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12.自覚と認識

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「まぁでも、そのあたりはもう、身をもって知ったでしょ。特に二度目は意識があったわけですし」
「そ……それは、まぁ……」

 さらりと告げれば、たちまちジークの顔が赤くなる。
 リュシーは密やかに息をつき、それからにっこり微笑んた。 

「発情期だって、通常はひと月に一回って話でしたけど、もしかしたらもっと先かもしれませんよ。2月ふたつき3月みつきに一回、とか。特にあなたの場合、いまは相手が相手ですし」

 逆にそれより早い可能性もなくはないけれど、と付け加えなかったのは、アンリが言わなかったことに加えて、これ以上悪戯にジークを不安にさせるのもどうかと思ったからだ。
 ……フォローもケアも基本的にはリュシーに丸投げされるので、単に面倒だったという理由もある。

「相手が相手……」
「あの人……アンリはあれでもちょっとすごい人なので」

 性格にはなんありすぎだけど。……いや、俺からすれば難しかないけど。

「まぁ一応、強制的に覚醒されたせいで不安定だったってことなので……今後はきっと安定しますよ。先生もそう言ってたじゃないですか」

 それも本当に当てになるのかは知らねぇけどな。

「安定……安定しても、発情期は」
「ありますね」
「あ、るんですよね……やっぱり」
「そういう種族ですから」

「そ……それが信じられないんです……まだ……」

 結局またそこかよ。往生際の悪いやつだな。
 あれだけ俺もいる部屋アトリエであんあん言っておいて……。

「大丈夫ですよ。先生も同じ屋根の下にいるわけですし、何かあれば俺も協力しますから」

 ……どうせそれも俺の仕事にされるんだし。
 嫌でも逆らえないんだから仕方ない。

 ちょいちょい吐き捨てるような心の声を挟みながら、それでもリュシーは笑顔を絶やさない。絶やさないまま、最後に「とりあえず、頑張ってみましょう」といっそう優しく笑みを深めた。
 その少女のような微笑みにジークはまんまと癒やされ、慰められて、

「よ……よろしくお願いします」

 カップの中身が冷める頃には、ジークの顔色もいくらかましなものになっていた。
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