かけられたのはDom/Subの魔法でした。

市瀬雪

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自覚と告白

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 昼飯は帰りに外で食べて、久々にのんびり買い物をしてから家に帰った。その後は冷えた身体を温めるために先に風呂に入り、夕飯は珍しくギルベルトが一人で用意した。

 というのも、入浴後にリビングで寛いでいたら、いつのまにかラファエルが寝落ちてしまっていたからだ。

 それだけほっとしたということだろうか。単に寝不足がたたっただけかもしれないが、今日だけはまぁ大目に見てやろうと、ギルベルトはソファに横たわるその身にブランケットをかけてやった。

「ん……」

 三時間ほどが過ぎ、ラファエルはふと目を覚ます。部屋を漂うおいしそうな匂いに瞼を上げると、ダイニングテーブルにはできたばかりのパスタとサラダ、そして見たことのある白ワインの横に、グラスが二つ並べられていた。

「食事の用意、任せてしまってすみません」

 テーブルについて、いただきますと手を合わせる。久々にギルベルトお手製だと思えばそれだけで表情が和らいで、ラファエルは笑みを浮かべたままそれぞれのグラスにワインを注ぐ。

「魔法、そろそろとけるころだろ」
「ええ、ひと月だとしたらあと二日ほどですね」

 その一方をギルベルトの前へと滑らせながら、ラファエルは頷いた。

 ギルベルトは目の前のパスタを早速口に運んでいた。きのことベーコンがたっぷり入ったクリームパスタ。フライパン一つで作れるそれは、いつだったかギルベルトがリリスに教わったものだった。

「二日、なぁ」

 ギルベルトはグラスを手に取り、口をつける。いちいち乾杯しないのはいつものことで、ラファエルも倣うように自分のグラスを引き寄せる。

「二日がどうかしましたか?」

 ラファエルは瞬き、手を止める。
 ギルベルトはこくんと喉を鳴らしてから、どこか他人ごとのように言った。

「いや……まぁ、それが短くなることはねぇだろうなって」
「どういうことです……?」
「カヤの言うことなんざ、あてにならねぇってことだよ」

 だってカヤは最初から言っていたのだ。早ければ一週間、長くてもひと月ほどのことだと。そんな言い方をされたら、ひと月かかる方がまれだと思うだろう。ギルベルトだって、最初はそう信じていたのだ。カヤが魔法使いとしてすごいヤツなのは知っているから。だけど結局、あと二日というところまできても、一向にとける気配はない。

 そこでまた、きっと早めにとけるよ、なんて言われても信じられるはずがなかった。なんなら長引いたとしても驚かないとすら思っている。

「まぁ、いずれ消えるとのことですし……それに関しては僕は良かったと思っています」
「……あんな楽しそうにDomってたやつがよく言う」
「言い方……」

 皮肉混じりにからかわれ、ラファエルは思わず苦笑する。ギルベルトは「本当のことだろ」と片眉を引き上げ、再度グラスを傾けた。

「……ギル。やっぱり乾杯しましょう」

 二人が飲んでいるワインは、ラファエルが叔父からわけてもらったものだった。ギルベルトが久々に飲みたいとこぼしていた、ちょっと貴重な白ワイン。

「なんだよ急に」
「いいから」
「……おら」

 怪訝な顔をしながらも、ギルベルトは持っていたグラスを軽く浮かせる。
 コマンドなんて使わなくても、ギルベルトは応じてくれる。それがいまは本当に嬉しく思えて、ラファエルは無意識に笑みを浮かべる。

「ギル。今回のこと、本当にすみませんでした」
「それはもう聞いた」
「言わせてください」

 面倒臭そうに瞬く黒銀の瞳を、ラファエルはまっすぐ見据えて言った。

「僕、今回のことで思い知ったんです。やっぱり僕は、あなたのことが好きだなって」
「……そうかよ」

 溜息混じりに返しながらも、持ち上げたグラスは下ろさない。そんなギルベルトにラファエルはいっそう笑みを深めて、

「ギル……好きです。僕はあなたを愛しています。あなたがいない人生なんて考えられない。これからもずっとそばにいてください」

 これ以上ないほどの想いを込めて、そう告げた。

「は……よくいう」

 乾杯の音頭はなかったが、わかっていたように互いの目を見てグラスを掲げる。かたわら、ギルベルトは呆れたようにこぼしていたけれど、

「今度はプロポーズかよ」

 それでもラファエルの想いを否定することはなく、最後には仕方ないように微笑っていた。
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