織り、夜の校舎へ向かった。

 夜の学校、誰もいない廊下を煌々と照らす自販機のLEDが妙に眩しい。
 屋上への階段を上る途中、放置されたモップとバケツが視界を遮った。
 誰だ?掃除サボったやつ……。そんなことを考えながら鉄扉を押し開ける。
 吹き込んできた夜風と同時に、間の抜けた声が飛んできた。

「あ、だいち! ちょっと来るの早すぎだって!」

 声の主はハズキだった。
 手すりの前で、なぜか「コ」の字型に腰を曲げ、地面に顔を近づけて何かを必死に探している。

「いや、呼び出したのお前だろ。何だよ、その格好」

「違うんだって! 心の準備というか、物理的な準備というか……!」

 意味が分からないまま近づいた瞬間、ハズキは慌てて立ち上がろうとして、フェンスに後頭部を強打した。
 鈍い音が夜空に響く。

「……いっ、たたた! 今ので寿命が三年縮んだ……!」

「大げさなんだよ」

 深く、深く溜め息が出た。
 見上げれば月は明るく、星もよく見える。
 ロケーションだけは、無駄にロマンチックなのに……
 目の前の男がすべてを秒速で台無しにしている。

「その……だいち。落ち着いて聞いてほしいんだけど」

 赤くなった後頭部を押さえながら、ハズキは急に背筋を伸ばした。
 ただし、目は泳ぎ、指先は落ち着きがない。

「話があるんだよな。めちゃくちゃ大事な」

「そう! 国家機密レベルで大事!」

 そこだけはやけに真剣で、俺の胸の奥が一瞬だけざわついた。
 ……この流れで告白、とかだったらどうしよう。
 そんな淡い期待が、ほんの一瞬だけ頭をよぎる。

「……で、何だよ」

「……えーと、つまり……」

 ハズキは大きく深呼吸し、ビシッと姿勢を正した。
 その拍子に、ジャケットのポケットから何かが転がり落ちる。

 食べかけのチョコ棒の袋。
 月明かりの下で、やけに存在感がある。

「…………それ、今必要だったか?」

「いや、緊張すると血糖値が下がって脳が停止するだろ?」

「しない」

 即答だった。
 俺は肩の力を抜く。

 不安と、脱力感と、「ああ、やっぱりこいつだ」という妙な安心感。
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