『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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『銀の守り手と黒曜の皇子』

雪庭の出会い(白銀視点)

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 冬の朝だった。
 白い息が静かに立ちのぼる皇宮の庭で、
 私、白銀(はくぎん)は、黒曜さまに出会った。

 父に連れられ、敷き詰められた雪を踏みしめながら進む。
 遠く、梅の枝の下にひとり、空を見上げている子がいた。

 艶やかな黒髪。
 雪の白さを拒むように、はっきりとした輪郭。
 吸い込まれそうな、深い色の瞳。

「白銀(はくぎん)、あれが黒曜さまだ」
 父は小さく言った。
「これから、おまえが仕え、守るお方だ」
 胸の奥が、きゅっと鳴った。
 理由はわからない。ただ、視線を逸らせなかった。

 そのとき、
「黒曜(こくよう)」
 背後から、陛下の声が響く。
「はい、父上」
 黒曜さまは振り返り、こちらへ歩いてきた。
 いや、駆け寄ってきた。

 間近まで来て、じっと私の顔を覗き込む。
 吐息が触れそうなほど、近い。
「っ……皇子さま……」
 思わず声が震えた。
「きみは、だれ?」
 幼い声。けれど、不思議と澄んでいた。

「こら、黒曜。近づきすぎだ」
 陛下が苦笑する。
「父上。この子と遊んでもいいですか」
「ああ、好きにするといい」
 そう言って、陛下と父は奥へ下がっていった。

 取り残された私の袖を、黒曜さまが掴む。
「ほら、こっち。君の名前は?」
「……は、くぎん」
 笑った顔は、まだ子どもなのに
 人を惹きつける、抗えない力を持っていた。

 その瞬間、雪の中を白い影が跳ねた。
「あ、うさぎ……!」
 私が足を踏み外しかけた、その時。
 黒曜さまが、私の手を強く引いた。

 “触れた。”

 刹那、胸の奥に、黒い煙のようなものが流れ込んでくる。

 冷たい……
 重い……
 寂しさと、孤独と、名もなき恐怖。

「……あっ」
 黒曜さまが、小さく息を呑んだ。

 私は、その感覚を飲み込む。
 それが“銀族”の役目だと、もう知っていたから。

 けれど……手は、温かかった。
 それだけが、なぜかひどく、胸に残った。

 この日から私は、
 黒曜さまのそばで生きることになる。
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