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第29章

鮮やかな血

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ベッドの上で、ナオトと見つめ合いながら抱き合うリサ。
幸せな時間が過ぎる。
付き合っていた時もよくベッドの上で夢を語り合った。
結婚したら海の見えるマンションを買って住みたい。
そして、幸せな家族を作りたいと・・・
「うっ」
「どうした?」
「う、うん」
腹にチクッとした痛みが走る。
「シャワーを浴びるわ」
帰り支度をするために、体を洗っておこうと立ち上がり、風呂場へと行く。
シャワーを浴びていると、ナオトに抱かれているような心地良さが全身を包む。
「ああ、抱かれているみたいに気持ちいい・・・」
両手を挙げた時だった。
「うっ」
腹に激痛が走る。
今までに感じたことのない、激しい痛みだった。
「ううっ」
思わず屈むリサ。
股の間からジワリと生温かいものが流れ落ちる。
「え?!」
見ると・・・真っ赤な血だった。
鮮やかなその血は、どこか心が揺さぶられるような美しさを感じる。
見とれてしまったリサ。
ふと我に返った。
「まさか、まさかお腹の子?」
やだ、嫌だっ!
流れないで!消えないでよ!
床に流れる血を両手で懸命に集める。
だが、血はどんどん排水口へと流れてしまう。
「ああ、私の子供・・・私の子供がっ!!!」
「どうした?リサ?」
洗面所のドアが開く。
「リサ?もう時間だよ。早く出ないと・・・」
リサは意識が遠のき、風呂場の床に倒れてしまった。
風呂場に血を流して倒れているリサを発見したナオト。
「血が出てる!!リサ?リサ?!どうしたんだよ!」
リサを抱きかかえて叫ぶナオトの声が、かすかに聞こえてくる。
だが、目を開けれない。
ああ、助けて・・・
助けて、ナオト。
私、これからどうなるの?
閉じた瞼から涙がポロリと落ちる。

次回に続く・・・
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