町で噂のあの人は

秋赤音

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変わらない日々と新たな出会い

4.謎の男、道具を買う

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小雨が降るある日。
大きめの傘をさしながらやってきたのは、「雑貨屋 湊」。

「いらっしゃいま…あ、作刃さん。
今日は何をお探しですか?」

銀のような灰色の眼鏡が良く似合う女性が現れる。

「軽いフライパンと、竹箒を。
輝が使いやすそうなものをお願いしたい」
「輝さんの…本格的にお料理するんですね。
箒は、これがいいと思います。
咲弥お姉様が、輝さんと仮装すると聞いてます」
「その通りだ。自分専用のフライパンが欲しいと言っていた。
箒は、仮装が終わったら庭掃除道具だな」

話を聞きながら微笑む女性の腕へ、
顔つきの似た女性が背後から腕をからめた。

「作刃さん、こんにちは。
箒はしばらく仮装道具の予定です」
「咲弥、急に触れてはダメだといっただろう」
「冬樹が良いならいいでしょう。ねえ、雪哉お兄様」
「白銀さん、こんにちは。
そうでしたか。
掃除道具になるのは、仮装の役目を完全に終えたときです。
安心してください」
「はい。お願いしますね」
「あ、咲弥!作刃さん、失礼します」

言いたいことが終わったらしく、するりとからめた腕をぬき、
来た道へ戻っていった。
咲弥と顔がそっくりの雪哉は会釈をした後、そのあとを追った。

「騒がしかったですよね。申し訳ありません」
「いえ。楽しそうで何よりです」
「ありがとうございます。
イベント、楽しみですね」
「そうですね」

奥の方で叱られている声が、音となって響いている。
二人は、声がする方を微笑ましそうに見ていた。





「「「「トリックオアトリート!」」」」

白銀家の雪哉と作刃家の煌は、吸血鬼。
冬樹と輝は、膝丈の黒いワンピースの上品な魔女姿で、
その決まり文句を言った。

「カボチャのケーキです」
「肉と野菜のキッシュです」
「どうぞー。骨せんべい、美味しいわよ」
「チョコレートクッキーです」

そうして、差し出された手に、
一人ずつ袋に入っているもの渡す。

「「「「ありがとうございます」」」」

お礼を言って、次の目的地へ走っていった。

「あとは、黒刀さんと神堂さんペアですね」
「町がにぎやかなのは楽しいです」

年齢を問わず、全員が節度ある決まりを守り、
ハロウィンは無事に終わった。

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