幸せという呪縛

秋赤音

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どうぞ、幸せでいてください

3.あなたのために

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その男の子は特別に手がかかることもなく、
どこにでもいる少年らしさもある、静かな子供だった。
妹が生まれ、よく世話をする長男。 
他愛もない、微笑ましい日常。
家に帰れば元気に挨拶をする子供たちを脳裏に描く。

「ただい」

「「おかえりなさい」」

女性は玄関で迎えた笑顔の子供を見て呆然とした。
口紅をぬっている女の子と、男の子がいたから。

「肖、何をしているの!あ、あなた!肖が…」

「大きな声を出すな。
なにが…肖!!なにをしている!」

背広を着た男性は、男の子を見て大きな声を出した。

「お母さん?お父さん?」

「瞑は、いいのよ。
お母さんと一緒にお化粧しようね」

「肖」

男性から隠すように、
男の子へ手を伸ばす女の子の手をとり、前に立つ。

「肖はお父さんとくるんだ。
おい、化粧落としを渡せ」

女性は鞄から道具を出して男性へ渡し、
優しい笑みで女の子の手をひいた。

「どうして」

小さなつぶやきは、誰にも拾われることはなかった。

時が流れ、少女は女性へと磨きをかけていく。
その傍らには、必ず少年のような笑みを浮かべる青年がいた。

「肖、明日のデートはこれがいい」

「はい。本を見せてください。
瞑、彼氏に嫌な顔されていませんか?
俺、兄とはいえ男性です」

「むしろ、嬉しそうだから安心して。
会える日が楽しみだーって言ってる」

「そうですか」

青年の前では少女のような女性が見せる本を手本にヘアメイクを施す青年と、
甘える女性を見守る大人。
進路を決める年齢になると、
美容の道に進みたい青年を大人は止めた。
そして、コネを使い会社員の道へ進ませる。
大人が文武鍛えさせた成果と共に順調に仕事をする青年。
その様子に安心する大人。
女性も仕事は順調で、
紹介はないが恋人の気配に安堵する大人。
色の気配がない青年にも焦らせようと声はかけるが、
変わらず気配のない様子に心配の日々を過ごすのは大人だけ。

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