従僕と柔撲

秋赤音

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曇天と棘

7.香火

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ある日のこと。
夕食後。
湯上りにネグリジェをきて、読みかけの借りた本を開けた。
思うよりも早く完走したので、寝る前に本を返すことにした。
きっと、遅いよりは、早い方がいい。
だから、彼の自室の扉を三度たたいた。

「どうぞ」

開いた扉からのぞく彼も寝る前のような服装だった。

「本、ありがとうございました」

「いえ。よければ、他のを貸すけれど」

入室してもいい、と道を開けられた。

「はい。ありがとうございます。
では、一冊だけ」

「はい。選んで、どうぞ」

示された本棚。
結果、一冊だけとならず、自室まで運んでくれた。

「ありがとうございます」

静かに机へ置かれた厚みのある三冊。
癖になっている読書徹夜に考えた対策。
あとは効くと信じて、ページを開く瞬間を楽しみに待つだけ。

「おやすみのキス、して?僕の恋人、羅輝亜さん」

このまま自室に戻ると思っていた彼が、役の指示を出した。
抗えない、抗う気もなく彼の正面に立ち、唇で唇に触れた。
すると、腰を抱かれ寄せられる。
彼の舌が唇を撫でるから、舌を差し出す。
体が空腹を満たせと熱を帯びる。

「…ぁ、は…っ、凪都さんっ、熱い、熱いです、ぅ…っぁああ、お腹、ぁついぃいっ」

「どうしてほしい」

わかっている、きっと、わかられている。
わかってほしい。
わかっていて、私に与えてほしい。
聞かないで、応えてしまうから。
綺麗なままでいたいのに。

「凪都さん、食べたい…っ、お腹いっぱい、食べさせてくださ、ぃ…ぁああああっ」

つぷりと入ってきた指に震えが止まらない。
空腹が満たされ始めた感覚とは別に疼き始めた胸の熱さに戸惑う。
どうすればいい?
次々にくる熱波で言葉が消える。
なんとか気づいてほしくて、腰をふり、胸を擦りつける。
満たされることを知った身体が飢えを満たそうと痛む。

「どこが痛い?」

優しい声に涙が出た。
気づいてもらえた。
今言わないと、次があるかは分からない。

「むね、と…ぅあっ、あんっ、ぉお腹ぁあああっ…指、いっぱぃっ」

「まずは、お腹をいっぱいにしようか」

言葉と同時に指が激しく動き、ぎゅうぎゅうとお腹が痛くなる。

「ぁっ、ああっ、んぁああああっ…っ、ぁ…凪都さ…どこに」

勢いよくでていった熱と体の力。
抱きかかえられて、揺られ降りたのは自分のベッド。
背中に感じる慣れた感覚に加わる重さ。
見上げると、彼が笑っている。
これは、良いことが始まる合図だ。

「次は、胸の痛みをとろうか」

「はい…お願いします…っ」

触りやすいように背を反らすと、彼の指がネグリジェごしにそっと胸を包んだ。
撫でるように流れる指の動きで穏やかになる熱感と、新しく生まれた先端の疼き。
触ってもらえば何もなかったように戻ると思い、体を動かして彼の指にあててみる。
でも、ネグリジェが邪魔をして彼の指に届かない。

「ん?ああ…ここ?硬くなって、苦しそう」

「ぁう…っ、熱い、胸、とける…ぃやぁあっ、触ってくだ、さ…ぃぁあああっ」

ネグリジェ越しにぐりぐりと摘ままれて、意識が飛んだ。
気づけば冷めたはずのお腹も熱くなっている。
お腹も、胸も熱いまま。
読書だけでなく、眠ることもできそうにない。
幸いにも胸に触れている指は、私から離れていない。
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