かけられたのはDom/Subの魔法でした。

市瀬雪

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最初で最後の

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 ベッドの上に押し倒される。見上げた先で、ラファエルがわずかに眉を下げる。

「怖いですか?」
「誰に言ってんだよ」

 皮肉めかして答えれば、宥めるみたいに口付けられる。額に、目尻に、頬に、唇に。
 窺うように落とされた先から、温かな体温が伝わってくる。

「安心していいですよ。もうコマンドは使わないので」

 浮いた唇が苦笑混じりに告げる。ギルベルトは片眉を引き上げ、その表面をべろりと舐めた。いらん世話だとでも言うように。

「煽らないでください」

 窘められても、構わずギルベルトはラファエルの頭を引き寄せ、唇を重ねる。

「ん……ん」

 食むようにしながら角度を変える。舌先を差し出せば応えるように甘く吸われて、ゆるゆると絡められては軽く歯を立てられる。舌の根を掻き混ぜられると水音が響いて、努めて喉を鳴らす中、上顎を引っかかれると頭の芯がじんと痺れた。

 ……気持ちいい。気持ちいいけど、

「ラファエル……」
「なんですか?」

 ゆっくりと剥ぎ取られていく服が、静かに床に落とされる。前回とはうって変わって優しすぎるほどの手付きに、かえってギルベルトは物足りなさを覚えてしまう。

「……ンド」
「え?」
「だから……」

 ギルベルトはラファエルの首に腕を回す。そのまま引き寄せ、耳元で囁いた。

「コマンド、使えよ」

 やわらかく波打つ白金髪を指でよけながら、間近の耳殻に舌を這わせる。かたわら、ねだるように言葉を継いだ。

「……お前に従いたい」
 ラファエルは息を呑んだ。


 ***


「本当に、あなたって人は……」

 ラファエルの瞳からグレアが漏れる。注がれる。

「ふ、……」

 それだけでギルベルトは表情を綻ばせ、無意識に腰を浮かせてしまう。
 下腹部はすでに兆していて、先端には雫が浮いている。反り返ったそれは腹へとつきそうなほどで、焦れたように内腿を身動がせ、ギルベルトは間近の耳朶に歯を立てる。

「早、く……」
「……っ」

 そのねだるような声に、仕草に、ラファエルはまんまと煽られる。眼差しは迷うように揺れるのに、込み上げる衝動に抗えなくなっていく。

「――僕を見て、ギル」
「……ん」

 落とされた言葉コマンドに、ギルベルトは素直に腕を緩めた。言われるままラファエルを見上げて、目が合うと、それだけで身体が熱くなる。

「そう……〝いい子〟ですね」

 ラファエルの手が頭を撫でる。優しい声と、柔らかなグレアがギルベルトの心を満たす。

「ラ、ファ……」
「上手です。とっても」

 ラファエルは労るように重ねながら、濡れた眦に口付ける。
 なんだか胸がいっぱいになる。――だけど、まだ足りない。

 ギルベルトはラファエルの髪を引っ張った。指に絡むそれを握り込み、せがむみたいに顔を寄せ、

「……もっと」

 重ねた額をすりつけながら、かすれた声で口にする。

「ギル……」

 ラファエルは一瞬目を見張り、けれども次には悠然と微笑んだ。

 いいですよ。あなたがそれを望むなら。

 顔にそう書いてある気がした。

「――〝キスして〟ギル」

 ラファエルの声が耳に届く。

 だって仕方ないだろう。そう思ってしまったんだから。
 いまも魔法は切れていない。だから全部そのせいだ。コマンドだのグレアだの、俺がそんなものをねだってしまうのも、――お前自身が、欲しいと手を伸ばしてしまうのも。

「ん、んん……っ」

 応えるように口付ければ、身体が勝手に歓喜する。

「――〝いい子〟」

 触れ合う唇が内緒話みたいに動く。直接注がれるそれに、瞳がたちまち蕩けていく。

「好きですよ、ギル」
「ん、ぅ……」

 首に回した腕に力をこめると、たまらないみたいに抱き締められる。重ねた素肌から伝わる体温が気持ちよくて、いっそうたまらない気持ちになる。

「あ、あぁ……っ」

 それが身体の奥まで達すれば、待っていたように思考が弾けた。何がなんだかわからなくなって、わからないまま、ただひたすらに愉悦の波を享受する。

「あ、ぁ、らふぁ、え……っ」

 ――こんな感覚、俺は知らない。

 この上ない多幸感の中、感極まったみたいに涙があふれる。それを拭う唇にすらまた涙がこぼれて、ギルベルトはたゆたう意識の中でぼんやり思った。

 ああ、俺はもうばかになってしまったのかもしれない。
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