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03.眷属リュシーと隻眼の狼
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「ふん……何か面倒な事情がありそうだな。久々に面白そうなものを拾ったと思ったら……」
「そうですね。ご主人が目をつける前なら、なるようになるで済んだんでしょうけど」
「ち……あいつのおもちゃに手は出せねぇな」
「賢明です」
リュシーがうなずくと、男は小さく舌打ちを重ね、諦めたようにひらりと片手をあげた。すると周囲を囲むようにして様子を窺っていた狼たちが、渋々ながらも森の奥へと散っていった。
「ていうか、よくがっつかずにいられましたね。俺よりずっと鼻が効くあんたたちには、この匂い、きついくらいじゃないんですか」
「そうだな。あと五分遅かったらどうなってたかわかんねえな」
男は顎に手をあて、平然と答えたが、ジークを眺める目つきはまだどこかギラついている。
リュシーは近くに落ちていた封書を拾い上げると、続けてジーク自身を抱き上げた。どちらかと言うと細身のリュシーだったが、身長からすれば標準か、むしろ少し軽いかという程度のジークを抱えるくらいのことはできる。
完全に意識がないせいでより重く感じるものの、「よいしょ」と声をかけて抱え直すと、改めて隻眼の男を振り返った。
「間に合って良かったです。さすがに真っ最中に踏み込むのは俺も気がひけますから」
「その時は混ざればいいだろ」
「複数プレイは苦手なんで」
半ば他人事のように返せば、男は一瞬の間ののち、くく、と喉奥でおかしげに笑った。
「なるほど、ヤるなら一対一でってことか。そういう誘い方もあるんだな」
「あんたのその前向きすぎる思考は嫌いじゃないですけどね」
言い終わるが先か、リュシーは僅かに目を伏せた。その背中に、ふっと青い翼が具現化する。ばさりと広げられたそれが力強く羽ばたくと、足元の木の葉や枯れ草が一気に舞い上がった。
「貸し一だからな」
「伝えときます」
視線も向けずに言い残して、リュシーは飛び立った。
みるみる小さくなっていくその姿を見送りながら、男は呆れたように呟いた。
「いや、お前に言ったんだよ」
「そうですね。ご主人が目をつける前なら、なるようになるで済んだんでしょうけど」
「ち……あいつのおもちゃに手は出せねぇな」
「賢明です」
リュシーがうなずくと、男は小さく舌打ちを重ね、諦めたようにひらりと片手をあげた。すると周囲を囲むようにして様子を窺っていた狼たちが、渋々ながらも森の奥へと散っていった。
「ていうか、よくがっつかずにいられましたね。俺よりずっと鼻が効くあんたたちには、この匂い、きついくらいじゃないんですか」
「そうだな。あと五分遅かったらどうなってたかわかんねえな」
男は顎に手をあて、平然と答えたが、ジークを眺める目つきはまだどこかギラついている。
リュシーは近くに落ちていた封書を拾い上げると、続けてジーク自身を抱き上げた。どちらかと言うと細身のリュシーだったが、身長からすれば標準か、むしろ少し軽いかという程度のジークを抱えるくらいのことはできる。
完全に意識がないせいでより重く感じるものの、「よいしょ」と声をかけて抱え直すと、改めて隻眼の男を振り返った。
「間に合って良かったです。さすがに真っ最中に踏み込むのは俺も気がひけますから」
「その時は混ざればいいだろ」
「複数プレイは苦手なんで」
半ば他人事のように返せば、男は一瞬の間ののち、くく、と喉奥でおかしげに笑った。
「なるほど、ヤるなら一対一でってことか。そういう誘い方もあるんだな」
「あんたのその前向きすぎる思考は嫌いじゃないですけどね」
言い終わるが先か、リュシーは僅かに目を伏せた。その背中に、ふっと青い翼が具現化する。ばさりと広げられたそれが力強く羽ばたくと、足元の木の葉や枯れ草が一気に舞い上がった。
「貸し一だからな」
「伝えときます」
視線も向けずに言い残して、リュシーは飛び立った。
みるみる小さくなっていくその姿を見送りながら、男は呆れたように呟いた。
「いや、お前に言ったんだよ」
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