輪廻の終わりで

秋赤音

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閉ざされた箱庭

4.炎が焼く残響

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初めて知った感情と感覚は、怒りと恨みと痛みだった。
燃えるような痛みを焼ききると、苦しそうな大地から安堵の声がした。
これで少しでも苦しさが和らぐなら。知ったばかりの力を分けた。
交わした対価は穢れを力に変えることだった。
ふと眩しさで目を開けると、優しい白金色の光があった。


力を求められ、交換して得た力は空を飛べること。
使い慣れれば便利なもので、宙の高い場所から広範囲に炎《チカラ》を散らすことができる。
穢れを払うたび力は強くなる。
使うほど鈍くなる腕の感覚だが、感覚が無くなったのではないし動くから問題ない。
疲れたときは、光那ひなが放つ優しい白金色の光を眺めるだけで安らいだ。

だが、欲が出た。
光那ひなが自分だけの光でいてほしくなった。
自分の気持ちに気づいたときから懺悔の代わりに冷水を浴びるが、消えることなく増していく。
ついに、夢を見るようになった。
腕の中で淫らに喘ぐ美しい白金の女を快楽で蹂躙する。
これは夢だと分かっているのに、止まらない。
嬉しそうに求めてくるのは自分の理想でしかないのに、今は、それでもいい。
今だけは。女の腹の奥へ欲望を注ぎ、受け入れられる幸せを味わいたかった。


現実は当然だが違う。
しかし、分け交わした炎《チカラ》の影響が感じられると満たされる。
たとえ痛みであっても。
今日も光那ひなは炎《チカラ》の対価で痛み苦しみ泣いている。
俺が光那ひなに影響していることが嬉しい。醜い感情が、穢れが抑えられない程大きくなっていく。


でも、ある日から光那ひなは痛みを超えた。
苦しむことなく、受け入れたまま一瞬の痛みだけで焼き払うことができている。
なぜ。
なぜ?
安らぐ光は輝きを増している。
光那ひなの一部に溶け込めたことは嬉しいのに、寂しい。


今日も夢を見た。
呆然と立っていると、ナイトドレスをまとう光那ひなが二人いた。
見慣れた美しい白金の髪の光那ひなは、発情した体に困惑し頬を染めて待っている。
初めて見る白銀の髪をした光那ひなは、艶のある笑みで俺を誘う。
綺麗な天使が自分の前だけで見せる女の顔をして、甘く蕩けた笑みで俺を正面から抱きしめる。
両手に光那ひなだ。さすが夢。
せっかくだから、呼び名を考えよう。
白金の光那ひなと、白銀の灯那ひな
見上げる白金の瞳を見つめ返せば、柔く豊かな胸ごと身を預けてくれる。
幸せだ。
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