輪廻の終わりで

死後の幸彩

1.一報で決められた

どこにでもいる平凡な男は、いつもと同じ朝の目覚めを迎えることはできなかった。
目覚める直前、妻と見知らない男の声を最後に意識を無くした。
体が動くようになったのは、見知らない世界を目に映した瞬間だった。
暗い空と曼殊沙華が群生する場所で、なぜか長蛇の列の一部になっている。

なにが起こった?

私は、死んだのか?内心の疑問を肯定するように、目の前にいた人間が消えた。
そして、自分の体が鼓動を止めて透け始めた。
重くなるまぶたを閉じて、知らない女性の声を聞き目を開ける。
見知らない部屋にいるのは自分と女性だけのようだ。

「はじめまして。貴方様を私の夫にすることにしました。
今後は魂が転生すること無く、その身はすでに冥府の者として順応を始めています」

銀月のような長い髪の美しい女性はなぜか全裸で、自分の腰に跨っている。
藍色の目を細めて笑みを浮かべるだけ。
一瞬、見たことがある光景だと思った。だが一瞬で思考から消えた。
なぜか全裸の自分が勃っている見慣れたそれに陰部を擦り付け、卑猥な水音を立てながら包まれている。
なぜか動かない体は、女性の思うがままだった。

「らい、らい…っ、ぁ…ぁあっっ！！」

「…っ」

与えられる快楽に従順な射精を１３回繰り返し、女性の腹に浮かぶ紋様が色濃くなる。
呆然と眺めていると、女性は微笑んだ。

「私は冥府の花守をしている瀬花せな。名前は、瑠璃るり。
この子種は、私が責任もって大切に育てます。
貴方様は、この部屋で私が来るのを待っていてください」

彼女は自分と彼女自身の身を整えると部屋を出ていった。
体を動かそうとするが結果は同じ。ただ天井を眺めるだけ。
今は無駄な体力を使うだけになると諦めた。

自分の置かれた状況と、彼女の言っている意味が分からなかった。
だが、７日もす過ぎれば分かるようになった。
３日に一度くる瑠璃るりさんは、子種を得るために行為をする。
体の自由はなく、夢中で快楽を貪る様を見上げ眺めるだけだが、なぜか満たされている。
らいと呼ぶ彼女は泣いていて、羅生らいと書くことや自分のことだと教えてくれたときですら泣いていた。