輪廻の終わりで

秋赤音

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閉ざされた箱庭

5.水面は煌めく

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水井すいは、ずっと箱庭を見てきた。
穢れが大地を覆い始めたときも。
光那と夜闇天使が悲しい別れを決めたときも。
美しい炎が舞い、痛みが箱庭に溢れてしまっても。
気づけば水溜りの上に立っていた。
健康的な赤みのある肌に薄青い空色の髪と、白金色の朝焼けが見える瞳が映っている。水井は成人している体を得たようだ。
水井を見た白金色の可憐な光那天使と赤い色の炎胡勇者は、水井を見て微笑んだ。
どこか遠くから穏やかな優しい声もした。夜闇天使が美しい漆黒の色をもつ綺麗な女性だと知っている。
周りの景色は穢いけれど、水溜りに映る空が綺麗だった。
だから、僕はこの大地を浄化した。
まだ穢いけど、少しずつ綺麗にしていこう。

僕は幸せ、だった。
いつも穏やかな夜闇よいさんに見守られながら。
感情豊かな明るい光那ひなさんと遊んで。
強い炎胡こうさんとお勉強もする。
この日常がずっと続くと思ってい、た。

僕も光那ひなさんに力を分けてもらった。
でも光那ひなさんと炎胡こうさんのように高くは飛べない。
練習してるけど、追いつかない。早く飛べるようになって、もっと箱庭を綺麗にしたい。
でも、飛べるようになるたび、少しずつ、夜闇よいさんの姿が遠くなってきた。
しくて、夜闇よいさんが造って壊れた身代わりを集めた。

毎日が楽し、かった。
夜闇よいさんはその場にあれば何でも吸収してしまうのが難点だけど。
炎胡こうさんは異形を視線だけで気絶させて焼く。光那ひなさんは時に雷で、時には優しい笑みで全てを認め融かす。
僕は無邪気に笑うだけで、誰もが笑顔になって消える。
夜闇よいさんは場にあるものが減ったのを見て、僕たちを見て微笑む。すると、黒い大地に土と緑と花が戻る。
それでいい。穢い箱庭だけど少しずつ綺麗になって、いた。

ある日、また大地に穢れがたくさん増えた。
夜闇よいさんが造った依代は、僕が秘密で回収している。
集めれば夜闇よいさんになる気がして、水で清めた一角に氷の宮殿を造って置いている。
西で雷鳴と雷が空から落ちる。
南で焔渦と火雨が大地を焼く。
僕は東で、雨を降らし大きな水溜りを作る。
いつもよりたくさん空の上から、地上から浄化するけど全然足りていない。

「逃げて」

地上にいる夜闇よいさんは冷や汗を流しながら微笑む。
花が散り、穢れに埋もれる大地で、いつもの穏やかな笑みを絶やさない。
視線が示すのは、光那ひなさんがいる方向。

「嫌だ」

別の場所で空から雷で穢れを祓う光那ひなさんと、炎で焼き払う炎胡こうさん。
わかっている。でも、でも。

「また会えるから」

「いいえ。僕も、一緒に」

そっと僕のそばに来た二人は、夜闇よいさんに水の力を分けるよう言っている。
言われたとおりにすれば、夜闇よいさんの顔色が少し和らいだ。
僕がここを浄化すればいいと思った。ふと、水面に映る二人に違和感をみた。

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