幸せという呪縛

秋赤音

文字の大きさ
106 / 147
どうぞ、幸せでいてください

1.楽しい、嬉しい

しおりを挟む
瞑ちゃんには仲の良いお兄さんがいる。
瞑のお兄さんは、とても手先が器用な人。
縁日と初詣だけは、学生でもおめかしを許される。
だから、相応の服を着て、
メイク道具を持って瞑ちゃんの家へ早めにいく。
髪型とメイクのおめかしをお願いすると、
楽しそうに支度をしてくれる。

『学生がお化粧なんて…』と嫌々な顔でする母親よりも、
私まで楽しい気分になる。
それが分かってからは、浴衣も着物も自分で着るようになった。

「朋ちゃん!いらっしゃいませ。今日のお祭り、楽しみだね!」

おめかしを終えている瞑ちゃんは、楽しそうに笑っている。

「いらっしゃいませ。ご希望はありますか?」

「とびっきり可愛くしてください」

「はい。では、こちらへどうぞ」

目尻を下げ、ニッコリと口角が三日月の瞑のお兄さん。
母親は『男性がお化粧なんて…』と言うが、
母親が好む番組に出る男の人だってメイクをしている。
綺麗になって嬉しいのは女子だけではないはず。

「お兄さん。
私をおめかしして、嬉しいですか?」

「嬉しいですよ。
朋絵さんと瞑が楽しそうに笑ってくれますから。
あ、帰ったら」

瞑のお兄さんはニコニコしている。
おめかしは、きっと、
する人もされる人も楽しくなれる魔法なんだ。

「ちゃんと綺麗に落とすこと、ですか?
してますよ!自分磨きのうちですから。
あと、毎年言われたらさすがに覚えます」

「基本が大切です。
きちんと行ってください。
でないと、おめかししません」

「ちゃんとするって、約束します」

真剣な声に返事をすると、椅子に座るよう手が示す。

「では、どうぞ」

座って待っていると、待ちきれない瞑ちゃんの足が動いた。

「兄さん。三つ編みをお揃いにしたい」

「まずは本人に聞け」

「はい!
ということで、どこか三つ編みにしてもいいですか?」

背後で聞こえる楽しそうな会話に和みながら、
三つ編みを想像する。

「どこかって、瞑ちゃん…いいよ」

「ね、朋ちゃんもいいって。兄さん?」

「瞑。分かったから座って待っていて」

「はい」

返事はしながら傍から動かない瞑ちゃん。
できあがった姿に感動した。

「わー、私、可愛い!ありがとう!」

「どういたしまして」

瞑のお兄さんは、やっぱり嬉しそうに笑った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敏腕SEの優しすぎる独占愛

春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。 あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。 「終わらせてくれたら良かったのに」 人生のどん底にいた、26歳OL。 木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~ × 「泣いたらいいよ。傍にいるから」 雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。 藤堂 柊真 ~Todo Syuma~ 雨の夜の出会いがもたらした 最高の溺愛ストーリー。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...