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13.ひと月後
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「外に出ていいんですか!」
それからさらに数日が過ぎた頃、ようやく外出許可が出た。
許可と言っても、まずは家の周りまでで、その先はリュシーが同行できるときのみという制限付きだ。
それでもジークはぱっと表情を明るくさせて、「ありがとうございます!」と正面に座るアンリに屈託のない笑みを浮かべて見せた。
「それと、今日から薬を変える」
「あ、はい……!」
「飲む時間は朝だ。忘れるなよ。いまから一度目を飲んでおけ」
そんな浮かれたようなジークに構わず、アンリは淡々と話を進める。
朝食後、リュシーの用意したハーブティを飲みながらアンリが天板に置いたのは、少しだけとろみのある透明な液体の入った小瓶だった。
それをいままで飲んでいたものの代わりに、毎朝ひと匙ずつ飲めと言う。
「……あの、これは……副作用は」
「なにかあれば報告しろ」
「はい」
先に返事をしたのは、後ろに控えていたリュシーだった。
その声にはっとしたように、遅れてジークも「はい」と背筋を伸ばす。
そんな二人の前で、アンリはゆっくりとカップの中身を飲み干した。
「午後からはあれを集めて来い。今日は一日霧だ」
「……わかりました」
「ジークも連れて行け。それも覚えさせろ」
「はい」
素直に頷くリュシーだったが、その様子はどこか面倒くさそうでもあった。
ジークへのそれより少々態度が悪い。けれども、ジークはそれに気付かない。
「あれ、これ、それ、とは……」
「後で説明します」
疑問符を浮かべたジークの視線を受けて、リュシーはにこりと微笑んだ。
どき、と一瞬鼓動が跳ねて、ジークの目端が淡く染まる。
リュシーは恐らく男だ――。思うのに、その可憐な少女のような顔立ちのせいか、時折見とれてしまいそうになる。
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